歳は取りたくないものだと彼は言った。
生の次にある死を見たくは無いのだと。
惨めに知能が低下する自分を知りたくは無いと。
バスケが遠くなる程体力が低下する自分も要らないのだと、彼は言った。


私はそんな彼を見たいと思うし、そんな私も存在してくるのだと知っている。知っている彼も受け入れなくてはならない現実を拒んで、何が楽しいのか。私は受け入れて、そういう彼をまた愛でるのだ。理解不能な行動が多い彼が落ち着くのなら、もしかしたら今より常識人になるのではないか、と少ない望み、希望を持って笑いかけるのだ。

『ねえ赤司。今の私たちは最高に輝いているわ。今は一生ものよ。だから手離したくないのもわかるわ』
「ああ、そうだろう。醜い自分を見たいやつなんて、いないだろうしな」
『でもね、今の私たちには出来やしない、絶対的な幸福を手にいれるチャンスが、未来にはあるわ』
「へえ……」
『だって、親の承諾なしで結婚の出来る二十歳が、四年後に待ち受けてるもの』

驚いた表情をしながら、すぐに何時もの鋭い笑顔に変わる。

「僕とそんなに一緒に居たいんだ?」
『ええ、だって私、貴方以外は無理だもの』
「変わった女だな」
『元からよ』
「老けた僕なんて、気持ちが悪いだけだ」
『バカじゃないの』

クスクスと笑って見せると不満げな顔になってしまうところとか、まだまだ学生なのだと実感する。いつもすましてる貴方の調子を崩すのが、ちょっとした私の楽しみなの。


『星だって歳を取るのに、私たちが気にしたって意味ないわ』
「例えが微妙だな」
『手厳しい…いつの間にか消えてる星みたいに、年老いて静かに消えるのもいいなって思うの。赤司とならなおさら』
「溺愛されてるね」
『もちろん』

貴方もよね?何て愚問過ぎて聞けないから、その代わりに笑顔を送ると、困った顔が返ってくる。問題児は時々こんなに可愛い。

「仕方ないから付き合ってあげるよ」
『ありがとう』
「その代わり僕より先に死なないでよね」
『そこはわかんない』


時が過ぎるのは自然なことで、歳を取ることも否定することはないけれど、一つ願うとしたら、未来でもこんな風に穏やかに過ごせれば良いと、それだけを思う。


star life

END



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