学園祭がある桐皇学園には、他校からも近所の方からも人が集まり酷い人混みになっていた。朝から順調な滑り出しだと喜んでは居たのだが、それは途中から焦りへと変わっていく。

「なんでこんなに忙しいの!?」
『さ、さつきさんっ五番テーブルにパスタです』
「はあーい!」

恐ろしい程に人気になったのはさつきだった。来店するのは男女同じ比率なのだが、明らかにさつきを指名する男性客が四割を占めていた。他は疎らで、さつきはじゃんけんにしか手を出せない。商品を持っていくとすぐにじゃんけんを挑まれ、そうして時間を食っている間にさつき目当ての客が押し寄せてくる。

『さ、さつきさ…』
「ムリ〜!ちょっと待ってー」

内心泣きながら働くさつきに、まいが頼める訳もなく、料理が冷めてしまうくらいなら、厨房に徹していた自分も運ぶべきなのだろう、とまいもテーブルへと運んだ。

『お、おまたせ…しました。オムライスで、す』
「お、」
「この子も可愛いじゃん。じゃんけんこの子にしようかなー」
「良いんじゃね?あっちのピンクの子しばらく空きそうにねーし」
『…!?』

そうして、まいまでも忙しい波の中に引きずられていく。


*****


休憩の時間になっても引きそうにない客足に、まいとさつきは戸惑っていた。まいは既に厨房ではなくウエイトレスに変わっており、しかも二番目に人気があった。さつきと二人で、とお願いされることもある程だった。じゃんけんで勝てさえすれば着なくても済むのだが、残念ながらまいはじゃんけんが驚くほど弱く、そこも人気の理由になっていた。

『…もう、ムリです……』
「まいちゃん頑張って!もう少しだけだから」
『まだ次のシフトの人、来ないんですか…?』
「忘れてるのか全く来ない」
『う、』

もう忙しすぎて涙目になっているまい。廊下に並ぶ長蛇の列列にはさつきやまいを目当てに並んでいる人も居るため、二人がいきなり休んでも問題になる。

「店員さーん」
『は、はいっ』
「じゃんけんしてよ。勝ったらナースで」
『は…い、わかり…ました』

じゃーんけーんと調子のいい声が響き、同時に手を出す。結果はまいの敗けで、少々お時間を頂きます、と丁寧に言い、更衣室用のスペースへと入った。
ナース服は要望により短めの丈しか用意していない、一番恥ずかしいかも知れない衣装の一つだった。朝から何度着たかわからない衣装に身を包み、客の前に戻る。入ってきた人も回りも目立つナース服を目で追う。羞恥に顔を赤くさせながら、まいは接客する。

『こ、こちらで、よろしかったでしょうか…?』
「おーそれそれ!」
「めっちゃ似合ってんじゃん、えっろー」
「他にサービスとかねぇの?」
『当店では、特には…』
「えー、つまんねー」
「もうちょっとサービスしても良くね?」

そう言った客は周りに気づかれない様に太ももを指でなぞる。驚き離れるまいにそれじゃサービスにならないと言い、過度なスキンシップを要求する。周りから見てもそれはセクハラだった。

『も、うしわけございませんが、そういうことは…』
「ケチ言うなって」
「せっかく誉めてやってんだからなー」
『や、やめてください…』

まいがはっきりと拒否する光景を見て、さつきが仲裁に入る。

「ちょっ…」
「お前、誰だよ」
「あ?」

さつきが仲裁に入る前に前に出たのは、青峰だった。青峰は客を引っ付かんでそのまま強制退場をさせると、店の中に戻り、まいを更衣室の方へと連れていった。


『青峰くん、ここ、更衣室…』
「お前は、厨房だっただろ」
『は、い』
「じゃあなんで、接客なんかしてんだよ。こんな格好で」
『お客さんに、頼まれて…』
「言い訳は要らねぇよ…他のやつにんな格好見せやがって」
『?ごめ、なさい…』
「……おら、休憩行くぞ。着替えろ」
『っはい!』

その後、青峰とまいは午後を全て自由時間として過ごした。お化け屋敷や屋台やゲーム、いろいろなものを見て回り、驚いたり笑ったり怒ったり拗ねたりしている内に、学園祭は終わってしまった。
明日明後日が休日であるため、そこで計算をして利益を算出するのだが、多分豪華な打ち上げになるだろうと、みんな期待していた。


怒り顔

END

***
時間があったら遊んでるところ詳しく書きます。


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