私の彼氏様はどうやらお気に召さないとにっこり笑う癖があるらしい。
ステファニーちゃんと一緒
私の彼氏様が笑いかける先には私の家に居るステファニーちゃんに向かっていた。
ふわふわの気が特徴の小柄な、可愛らしいツインテールの女の子。年齢は三歳。くりくりとした目はとても愛嬌があり、抱き締めたい衝動を常日頃抑えている私は偉いと思う。
それなのに、彼はステファニーちゃんが気に入らないらしい。ステファニーちゃんも彼氏様こと赤司くんが嫌いならしく、警戒心をとかない。
『いい加減仲良くなってくださいよ』
「一生無理だと思うよ」
『だってこれからもずっと一緒なんですよ?』
「十年後には居なくなってるよ」
「ワンワン!!」
『もう、ステファニーちゃんを怒らせないでください!』
「君は犬の味方なの?へえ……」
そう、ステファニーちゃんとは我が家のわんこことです。
今も私に抱えられて大人しくしている、とっても良い子なんだけど…何でか赤司くんに対してはすごく反抗的で、吠えたり威嚇したりが良くあるのです。
赤司くんの嫌いなものは言うことを聞かない犬、なのでステファニーちゃんとの相性は最悪なのです。
「いい加減その犬死なないの?」
『いい加減赤司くんはステファニーちゃんを諦めてくれないんですか』」
「僕は妥協しない」
『私も譲れません』
赤司くんと居ると確かに安心したりドキドキしたり楽しかったりいろいろあるけど、ステファニーちゃんと一緒に居るとそれだけで癒される。結構赤司くんに振り回されている私にとって、ステファニーちゃんは重要だったりするのだ。
『あ、散歩の時間だ。じゃあちょっと行ってきますね』
「待ちなよ。客人を家に置いていって犬の散歩とはどういう了見かな?」
『だって赤司くんが急に私の家に来たんですから、仕様がないじゃないですか』
「言い訳は要らないよ」
『……じゃあ赤司くんも散歩一緒にどうですか?』
それから十数分悩み続けた赤司くんは行くという選択肢を導きだした。私の横で不機嫌丸出しだから何だか居心地が悪いのだけど、この期に仲良くなってくれればいいな。
「で、散歩って大体どのくらい?」『大体一キロですかね』
「へえ…」
『歩くのが好きな犬は三キロも歩くとか聞きますけど、この子はそんなに歩かなくても良いんですよ』
「……」
どうやらステファニーちゃんに関連する話題は余り好かないらしい赤司くん。無口になり始めたのでどうにか機嫌を直したいんだけどな。
『赤司くん』
「何だい?」
『手、繋ぎましょう』
手を差し出してみると、柔らかく笑って手を握ってくれた。こういう赤司くんはとても素敵だと思う。いつもの意地悪な顔とは全く違う。
「…たまには散歩も良いものだね」
『そうでしょう!これからも一緒に散歩しましょうね!』
「ワンワン!ワン!」
「犬が居ないなら喜んで」
『それはダメです』
嫌そうな顔をしているけど、結局散歩に誘ったら着いてきてくれるんだろうな。
だって赤司くんは結構優しいから。
END