※若干の性的要素ありです。



いつもずっとあいつを見てた訳じゃない。でもふとした時に視界に入るあいつは他のやつよりも何倍も鮮やかに映って仕方がなかった。無理に視界に入ってくるわけでも俺の視界に入るのを避けるわけでもないあいつは、きっと俺のことなんてただの不良ぐらいにしか思ってないんだろう。それでも、この、俺に不釣り合いな感情は、事実でしかなかった。


もう壊れてしまおうか


銀の髪が色鮮やかに視界に入る。私とは全く関わりのないその人は、それでもふとした時に視界に入る。毎日必ず見かけてしまう。良いところでも悪いところでも、構わず振る舞うその人を見て、勝手に怯えたり勝手に共感や感心をしたり。そんなに見ていたりするのに、目が追ってしまう時だってあるのに、私と彼は目さえ合わせた事がない。

少しだけの関係を持ちたいという気持ちが何回か浮上し、その後また彼の行為によって降下していく。彼の行動は気紛れのようで、私の気持ちもそれによって安定しなかった。
だから、あんな形で目を合わせるなんて思わなかった。

「俺が相手してやるんだから、いい声で鳴けよ?」
「焦らさないでよぉ」

そんな声、廊下まで漏れてなかったのに、薄く開けてしまった扉越しに後悔して、バレない内に閉めてしまおうと手に力を入れた時に、一瞬だけ、目を合わせてしまった。

驚いてすぐに音を出さないよう走った廊下。結局辿り着いたのは私のカバンが置いてある教室で、ぼーっとしたままどの道から帰ったのかわからないくらい靴をどろどろにして帰宅してお母さんに怒られた。お布団に入って、中学生であんなのおかしいって塞ぎ込んだ。別に裸じゃなかったから良かったんだけど。

次の日、まさか本人から直々に呼び出されるとは思わなかった。


*****


目と目が合った瞬間に昂った気持ちは失せに失せ、うるさい女を凄んで黙らせ、またあの目を思い出した。あの鮮やかな色は間違えようがない、あいつだった。だから呼び出した。正直自分の中でもよくわからない感情が沸き立っていた。何であの時、女を抱けなかったのか、何であの時、あの目に見つめられた時に、毒気が抜かれたように欲が無くなったのか、今罪悪感のようなものが俺を押し潰しているのかがただ不思議だった。原因はこいつしかない。だからのこのこやって来たこいつに苛立ってるのかも知れない。

『は…灰崎くん?』
「昨日、見ただろ」
『……』
「覗き見が趣味とは意外だなぁ?」
『ち、がいます』
「まあそっちはいいんだよ」

怯えきった身体が震えだし、それでも鮮やかな色は俺を見つめている。昨日なんかよりもずっと昂ってきた。机に押し倒したらすんなりと倒れた。

「昨日、あの先が出来なくてよ…代わりになれよ」
『え…』
「分かるだろ?続きがなんなのか」

胸元のボタンを一つ、無理に外すとボタンが弾けとんだ。隙間から見えるキャミソール越しの胸は意外にも大きい。そのまま胸をやんわり掴もうとして手を止めた。みょうじの目が濡れていた。静かに泣く顔がこれ以上なく冷静で、それでいて恐怖なんかは一切無い。

「何で泣いてんだよ、抵抗ぐらい出来ねぇのか?」
『……』
「面倒臭ぇやつ」
『はい、ざきくんは…』
「あ?」
『虚しくないんですか』

肯定的な言葉が後頭部を打撃した。依然と冷静な顔でなくなまえに、俺は笑ってやった。

「意味わかんねぇよ」


吐いて捨てて、無意味にキスをした。そうして服に手をかけた。


END

***リクエストありがとうございました!
悠華様のみお持ち帰りどうぞ(*´ω`)

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