元から数学は得意だから、計算はお手の物。桃井ちゃんの家、今は私の自宅に帰り、机を漁るとマネジメントについて細かく書き込まれたノート等が複数、新入生等に教える為か、バスケのビデオを撮るときなんかのこつ、また桐皇メンバー一人一人のことなんかも書かれていた。それと今分析中の学校のビデオとか、データとか、色々。
要領もいい方だから、覚えれば何とかなるんだろう。それに桃井ちゃんも最後は勘と言っていたし。でも本当にそれで良いのかはわからない。私が桃井さつきの代わりだと言うのなら、桃井さつきはどうなってしまったんだろう。私はこのまま、この生活に馴染んで良いんだろうか。

『わかんないなぁ』
「珍しく悩んでどうした」
『……』
「よっ」
『出ていきなさい』
「散らかってんなー」

ノートの端を摘まんで持ち上げたら中身の別紙がぱさりと落ちてしまった。見てみると青峰くんのデータだ。

「お前まだ俺のデータとってんのかよ」
『邪魔しないでよ!』
「うっせぇ」
『バカっ』
「うっせブス」
『ガングロゴリラ』
「……」

難しい顔で押し黙ってしまった青峰くん。言い返されると身構えていた私は拍子抜けした。もしかしてガングロゴリラは言い過ぎたのかなとか、桃井ちゃんらしく無かったかなとか、不安すぎて沈黙が辛い。思わず泣きそうになった。

「…で、何かあったのかよ」
『ん…?』
「最近調子悪いんだろ」
『別に?』
「こういう時だけ見栄張ってんなよ」

ぽん、と大きくて暖かい手のひらが頭に乗る。本人はいたって真剣で、問いかけるみたいにな?と言って髪を撫でた。それは私が知らない態度で、知らない顔で、だって漫画じゃそんな風にはとても見えないのに。

『大ちゃんいつの間にそんなこと言えるようになったの』
「あ?前からだろうが」
『ただのガングロだったのに』
「ああ?」

優しかった手が頭を鷲掴む。それでも痛くないのはやっぱり手加減してくれてるからで、本気でされたら一生近付かなくなるけど。
幼なじみなんてもう居ないから、こんなに暖かいものなんだって思った。


『別に無理してないから心配しなくていいよ』
「おう」
『大ちゃんでも頼りになるときは頼るから』
「でもじゃねえだろ」
『ありがとう』

そう言ってから笑うと、不敵な笑みが戻ってくる。

「お前らしくなってきたな」
『元から私らしいよ』
「嘘つけ」
わしゃわしゃと撫でられた髪が視界に入る度現実に引き戻されてしまっても、この行為を嫌がることは出来なかった。この感情は、私のなのだろうか、それとも、元の感情なのだろうか。

ペースアップ

END

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