『あ、あれ?』


今日は何ともない日で、何ともない日ということはいつも通りということで、つまりは部活もあるということで、今日は青峰くんを引っ張っていかなくてはならないのだけど


『……』

机に紙切れが置いてあって、見ると拙い字で【じゃあな】とだけ書かれていた。これは誰かと考える余地もなく青峰くんだろう。つまりもう帰ったのかな。だけど私今日は青峰くん連れていくこと以外はもう終わらせちゃったしな。どうしよう。


そうやって悩むこと数分。やっぱり私一人で部活に行くのは申し訳ないと判断したため教室で青峰くんが帰ってこないか見ていようと決めた。鞄も無いから多分戻って来ないんだろうけど、可能性があるならそっちに全力で行きたい。


『よし、予習しよう……っ』

明日は英語も数学も古典も予習必須だからやることはたくさんあるし、暇になることは無いはず……
手始めに苦手な英語から取り掛かった。


***


『お、終わってしまった……』

時刻は五時。帰るにはまだまだ早い時間帯。青峰くんが帰ってくる様子もなく、暇になってしまった。そうといっても今から帰ると何だか部活をサボってしまった気がして申し訳無くなるから、やっぱりここに居よう。うん、そうしよう。


『青峰くん…来ないかな……』

***


ああ、くそ。寝過ぎた上に忘れ物しちまった。めんどくせえ。

誰もいない廊下をずっと歩いて教室のドアを開ける。教室の窓から夕焼けの陽が差して見えなかったが、どうやら一人居るらしい。あの席は


「まい」
『…………』
「…寝てんのか」


無防備に机に突っ伏して寝てるまいは本当に静かで息してるのか少し心配になった。
頬を指先でつついてみると柔らかい感触が気持ちいい。温い。
こいつは良くわからない。今まで一緒にいた奴と同じ普通の女子なのに、興味の無いバスケを見たいと言って、マネージャーになって、それで今度は俺を練習に引っ張って行くとか言い出して。
どんだけ人に影響されてんだよ。


『…、ん〜…………?』
「っ……」


声に驚いてすぐに手を引っ込めると、もそもそと起き上がって目を擦るまい。

『う…あ、お……!』
「おう、起きたか」
『あ、あああ、あ、青峰…くんっ』
「落ち着けよ」

苦笑して少し待ってやる。まいのこういうところ、少しイラッと来るけど、それ以上に何かに頑張ってる所は応援したくなる。


『あ、青峰くん!部活、行きましょう……!』
「あー…」


時計を見ると午後六時。部活に行くには微妙な時間だ。時間によっては行ってやっても良かったけど、止めた。


「よし、帰んぞ」
『え!?』
「ぐずぐずすんな。置いてくぞ?」
『あ、は、はい……っ』


わたわた世話しなく準備するまいを横目に、ふと何で部活に行っても良いと思ったのかを考えた。答えは全く出てこなかったけど、まあ大した理由も無いんだろう。



prompt

END


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