木下まいのマネージャーの仕事は、部室の衛生面の管理ともう一つは青峰大輝を体育館に連れていく事だ。

そこからは青峰の幼なじみさつきが頑張ってバスケの練習に参加させようと必死に説得をする。
一度まいも説得しようとしたのだがすぐに話を逸らされてしまい、最後には世間話になっていたことから無駄だと諦めていた。

そして今日も、さつきの説得を目の前で見ているのだが。


「はやく練習入りなさいよ!ガングロクロスケ!!」
「うるせえ。やらねえって言ってんだろ?」
「もう!大ちゃんの家にある堀北マイの雑誌燃やしちゃうよ!?」
「人のもん燃やす度胸あんのか?」
「〜〜!」


さつきでもどうやらダメならしい。いい線は言っているのだが、迫力に欠けるのだろう。
まいに至っては青峰の中で価値がある雑誌とはどんなものだろうと考えるだけで、さつきのフォローに回ることをすっかり忘れている。

「…でも練習しないわりには最近部活に来ること多いよね」
「あ?まいが来いってうるせえから」
『ご、ごめん、なさい…』
「それは私が頼んでるから仕方無いよ!ごめんね」
『いえ、仕事もらえるの、嬉しいです』

部活で仕事が与えられることを、まいは嫌とは思わない。何故ならそれはまいに存在意義がある証拠だからだ。必要とされる喜びをまいは好いていた。
そんな姿勢にさつきは感心する。マネジメント以外にも、バスケのルールを勉強していたり、率先してやることが無いか聞きに来るところが、まいの良いところだと受け止めていた。

ついでに、まだ二人の誤解は完全には解けてはいない。少なくともさつきの中では、まいは青峰が好きということになっている。そして、青峰もまいの誘いを断らないところを見ると満更でも無いのだと推測していた。
だから、この頃のさつきの気遣いは異常だった。何かと二人を一緒にしようとし、マネージャーとしての仕事も増えないように努め、二人の恋が成就するよう懸命に祈っていた。
他人から見ても、相性的に二人は良いのだ。


「まあ、こいつが帰り付き合えとか言うから、暫くは来てやるよ」
「付き合えってどこに!?」
『あ、えっと…帰り道の……』
「秘密に決まってんだろ」
『秘密…?』
「何それえええっ」

目の前に繰り広げられている青春にさつきは赤面しながら興奮を隠せない。あわよくば自分もテツくんと…と考えるあたり、憧れはあるようだ。

そうとも知らずまいはさつきの態度に困惑し、事態を理解している青峰だけがニヤニヤと反応を楽しんでいた。どうやらさつきをからかうだけが目的の様だ。
因みに帰りに付き合うのはバスケの練習くらいなものであり、他には全く予定が無いため青春と言っても汗臭い方の青春しか二人には見込めなかった。


「まいちゃんもやるなぁ…私もどんどんアタックしなくちゃ!」
『……?』

さつきが勘違いを理解するのに、およそ一週間の時間が必要だった。


二人だけの秘密


END


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テーマ「人外ファンタジー」
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