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緑間真太郎と泣き顔

※捏造で緑間くんは他の人と結婚しています。


純白に包まれた二人に惜しみ無い拍手。二人は今日結婚をする。新郎新婦共に美しく着飾って、新郎は新婦を常にエスコート。私がこの場に居るのは新郎の方にも新婦の方にも縁があるからだ。友達のみっちゃんもとい美佳が私がマネージャーをしていたバスケ部のエース緑間真太郎と晴れて結婚。みっちゃんは緑間美佳になるのだ。字面はしっくり来ないものの、いつか慣れる日が来るのだろう。私は二人を心から祝福した。

見世物の様に写真を撮られる二人。衣装替えをする度に写真を撮られ、笑顔を求められる。新郎は私が知っている新郎とは違いちゃんと笑顔の要求にも応えていた。成長を垣間見れた感動なんかで何回か涙ぐんだ。

一次会終わりに二人の周りには友人が。懐かしい面子。バスケ部たちが取り巻く。思わず元に戻ったような気がして、先輩に声を掛けられても生意気に返したり。童心に帰ったような感覚、高尾とじゃれて二次会へ向かおうとしたら腕を掴まれた。神妙な面持ちの新郎が私を見ていた。


戻ってしまった感情は余計なものまで引き摺る。忘れなくてはいけなかったものは、今日の式で全て思い出してしまった。部活への努力や、勉強の日々、チャリアカーに笑ったり、ラッキーアイテムに笑ったり。それと、個人的な感情。そういえば今日の新郎はラッキーアイテムを持っていないな、と思った。

少し話があるのだよ。抜けない口癖でぶっきらぼうに伝えた新郎の言葉に、新婦は快く承諾。引かれるまま余り人気がない廊下まで歩いた。

『どうしたの、真ちゃん』
「……」
『ねえ』
「何で、泣くのだよ…」
『え?何……』

悲しい顔が滴を落としていた。吃驚して、私は呆然と見ているしか出来なくて、いつの間にか真ちゃんの両手に掴まれた腕がギシリと痛んだ。

『真ちゃん…』
「何で、お前は泣いていたのだよ」
『か、感動、して』
「それだけか?」

こんなところまできて、私の友達を嫁にして、部活の先輩友人後輩にお祝いまでさせておいて何が言いたいのだろう。私は自分の憶測に身震いした。まさかそんなこと、誠実な真ちゃんがする訳ない。そんな否定の感情と、どうしようもない期待に私の心臓が早鐘を打つ。真ちゃんの手に力が入った。

「俺は、ずっと……」
『ねえ、真ちゃん』
「ずっと、お前だけを、」
引き寄せて抱き込まれた。腕の中は窮屈で、今の切羽詰まった真ちゃんみたいだ。でも、涙に流されたりなんかしないのだ。私は何で、と言葉を漏らす。少し驚いた真ちゃんがこちらを見る。

『それなら何で、私の友達と結婚を…?何で私に、好きと言ってくれないの』
「…家の事情なのだよ」
『そう言われて私が納得できると思った?』
「いや、思ってなどいない」
『こんなおめでたい日に、私に言う事じゃない。はやく美佳の隣に行って。私は二次会参加しないから』
「…なまえ」

私が美佳に怒られる事を心配して、真ちゃんは顔を歪ませる。全部貴方がしたことの結果なのに優しくて、どうしても引かれて、だからこそ友達にと思う。美佳は幸せそうに笑っていた。私にその笑顔を奪う資格はない。

『わがままは一日三回、だったっけ』
「……そんな幼稚なことはもう言わない」
『三回分ね』

新郎の襟首をそっと引き寄せて唇を寄せる。落ちていた滴はお互い乾いた。跡を綺麗に指で取ってやり、さようならと私は笑顔で言った。

後日私も運命の相手を見付けた。


緑間真太郎と泣き顔

END




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