私は大切なことに気付きました。

「いつき、ノート全部貸せ。コピーする」
『へ?』
「もうすぐテスト期間入るだろ。お前、前の日に貸せって言っても貸さねえからよ」
『あ、う、うん、わかった…よ』

完璧に忘れていたのだ、桃井ちゃんの成績の事を。

ここで何が問題になってくるかというと、青峰くんがノートの完成度を見て私が可笑しいと悟る事だ。桃井ちゃんのノートは青峰くんを赤点から救い出す程の素敵なノートだ。つまり、そのノートがいきなり分かり辛いノートに変わってしまうと、勘の良い青峰くんは、私を怪しむはずだ、多分。そうなったら、どうなるのだろうとずっと今まで考えていたが、そこは未だに分からない。それでも確実に言える事は、青峰くんが離れていってしまうという事。それは困るのだ、今の私にとって、それが一番辛い。

『あのさ、明日で良いかな?』
「あ?何でだよ」
『ちょっと見ておきたい所があって』
「あー、じゃあ明日借りる」
『うん。大ちゃん、ちゃんと勉強するんだよ?』
「はいはい」

そう言って丁度着いたので別れ、自分の家に入りすぐにノートを見返す。ペラペラと全部読み返すと、筆跡は同じでもノートの取り方が随分違う。黒板丸写し派の私に対して桃井ちゃんは補足や分からない部分の書き足しが見受けられる。要らない部分も省いてるし。

『どこから手をつけようかな……』

もうこのまま出したい気分だ。だけどそうすると後々面倒になるんだろうな。幸い明日は特別予習のいる授業はない。一日かければ省きは無理でも補足ぐらいなら出来ない事もない…のかも。

今日は寝れそうにない。何たって全科目なんだから。


*****


「……」
「……」
「……おい」
「なに?」
「死にそうな顔してんぞ」
「ああ、うん」

貴方のせいなんですけどね。なんて言えないのであははと笑ってごまかす。結局眠れたのは六時から七時までの一時間。ノートは誰が見ても分かりやすくなって、私も復習は完璧だ。ああ、今度のテスト全部百点取れる気がする。


「おい、いつき」
「…寝かして」
「いや、お前保健室行って寝ろ」
「それはやだ」
「やだってお前な…」

呆れたような顔をされたけれどテスト期間前に休むなんてバカだ。絶対わからなくなる。

「良いから行くぞ、ほら」
「行かないって……」
「じゃあ大人しくしてろよ」
「え、ちょっ…と!」

教室中がざわめく。私は公衆の面前で、青峰くんに、肩に担がれていた。目線がいつもより高い上に不安定で思わず足をばたつかせるとパンツ見えるぞとか言われた。仕方無いので全体重をかけたら重いと言われて、スカートを押さえるために置かれた手を抓ったりしながら運ばれた保健室で、私はたっぷり二時間眠ったのだった。


知られたくない

秘密があります。

END

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