青峰くんは部活から遠ざかってしまった。

桐皇学園は誠凛に圧勝した後に敗北してしまった。接戦だったその試合、敗因は青峰くんのサボりだった。
試合前にはふざけてもいた青峰くんは、やっぱり黒子テツヤくんと火神大我さんの影響を受けて沈んでいた。その感情は、どう表して良いのかわからない。勝つことは嬉しいはずなのに、素直に喜べないもどかしさ、勝つに連れて周りとの実力がさらに明確になる絶望感、周りが離れていく喪失感。どうすれば救えるのか、なんて、さつきさんがずっと考えてくれていることを考えても無駄だ。

ただ、望みがあるとすれば、さつきさんなのかも知れない。長年連れ添ってきた二人だからこそ確かにある結び付きが、青峰くんに今必要なものだと思えるから。私に出来ないことを、さつきさんはこなしてきた。青峰くんの性質も最初はさつきさんから聞いていたし…
考えていて自分でも思うけど、さつきさんを引き合いに出しすぎなんじゃないかと思う。最初から私が勝るところなんてないさつきさんを引っ張って来る意味がわからないし、自分で考えていてへこんでいるところが救えない。なんでこんな嫌な気分になるんだろう?何故か二人のことを同時に考えると胸の辺りがもやっとして息苦しい。

「何、難しい顔してんだよ」
『え…あ…青峰くん』
「考え事も程々にな」

くしゃ、と髪を乱しながら手が頭の上を撫でる。今までだったら緊張していた瞬間が、違う感情で埋め尽くされる。全身が熱を帯びていくのがわかる。逃げ出したいけど傍に居たいなんて、どうすればいいのか。

『青峰くん…あの、』
「部活は行かねぇよ」
『それじゃなくて』
「帰りも無理」
『違います…ちゃんと、話を聞いてください』
「何だよ」
『青峰くんには、さつきさんが傍に居ますからね』

言った後に呆然とした顔になり黙り込む青峰くん。何かおかしなことを言ったかと思ったけれど明らかにおかしかった。脈絡もなく幼馴染みが傍に居ると言われたら誰だって戸惑うと思う。
すぐに訂正をしようとわたわたと動き出す私に青峰くんは真顔になった。

「お前は?」
『あ、え?』
「だから、お前はどうなんだよ」
『どうって、何がですか…』

面倒そうな少し苛立った顔をして頭をかきむしった青峰くんの頬が少し赤い。本当にほんの少しだけど。

「まいは、俺の傍に居るのかどうかってことだよ」
『……』

今度は私が唖然とした。そんなことを聞かれても、私が傍に居ても出来ることなんてないのにどうしてそんなことを聞くの?なんて聞かなくてもわかる。少しは私を必要としてくれてるんだ。それが些細なことでも。嬉しくて顔がにやにやするから堪えようとしてもやっぱり無理だ。青峰くんに頭をはたかれた。

『私、出来る限りずっと、青峰くんの傍に居ます』
「バカか、お前」

当たり前なんだよって言った顔が安心したように見えた。


ここから始まる何か

END


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