わーわーと男の子の声がたくさん聞こえる。私はどうしたんだっけ…確か青峰くんにバスケ見に来るんだろ?と尋ねられてそのまま体育館に連れられて来て、そこで……


そこまで遡りまいは目を開けた。が、目を開けて見えた光景にまた意識を遠のかせる。それを許さないと言うように、大きな手が頬に当てられ、ピタピタと軽く叩かれる。まいは仕方無く目を開けた。


『あ、あの』
「おう、起きたか」
『なんで……こんな…?』
「ああ、さつきがよ、付き添ってやれって。いつもは練習しろってうるせえのによ」
『そ、そっちではなく…』
「あぁ?」


青峰本人は気付いていないらしいが今の状況は完全に可笑しいものだった。何故ならまいの頭は、今、青峰の膝の上に寝かせてあるのだ。認識すると同時に混乱に再度陥ったまいは起き上がるという選択肢も見失い、ただ青峰を見上げるだけしか出来ない。

「つーか、急に倒れるなよ、びっくりするだろ」
『すみません…ちょっと緊張、しすぎちゃって』
「まあ、お前上がり症だもんな」

数日間付き合うだけで明白になるほど、まいの上がり症は伊達ではない。そう理解していた青峰は悪いな、と一言謝った。青峰が素直に謝るところを、たまたま付近に居たバスケ部員は意外そうな顔で見つめている。


「イチャついてるところ悪いけど、そろそろ試合に参加してもらってもいいかな?」
『え……あ!』


桃井さつきの言葉でまいは今の体勢をようやく思い出すことが出来た。身体をいきなり起こしたため、軽い目眩に襲われながらも、まいはさつきに向き合う。


「どうも初めまして!私は桃井さつき。青峰くんの幼なじみで、バスケ部のマネージャーやってます。よろしくねー」
『は、はい……木下まい…です。よろしくお願い、します…』

深々とお辞儀をしてからまいはさつきをよく見る。感想は当然の様に可愛い人だな。という平凡なものだった。にこにことしているさつきを他所に、青峰が立ち上がる。


「まいも起きた事だし、練習すっかなー」
「…ほんと、珍しいね」
「ちょっとな。とりあえず試合させろ」
「ちょ、そんな我儘、無理よ!」
「俺がやるっつったらやるんだよ。だいいち、俺が試合に入った時、周りの動きぐらい把握しとかなきゃ試合にならねぇだろ?また暫くサボるかも知れねぇのに、良いのかよ」


青峰の脅迫めいた言葉にさつきは押し黙り、ケンカの様な空気にまいは戸惑う。
数分睨み合って、溜め息を吐いたのはさつきだった。どうやら折れたのはさつきらしい。


「メンバー、集めてくる」
「おう」

さつきは背を向け、体育館で練習に励む部員たちに声を掛け始めた。


「まい」
『は、はい!』
「何緊張してんだよ……お前、バスケ殆ど知らねぇんだろ?」
『は、はい…簡単なルール程度なら、わかります』
「よし、じゃ、きっちり見とけよ!」


くしゃっと乱暴に頭を撫で、青峰はアップを始める。衝撃の残る頭を、まいは自分で撫でた。


何かの予兆

END


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