疑問なんか考えてる暇など私には無いらしい。

「今度試合する時も青峰出ぇへんの?」
『それはもう決定ですね』
「そーか。ほんなら桃井さんのデータだけが便りやな」

にこにこと楽しそうな顔が私を追い詰めようとする。それでも私はもうストレスなんか感じることはない。

『自信はありますよ』
「…ふーん」
『何か残念そうですね。今吉さんの分だけわざと違ったデータ書いておきましょうか?』
「それは勘弁してぇや」
『ウソですよ』

じゃれあうような会話を交わす。私が今吉さんの挑発というか、脅しみたいな言葉に動揺しないことに、釈然としない表情を少し垣間見せた今吉さん。少しの優越感に笑顔を溢すと、ふーんと言った感じで一人頷いた。

「何や吹っ切れたみたいやなぁ」
『少し気分転換をしたので』
「個人的にはもう少し弄りたかったわ」
『女の子には優しくしないと、一生結婚出来ませんよ?』
「ご心配どーも」

どうやら仕事をしてくれさえすればどうでも良いらしい主将はさっさと自分の教室に帰っていってしまった。わざわざこんな話のためにここまで来たのかと呆れて気が抜けた私を、今吉さんとの仲を羨む女子からの熱い視線(主にどす黒い)と男子からの熱い視線(主に桃井ちゃんファンの今吉さんに対する嫉妬)が襲うのでさっさと教室に退散した。

「また今吉のやつかよ」
『そうだよー』
「……」
『大ちゃんあんまり難しい顔似合ってないよ?』
「うるせぇ」
『…心配とか?』
「うっせ」
『照れてる』

小さく笑えば青峰くんは照れて不貞腐れたみたいにそっぽを向く。否定しないから丸わかりだ。漫画なんかじゃわからなかったけど、男友達よりやっぱり桃井ちゃんの方が大事にされているみたいで、女の子だからかはたまたおっぱいか考えたけど、やっぱり幼なじみだからだろう。今の私にはありがたい好意だ。

『心配なら部活に来て見守ってくれれば良いよ』
「やだ」
『駄々っ子か』
「大丈夫そうなら良いんだよ。だいいち、お前そんな弱くねぇだろ」
『まあね…良い案だと思ったんだけどなあ』

むうっとした顔を作って少しだけ伺うと、仏頂面が仕方ねぇなーと言った。参加しないけど行ってやるよというニュアンスのそれに少し残念がりながら、やっぱり甘いなあと顔がにやける。

「飲み物奢れよ」
『そこは大ちゃんで』
「俺百円しか持ってねぇし」
『じゃあ自分の分は諦めてくださーい』
「ふざけんなよ」

文句を言いながらカバンを持って立ち上がる青峰くん。ぶつぶつ言ってるわりに口の端がちょっと上がってる。

『今日奢ったら明日奢ってくれる?』
「何でたよバーカ」
『バカじゃないですー』
「バカっぽいしゃべり方してんじゃねえよ、早く行くぞ」
『はいはい』

自分から体育館に向かう辺り、やっぱりバスケを本格的に嫌うのは無理らしい。


自然的なこと

END

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