期末テストも無事に終わった学校。学生は夏休みに浮き足立つ。まいも例に漏れず長期休暇に喜びを隠せない中、頼み込まれた。

「木下ちゃんだけが頼りなんや」
「お願い!まいちゃんっ」
「悪いが頼む」
「よろしくお願いしますスミマセン自分が出来なくて」
『…あの、もう、良いですから』

バスケ部総出で頼み込まれてしまったのはもちろん青峰絡みだ。基本的に青峰のことはさつきが処理をしていたのだが、どうやら青峰のことに慣れてきたまいに全てを任せてしまった方が効率は良いらしい。ここにもさつきの“女の勘”というものが働いているのだが。
そう言った経緯で頭を下げられていたまいだったが、正直さつきたちに頼まれるでもなくするつもりでいた。元々クラスも一緒、席も隣同士なよしみで予習などは見せていたまい。隣同士だからわかることも多く、青峰は全く課題というものをしない。まるで存在さえも知らないと言うように堂々と未提出を掲げてしまう。放っておいたら間違いなく留年、退学、と続いてしまうだろう。普段から休日に課題を出されるのだが、その処理を手伝っていたまいはそれが当然なのだと自然に受け入れていた。青峰から頼まれたことは一度もないが。

了承の言葉を受け取ったさつき率いる部員数名の顔は明るく、こんなことで喜んでもらえるのなら…とまいもやる気が出てくる。そこまでは良かったのだが、まあ仕方のない流れが待ち受けていた。

「じゃあまいちゃんは、午前中部の仕事を手伝ってね。正午前に青峰くんの家に行って課題を見てあげて。基本的にこれを続けてくれるとありがたいなっ」
『……』
「出来るよね?」
『……はい』

そうだった、とまいは自分の不用意さに落ち込みそして一気にやる気を損なってしまう。夏休みと言う期間の中、勉強をする場所は限られてくる。青峰の場合課題のために場所を移すなどありえないのだ。つまりは青峰に散々からかわれた青峰の家に行かなければならない。ちょっとさつきさんの言い方が威圧的だったな…涙目になりながらまいは思う。

「大丈夫だよー、青峰くんにはちゃーんと行っておくから!」
『え、何を…?』
「まかせてまかせて」

にっこにっこと楽しそうに笑うさつきにまいは何がそんなに楽しいのかと憂鬱に思った。さつきはまいと青峰がはやくくっつけと少々無理やりにもなっている。今回の課題の件も、前例があったこともありさつきから部員に話を持ちかけたのだ。

「…木下ちゃん、大丈夫なんやろか」
「まあ荒治療だと思えば」
「やっぱ桃井は青峰の肩持つんや?」
「んー、そうでもないですよ?まあ、今吉さんとどっちかと言われると青峰くんですけど、一番はまいちゃんですから」
「ベタ惚れやな、俺ら」
「可愛いですもんね」

さつきは母親のような心境で見ていた。今吉が少しまいに気を引かれていることを知っても、やはりまいの幸せな方が良いに決まっている。ついでに青峰の幸せも考えて、二人が付き合うのが一番だと結論が出る。

「俺もこんだけ勝ち目ないんに諦めれへんから困るんやけど、引き下がれへんのやったら本気で行くしかないなあ」
「今吉さんが何しても止めませんし邪魔しませんよ。釘刺さないでください」
「すまんすまん」

クスクス笑う今吉に苦笑を返すさつき。そんな二人のやり取りなど知らず、青峰とまいの夏がそこまで来ていた。


Marbleな気持ち

END


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