あの人一筋でアピールしてきた一年間。正直もう挫けそうです。


余所見にご注意!


小学校からの付き合いの黄瀬が、やることやること簡単すぎて詰まらないとほざいていたのをずっと聞き続けていた私は、一年前に衝撃的な言葉を聞いてしまったのだ。

「もうバスケですっげー強いやつを見つけちゃったんスよ!」
『は?』
「何度やっても惨敗続きで、でも楽しくって」

今日もその人とバスケやるんスよーと嬉しそうに言った黄瀬に連れられてバスケ部の練習する体育館まで来てしまった私。正直黄瀬がそこまで楽しめる倒せない相手というのがどういう人なのかとても興味があった私は、体育館まで大人しく連れられたのだ。

そうして体育館の扉を開け、目に入ったのは見たこともないフォームのシュートだった。

「やっぱ青峰っちすっげー!」
『あおみねっち…』
「さっきゴール決めた人っスよ。あの人どっからでもシュート入れれるからホント敵わないっス!」
『……』
「おいきせー!早く練習入れよ!」
「はいっス!!じゃ、みょうじっちは見学してって適当に帰っても良いっスから!」
『見学って…まあいいけど』

そう言ってずっと体育館の隅で座って見ていた。自然と知っている黄瀬を見ていたら、その相手をしている青峰くんも目に入るわけで、バスケは詳しくないけれど、何かと目を引かれた。それは、素人目から見てもすごいプレイのせいもあるけど、一番は心底楽しいと語っているその表情だった。

「あっちー」
「も、もう一回っ!」
「お前そろそろちゃんとしたメニューこなせよな。そしたら相手してやるよ」
「〜っ、絶対っスからね!!」
「へいへい」

向こう側へ走り去っていった黄瀬は赤い髪の人に少しへこへこして練習の指示を受けて他の生徒に交ざっていった。

「お前はマネージャーとかになんの?」
『え?ちょっと黄瀬が大丈夫か見に来ただけだよ。いっつもすぐ飽きちゃうから』
「へー」
『まあ今回は大丈夫そうだけどね』
「まあ俺があいつに飽きることはあってもあいつは飽きねぇな。俺負けねぇし」
『ふーん?』
「ま、お前もマネージャーにでもなってみろよ。お前みたいなの大歓迎だし」

にっと笑った顔に、私は完全に気持ちを奪われた。


今となってはあの言葉の意味が私の胸を指していたことだってわかってるし、本当にマネージャーになってしまった私も滑稽だったけど、それでも気持ちは正直で笑いかけられたら喜ぶし冷たくされたら泣きそうにもなる。
私は青峰に振り向いて貰うために必死だった。


だけど今日に来て、今までの関係なんて下らないものだったことを実感してしまった。胸が好きと知ってからずっと色仕掛けで落とそうとして、いつも胸を強調するような仕草やスキンシップをしていた。最初は鬱陶しがられる程度だったのに、だんだん素っ気なくなって、今日は突き飛ばされた。突き飛ばした後の青峰なんて、謝らずに大股で私から逃げるみたいに歩いていった。ぽかんと暫く呆気に取られていたけど、あれは紛れもない拒絶だった。


「みょうじっちは少し過激なんじゃないっスかねー」
『だって…武器は有効活用しなきゃ』
「んー、まあそうっスけど…」
『でも嫌われてたらもうそうやって媚び売っても意味ないよね』
「ちょっと違うっスけどね」
『何が』
「みょうじっちが嫌われてるんじゃなくて青峰っちが…あ、」

「おいなまえ」
『…青峰』
「こっち来い」
『ちょっ何で…っ』
「良いから来いっつってんだよ」
「ほら、嫌われてる訳じゃないっスよ」


いきなり出てきた青峰に手を強引に引かれて廊下を歩く。来る前に黄瀬がほら、と言っていたけど、何がほらなんだろう。青峰は怒ってるし、もしかしたら黄瀬にも色仕掛けしてんのかとか言って部員に手を出すなって怒られるんじゃないのか。力一杯握られている手首がそろそろ痛かった。

「おい」
『な、によ』
「お前、黄瀬が好きなのかよ」
『は?』
「黄瀬が好きなのかって聞いてんだよ」
『…そんなわけないじゃん』


一瞬あんなにアピールしてたのに気付いてないとかバカじゃないのって思ったけど、青峰って確かバカだったと思い直した。ないないと黄瀬のことを否定する。

「じゃあなんで俺以外になついてんだよ」
『なつく?』
「俺以外に触んな」
『…バカなの?』
「あ!?」

俺以外に触んなとか、俺以外になつくなとか、理不尽なことばっかり。そのくせその理由もわからないみたいな顔してる。青峰がバカってこと忘れてた。

『青峰もしかして私のこと好きなの?』
「は!?」
『黄瀬に嫉妬したの?』
「んなわけ…」『スキンシップにドキドキしてどうして良いかわからなかったから冷たくあしらった?』
「……」
『ばっかじゃない?』
「さっきからバカバカ言ってんじゃ…」
『二回しか言ってない』
「……」

追い詰めて行くと顔を紅くして拗ねた子供みたいな顔をする青峰。本当に気付いてなかった上に精神年齢子供だし、どこが良いんだろうこんなやつ。


『ね、青峰』
「んだよ」
『ちゃんと一言だけ、私が納得すること言えたら、青峰だけに付きまとってあげる』
「別に、付きまとえって言ってねぇし」
『じゃあ黄瀬のとこに戻ろっかな』
「……」

無言で手を掴む青峰は本当に子供みたいだった。それが可愛いなんて思えた。

「俺のものになれ」
『……微妙』
「ああ!?」
『これじゃ駄目かな』
「〜〜っ」

悔しがる青峰からいつ好きという単語が出てくるのか、少し楽しみになった。

END

***
リクエストありがとうございました!
雨宮弥生様に捧げます^^

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