午前中部活へ行くと今日は仕事がないと言われてしまった。それを青峰くんに伝えるとじゃあ今すぐ迎えに行くと言われた。待っていると青峰くんが本当に迎えに来てくれた。それで、開口一番にこう言われた。

「メシって作れるか?」

話を聞くとどうやら寝過ごしたらしく、朝食を取り損ねたという話で、そこに丁度私が電話したから何か作って欲しい、と頼まれたらしい。自己主張が激しいかも知れないけど、私の手料理が食べたいとか言って欲しいなんてやっぱり欲張りなんだろうか。とりあえずスーパーでの買い物にも付き合ってくれるらしいので一緒に向かった。


スーパーに着くと、朝から来ている人は少なかった。それでも食品の特売はされていた。玉ねぎとじゃがいもが安いからあれにしようか、これにしようかと考えていると、青峰くんがお菓子を持ってきたから一つだけ、と言ってかごの中に入れた。
大体メニューが決まって食材をぽんぽんと適当に入れていたら青峰くんに笑われてしまった。首を傾げる私にさらに青峰くんは笑った。

『何、ですか?』
「いや、何か夫婦みたいだな」
『……』
「ぶはっ」

ぎょっと目を丸める私にさらに噴き出した青峰くんにちょっと私は怒ったからメニューを減らそうかと食材に手を伸ばして戻そうとしたら、青峰くんにはわかってしまったらしく悪かったって、と手を止められてしまった。手首を握られて変な声を出したら頭をくしゃくしゃに撫でられた。


こんな買い物をしているとあっという間に二十分が経ってしまっていて、青峰くんから帰りは腹へったしか聞けなかった。作るのにもまた時間がかかりますよ?と言ったらんなこたぁわかってんだよ、と返されてしまって、バカにされた感がとてもあった。じゃあなんで青峰くんは作れなんて言ったんだろう。

『肉じゃが、食べれます?』
「大体何でも食える」
『そうですか』

じゃあてきとうに、と台所に立つ。肉じゃがとポテトサラダと鮭の塩焼きでも良いかな。食材を切りながらじゃがいもを茹でて、魚を焼いていく。手際はあまりよくないけれどこれなら時間も短くなる。

「……」
『どうか、しましたか?』
「エプロンしねえの?」
『も、もしかしてしたほうが、良かったです、か?』
「そっちのがエロい」

衛生的な面で聞いたら外観的な意味でのダメ出しが来てしまった。あまりに唐突で私はすぐには何も答えることが出来ずに、顔がどんどん赤くなっていった。漸く出た言葉は青峰くんのバカ!という言葉だけで、青峰くんに反省の色は見えない。
青峰くんに構っていたら魚も焦げてしまうしじゃがいものお湯も噴いてしまうと呆れながらまた作業に戻ると後ろから覗かれた。

『…邪魔です』
「気にすんなよ」
『肉じゃが、不味く、なっても知りませんよ…?』
「菓子作りうめぇんだから大丈夫だろ」
『全然違うん、ですけど』

仕方なくまた続きの作業をする。トントンと一定のリズムで包丁を鳴らしているとお母さんが料理を作ってくれていたところを思い出す。懐かしい、と青峰くんが呟いた。


*****


そうこうして出来上がった料理を青峰くんに出すと、ご機嫌に箸を持っていただきます。肉じゃがに手をつけた。

「うめぇ」
『……、良かった』
「…なあ」
『はい、?』
「また、作れよ」
『え?』
「俺のメシ、作れよ」

気紛れで良いから、と言った青峰くんが何だか必死だったのでそんなことなら、と引き受けた。青峰くんの嬉しそうな顔を見て、私も満更でもないということに気付いた。


小さな約束

END


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -