※学パロ
※青峰が体育教師



弾ける恋がしたいと夢見る乙女の様な思考回路なんて現代の女性には全く皆無であり、つまり結局のところ空虚なものを想像しては人は愛しさに胸を焦がすのだ。人に自分を重ねることでしか満たされない欲求がこの世には沢山蔓延っている。多分、あの人の欲求は私が満たせるものではないし、私の欲求を満たせるのはあの人ではない。それでもそれが良いと思った瞬間から、あの人はその道を突っ切るし私にもそれに異論はない。多分、似つかわしくない職業のあの人は職業の事や立場なんかも一切関与せず私を見てくれてる。だから私は罪悪感一つ持たずに今日も隅であの人を待っていられるのだ。

すっと暗い部屋に一本の線を作り扉から中を覗く人が現れると、私は声を上げて私だと誇示する。そうでもしないと臆病になってしまったこの人は入ってこない。もしかしたら勘の良い人だから、間違えることなど無いのかも知れない。これは私に確認をしているのかも、と思ったのはつい最近。私が罪悪感を持たない変わりに全部背負ってしまったのかも知れない。

「いい加減に、もっとまともなやつ見つけりゃ良いのによ」
『会っていきなりですか?』
「心配してやってんだ」
『杞憂ですね』
「そうだな」

杞憂の意味もわかっているのか曖昧なその人は、のっそりと大きな身体を滑り込ませて私の隣に座った。最初に言っていたことに比べて随分と素直な態度で思わず笑えば少し顔が険しくなる。拗ねてしまった肩に頭を少し預けたら学生みたいに緊張する身体が愛しい。

『先生って子供みたいですね』
「ガキに言われたくねえ」
『ムキになるし、エロいし、でも緊張するし』
「黙れ」
『反論出来なくなったら、』

言う前に唇を重ねられて言葉を吸い込まれてしまった。強引なところは全く変わらない。私が小学生の頃、大学のバスケットサークルで活躍し、すぐにプロになったあの頃のまま。今は教師としてこのバスケの名門高校に居るけれど、まだ現役でいれたと思う。それでも教師になってしまったのは怖かったんだろう。身体が追い付かなくなって、周りからもう古株だと言われ、試合での小さなミスを詰られたくなかったのだ。

臆病なその心が私たちを引き合わせてくれたのなら感謝しかない出ないけれど。


『せんせ、い…学校じゃ手を出さないって言ってませんでしたっけ?』
「手はな」
『屁理屈…』
「良いから、こっち向け」

しつこく舌を絡めるいやらしいキスじゃない、優しく触れるキスを繰り返す。先生はこういう行為からでしか人を愛せないんだろうなと思った。好きだ、なんて言葉、私の決死の告白の後に一回きりだ。気付いてしまうとわめき出す欲望が自分からキスをする。

「…お前、今度俺ん家来い」
『なんで…』
「欲求不満みたいな顔しやがるからだろ」
『してないです』
「嘘つけ、何考えてた?」
『もっと可愛がって欲しいってだけ』
「バカか」

はっと鼻で笑う俺様染みた表情を浮かべて、白の三日月が浮かび上がる。細められている目線が熱を灯して私を見ている。まるで獣だ。

「これ以上愛してやったら困るくせに」
『……』
「こういう時だけ幼いふりかよ」
『こういう時だけ大人のふりですか?』
「俺は正真正銘大人の男だ。その俺を選んだんだから、それなりの覚悟ぐらいしてろよ」

な?と目で問いかけて、襲いかかるみたいな勢いの口に目を閉じれば、目眩のしそうな長い口付けが贈られた。


大人と子供

END

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