固形にこだわる奴じゃないってことは知ってる。だけどやっぱり、そういう物を送って喜ぶならそうしたいと思えるような心が、こんな俺にも出来始めているのかも知れない。


そう言ったら口をあんぐり開けたさつきにもう一度聞き返された。だから、と半ば苛立つ俺を制してさつきはまだ驚いたような顔で言葉を続ける。

「言ってる意味はわかったよ、つまり…だいちゃんがなまえちゃんにプレゼントをあげたくなった、ってことでしょ?」
「ん、まあな」
「……風邪でも引いちゃったのかなぁ」
「殴るぞ」
「恋煩いだったねっ」

人をからかうのを心底楽しんでる表情でさつきは笑った。それから、成長した、と嬉しそうに言った。別に前からこういう感覚はあった。それよりも一緒に居たり触っていたりする方がよっぽど気持ちよかっただけで、今も変わりはしないが、変わったのは貢献したいって気持ちが出来たってところだけだ。

俺にバスケをもう一度楽しんで欲しいと努力をするなまえに何度も後押しをされてた。感謝の気持ちなんか有り余るくらいだった。それを自覚してきたら、恩返しにもならないことから返していきたいと思い出した。そんぐらいの気持ちだった。さつきに相談したら快く買い物に付き合うと張りきりだしたから、多分さつきに任せればまともな物が買えるだろうとぼんやり思いながら、なまえには青い何かをやりたいと思った。


*****


今日は青峰くんと一緒に帰ろうと、自分から声をかける決心をした。いつも帰り際に青峰くんに呼ばれて一緒に帰っていたから、一緒に帰れていたけどいつも青峰くんに甘えているのも良くないと思ったのが始まりだった。気合いも十分だったし、今日はマネージャーの仕事もない。青峰くんのサボり癖だったら今日も練習には行かないだろうし。(そこの所は私が連れていくという約束だったから罪悪感があるけれど、一緒に帰ること事態少ないから今日は少し許して貰おうと思います。)

『あ、おみねくん…いっ、一緒に、帰りましょう…っ』
「……」
『……』

すごく気合いを入れて誘ってしまったけれど、青峰くんの顔は少し険しかった。あ、ダメなんだと悟った私から、やっぱりなんでもないという薄っぺらい言葉だけ残して帰り道まで小走りで向かった。青峰くんは引き留めようとしていたけれど、声は出さなかった。

しばらくぼうっと歩いていたら、青峰くんがさつきさんと一緒に歩いているのを、見てしまった。


*****


昨日キレイにラッピングされた箱を空っぽの鞄に忍ばせて、今日一日そわそわしながら放課後を待った。今日はなまえの部活にも付き合ってやるか、とか考えながら過ごしていたから気付かなかったのか、放課後に合わせた顔は釈然としない、というか珍しく膨れてる。

『…どうかしましたか』
「いや、部活は?」
『……私の仕事、終わって、ますから…青峰くん一人でどうぞ』

言ってる途中から目蓋と口の橋が震えて泣きそうな顔をしたなまえはすぐに背中を向けて教室から出ていく。なまえの足はそれほど速くないから追い付くまでそんなに時間はかからなかったが、俺なんかしたっけ?

「なあ」
『……』
「おい、何かあったのかよ」
『…っぁおみねくん、が!!』
「何だよ」
『あおみ…ね、くんが…きのう、………ひどい』
「泣いても良いから、言えよ」

柔らかい髪に手を伸ばしてわしゃわしゃとわざと整った頭を崩すと、すぐに雫を溢しながらなまえは抱きついてきた。

『さつ、き、さんの…ほうが、いいんですか…?』
「……は?」
『いっしょに、かえってくれなくて、さつきさんと…いっしょ、にかえってました、よね…?』
「あれは…これ買うためだよ、ほら」

こんなタイミングに渡すつもりじゃなかった箱を引っ付かんでなまえの手のひらに押し付ける。箱もリボンも青いそれを手のひらに乗せたまま呆けるなまえに痺れを切らして自分でリボンをほどき、箱を開け、中に入っていたブレスレットを取り出す。安物の青いガラス細工をキレイに誤魔化したそれを箱を持ってた手首に着けてやる。

「これ、さつきにも選んでもらっただけだ。最終的に俺が選んだし」
『……』
「こんなもんやりたくなったのもお前だけだ…不満かよ」
『…あ…の……』
「あ?」
『う、れしすぎて…泣きそう』「泣けよ」

手首に輝くブレスレットを自分の顔の前に掲げて泣くなまえに、こんなはずじゃなかったんだけどな、と言葉に成りきれなかった音を噛み砕いて抱き締めた。


笑顔ならそれで何もいらない

END

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