キミのおこした奇跡side S


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恋の受験戦争


黒猫コーラ味の和解


「よし!間に合ったっ!!」


仕掛け噴水が作動する30秒前。
ギリギリ!


「工藤、くん、足、早っ…」
「そりゃー現役サッカー部だし」


チラッとあおいを見たら、息が上がっていて。
はぁぁ、と、呼吸を整えるのを目の端で捉えながら、カウントダウンを始めた。


「10、9、8、7」


左腕の時計が時を刻む。


「6、5、4」


俺の右手は、あおいの左手と、繋がっていた。


「3、2」


相変わらず手も小せぇなぁ、とか。
そんなこと思った。


「1!!」


掛け声と共に、サァァァァァっと、仕掛け噴水が噴き上がった。


「す、ごい…」


噴き上がる水が、外界を遮断する。
真上を見上げると、綺麗な虹が見えた。


「オメーこういうの好きだろ?」


そう言って下を向くと、すごく久しぶりに、あおいと目が合った。


「あー…っと、さぁ、」


目が合ったけど、瞬時に今の気まずさを思い出して言葉が詰まった。
…でも。
コイツ以外、誰も聞いてねぇし…。
小さく深呼吸した。


「俺、今日誕生日なんだけど、」
「あ、ああ、うん。そう、だよ、ね」
「…だから、なんつーか、」
「う、うん?」
「だ、だから!」
「…だから?」
「お、俺も謝るから、オメーも謝れ」


そういうこと言いたかったわけじゃねぇ気がする。
そもそも喧嘩してるわけじゃねぇし。
…いやでも、このままじゃ気まずいだけだ。
なら先に仲直り、だ。
だからって俺だけ謝るのは癪に障る。
だってそうだろ!?
コイツがそもそもクロバクロバ言ってなきゃこういうことには


「はあ!?」


一際デカイ声であおいが言う。
…この女、すげぇバカを見るような目で見てやがる…!!


「だから!………俺が悪かった……ほら、オメーも謝れ!」


私納得いきません!
て顔してたあおいが俯く。
一言だ。
オメーが!一言口にしたら、この場はきっと丸く収まる。
そう思った時、あおいが首を傾げながら口を開いた。


「ご、ごめん?」
「……おー」


短くそれだけ言ったものの、正直すっげぇホッとした。


「じゃー、まぁ、仲直り、ってことで乾杯でもするか」
「乾杯?」
「ほら!」


あおいにさっき買った缶コーラを差し出す。
缶を開けようと、少し傾けながら指をかけた。
ら、


プシューーーー


まさかの噴射。
俺が開けたコーラがあおいの顔に命中した。


「わ、悪ぃ…」


明らかに顔をしかめて、コーラを滴らせるあおい。
や、やばいっ!
今仲直りしたばっ


カシャカシャカシャカシャッ


あおいが手に持っていたコーラをあり得ない勢いでシェイクしはじめた。
ま、まさかコイツ


プシューーーーーー


「ごめんね」


この女っ!!
俺がかけたより勢いあるじゃねぇかっ!!


「オメー今わざわざ!缶振ってから開けたな?」
「先にコーラかけたの工藤くんじゃん!」
「俺はわざとじゃねーだろ!?」
「私もわざとじゃないもん!!」
「見えすいた嘘つくんじゃねーよっ!!」
「いひゃいいひゃいいひゃい」


びよ〜ん、て。
久しぶりに両頬つねったら、相変わらずよく伸びた。


「ったく!オメーってヤツは」


ちょっと話さなかった期間があろうが、コイツは変わらない。
コイツのこの行動のお陰で、ほんとに元に戻った気がする。


「ほら、行くぞ!」
「え?」
「え?じゃねーよ!来たからには全アトラクション制覇して帰んだよ!」


さっき展望台に行く前に、今日は久しぶりに母さんと2人でパーク巡りをしたい、と父さんに言われた。
待ち合わせは夜のパレード後とか一方的に言ってた。
なんのために家族で来たんだと思いながらも、待ち合わせまでまだまだ時間だけはある。
なら、楽しんでいくしかねぇだろ!


「工藤くん、工藤くん、」
「なんだよ」
「…せめてお互い顔洗ってからにしませんか?」


そう言われたら、自分の顔が若干ベタついてるのがすげぇ気になってきた。
そのままトイレに直行して顔を洗う。
ハンカチを取りだそうとポケットに手を突っ込んだら、ケータイが指に当たった。
…そういやクロバにメールしたのか?
した、よな…。
でもそこを今俺が蒸し返すとまたややこしくなり兼ねない…。
ぶっちゃけすっげぇ気になるけど。
そこはもう、触れないことにした。


「工藤くん、工藤くん」
「あん?」
「お誕生日、おめでとうございます」


そう言って渡されたのは小さい紙袋。
中から出てきたのは、


「黒猫のストラップ…」
「そう!可愛いでしょ!」


青い瞳の小さな黒猫のストラップ。
てゆうか目付き悪ぃぞ、この猫…。


「なーんで、黒猫なんだよ?」
「それイチっぽくない!?それ見つけたらイチ思い出しちゃって…、工藤くんにピッタリでしょ!」


そういやしばらく会ってなかったしなぁ…。
だからって、中3の男に黒猫のストラップやるか?
…いや、去年のハイチュウ1個よりは格段にランクが上がった(気がする)からいいのか?
イマイチ腑に落ちないが、とりあえず貰ったストラップをケータイにつけることにした。
それってつまりお揃いってこと!?と、園子からツッコまれるのは数日後のこと。

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bkm

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