私は気付いてしまった。
いや、気付くにしても少し遅いんじゃないかな。と自分でも思ったんだけど


青峰くんが授業を高確率で休んでいる事に気が付いた。

部活にも来ないし、授業もまともに受けない。もしかしたら青峰くんはサボり癖みたいなものがあるんじゃないだろうか。

それは余り本人にも良くない癖だし、治せるなら治した方がいいよね。手助けだけでもやってみよう。


そう決意した私を後悔した。今は三時間目の授業が始まってる時間。今いる場所は図書室。隣で机に突っ伏して寝てるのは青峰くんだ。

私は何でこんなことになったんだろうと思い返してみる。そう、授業前に教室から出ようとした青峰くんに声を掛けて、何処に行くの?と質問をして、そしたらサボり。と普通に返されてしまって、慌てて引き留めていたら時間が経っていって、チャイムがなる寸前に何かを言われて引っ張って来られた。

何て言ってたっけ。思い出していると、青峰くんがこっちに顔を向けた。


「何唸ってんだよ。うるせえ」
『すみません、ちょっと混乱して、とりあえず何が起きたのか整理してました』
「つまんねえこと考えんなよ」
『青峰くんは何考えてるんですか?』
「あ?何も考えてねえよ。授業がつまんねえから寝に来ただけだ」
『そ、そうなんですか…』


それにしても、サボって何か得があるのかな。図書室に居てもやることといったら本を読むくらいしか出来ないし、青峰くんは読書はしないと言っていたし。

青峰くんを観察していると目を閉じて寝る体勢に入っている。寝不足だったのかな。


『……』
「………おい」
『は、い』
「何見てんだよ」
『やることも無いので、青峰くんの観察を』
「…寝れねえ」


起き上がった青峰くんは椅子に凭れかかって前を見る。私が邪魔をしたのかと思うと申し訳無い気持ちになる。


「悪かったな」
『え…?』

不意に頭に何かが乗った。確認すると、どうやら青峰くんの手のようで、あやすようにぽんぽんと撫でてくれる。春と言えど気温はまだ肌寒くて、青峰くんの手がとても暖かくて気持ちがいい。


「サボらせて悪かった」
『いえ、良いですよ。私が青峰くんの邪魔をしたからこうなったんですし』
「そうかよ」
『…青峰くんって、私には謝りますよね。他の人に謝ってるところ、見たことないです』
「謝らねえからな」
『……』


それはつまり私って青峰くんが謝らなければならない程手に負えない、みたいな感じなんだろうか。そこまで我が強いとは思わないんだけどな。

「お前、俺が何か言わねえと自分のこと出さねえだろ」
『そうですか?』
「そうなんだよ。ついでに、俺が折れないとお前はまあ仕方無いで終わらせるだろ」
『…かもしれないです』
「我を通すって事をしねえから、俺が折れてやってんだよ」
『そうだったんですか!あの、すみませんありがとうございます』
「……」

お礼を言って頭を下げたあと、青峰くんを見たらすごく微妙な顔をされてしまった。私何か変なこと言ったかな。


「正直、お前みたいなヤツ苦手だったんだ。合わねえし。けど、お前といるとまあまあ飽きねえな」
『苦手、なんですか』
「今まではっつってんだよ。落ち込むな」


髪をわしゃわしゃと撫でて青峰くんは笑う。こんな笑顔を、バスケをやっている時にしてくれたら良いのにな、と思った。


『今日、部員の人数分お菓子作ったんです。部活、来ますか?』
「菓子?」
『はい。クッキーを』
「暇だな」
『頑張ったんですよ……』
「冗談だよ…仕方ねえ、行ってやるかな」
『クッキー欲しいだけのくせに』
「何か言ったか?」
『何でもないです』

今日は青峰くんのバスケ、見れるかな。


餌で釣る

END


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