変わりなく続く日常的、私たちの高校は青峰くんの不参加によって負けてしまった。敗因を青峰くん一人に押し付けてしまうのは些か疑問だが、レギュラーから遠い部員になればなるほど、そう言った考えが強いようだ。レギュラーを得た部員こそ自分の反省点を見つめ練習に没頭するが、青峰くんの部員からの風当たりが強くなった。

青峰くんのライバルである火神くんが負けることも、黒子くんが青峰くんを救えないことも知っていた。だから私は無駄に落ち込むこともなかった。黄瀬くんが劇的な成長を遂げていたとしても、青峰くんには敵わなかった。わかっていた。でも青峰くんは知らないし、次こそはと告げたとしても無責任だと思われるだろう。知っているからこそ、何も出来ない私が居る。青峰くんを救うのは私ではないのだ。

「いつき」
『あ、うん』

今日も変わりなく一緒に帰る。青峰くんが私の家に来て課題を仕上げた日から、何故か決まりごとのように青峰くんは私に声をかけた。部活へ行くと言えば屋上で待ち、炎天下の中待たなくて良いと言うと保健室で寝て待っていた。どういうわけか、どうやら彼は桃井さつきと時間を共に過ごしたいらしく、嫌じゃない自分が居て、だから少しだけ、勘違いをしてしまいそうで、恐いと思ってしまう。


私は青峰くんの好意が恐いのだ。

「また考え事かよ」
『……そんなところ』
「今度は何だよ、言ってみろよ」
『うん、いいや。ごめん』
「嫌にしおらしいな」
『うるさい』

青峰くんが顔を寄せたり身体に触れたり、目が合ったり話が弾んだり、それだけで意識してしまう。ドキリ、と胸が鳴ってしまうのだ。どうすればいいのか、漫画にも、こんなこと描いてなかったのに。

「……お前がしおらしいと調子狂うんだからよ、さっさと元気出せよ」
『何それ』
「いつものアホみたいなお前になれってことだよ」
『からかわないでよ、もう!』

元気に返せば、青峰くんは満足する。私がさつきを演じれば、青峰くんは喜ぶ。私さえ上手く出来れば何も変わりはしない。シナリオ通りの展開になってくれるはずだ。だからひた隠しにしなくてはいけないのだ。それが私の役目なのだ、と思うのに。

「んな空元気見たくねえんだよ、アホ」

軽く見抜かれてしまう。簡単に彼の腕に収まってしまう。何も出来なくて、それなのにシナリオ通りにも動けない。

「元気出せよ、いつき」

そしてまた彼に励ましてもらう。このままじゃ、どうしようもなくなってしまう。私がどうすれば良いのかわからなくなってしまう。

「なあ、泣き止めよ」
『……』
「本当に調子狂うんだよ…俺、」


世界が変わる瞬間


「お前が好きだ」

と言った彼が、泣きそうにしていたので、私はまた泣きながら

「ごめんなさい」

と返した。



END

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