キミのおこした奇跡side S


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恋の受験戦争


1年に1度の


「しーんちゃん!」
「…なんだよ」
「連休の予定はー?」
「あー…、部活があるけど?」
「そう?じゃあお休みしてね!」
「はあ?」


母さんたちが来てしばらくした連休直前のある日。
あの後母さんたちがあおいと連絡取ったんだか取ってねーんだか知らねぇが、あおいがうちに来ることはなかった。
ただなんとなく気まずさだけが先走っていて。
あおいと話すことなく、弓道部の練習試合も昨日終わり、また日常が過ぎていくんだろう。
そんなこと思っていた。


「なんで部活休まねぇとなんだよ」
「あら、たまには家族サービスしてもらおうと思って!」
「家族サービスゥ?」
「そう!だから空けておいてね!5月4日の木曜日!」


参加してくれなかったら新ちゃんに預けた優作のカード使えなくしちゃから!なんて、恐ろしいことを笑顔で言って母さんは去っていた。
あり得ねぇ。
カード止められたら俺ほんっとに生きていけねぇじゃねぇか!
何が家族サービスだ!
強制仲良し家族ごっこの間違いだろ!?
そんなこと言ったらマジでカード止められかねないから黙って従うことにした。


「新一今年は?」
「はあ?今年って?」
「だからー、5月4日はどうするの?って聞いてるの!」
「どーする、って、親と出かけるけど?5月4日がどうした?」
「もー!また忘れてる!5月4日は新一の誕生日でしょ!!」


ああ…。
だから家族サービスなわけね。


「家族で出かけるならあおいは?」
「知らねぇ」
「知らないって、まだ仲直りしてないの?」
「見りゃわかるだろ。…てゆうかそもそも喧嘩してるわけじゃねーし」
「…1年に1度の自分の誕生日だよ?このままで後悔するのは新一の方だと思うけど?どうするの?ほんとにいいの?」


わーってるよっ!
でもアイツ目合わせねぇし、話もしねぇどころかうちにも来ねぇんだから仕方ねーだろ!


「とにかく俺、連休予定あるからオメーが遊んでやれよ」
「あ、ちょ、」


どうするの?なんて、俺が聞きてぇ。
どーすりゃいいんだよ!


「はーい!みんな準備できたー!?」
「ああ、いつでも行けるよ」
「さっすが優作!新ちゃんは!?」
「え?あ、俺も、いつでもいーけど、」
「あおいちゃんも私メイクがばっちりだし!じゃーみんないっくわよー!!」


なんで?
なんでコイツがいるんだ?
いや、母さんが誘ったんだろうけど。
だからってなんで誰も俺にコイツが来るって言わねぇんだよ!
しかも後部に並んで座っても会話ねーじゃねぇか!
どういうつもりで誘ったんだよ!!


「んー…やっぱり混んでるわねぇ…」


その声で窓の外をチラッと見たら


「はっ!?トロピカルランド!!?」
「あら、言ってなかったかしら?」
「聞いてねーし!なんで中3にもなって家族でテーマパークに来なきゃなんねーんだよっ!!」
「いーじゃなぁい!いくつになっても親からしたら子供は子供なのよっ!!それに最近リニューアルオープンしたから新ちゃんが知ってるトロピカルランドとちょっと違ってきっと楽しいわよ!」


楽しかねーよっ!!
ああ、でも、トロピカルランドだからコイツ誘ったのか…。
だからってフツー中3の息子とテーマパーク来るか?
ほんっと、我が親ながらあり得ねぇ…。


「そう言えば新一知ってるか?」
「あーん?」


強制仲良し家族ごっこ=自分の誕生日に家族でトロピカルランドにうんざりしてた俺(あおいがいなかったら帰ってた)
その俺を飲み物を買いに行くぞと強制的に引っ張ってきた父さんが口を開いた。


「さっき通ってきた広場。10時から2時間おきに仕掛け噴水が作動するらしいぞ」
「へー」
「その仕掛けが作動した時中央に立っていると周囲が水の壁で遮断され、2人だけの空間が作れるらしい」
「…はあ?」
「今回のリニューアルの目玉の1つらしいから、かなり期待できるんじゃないかな?」
「…へーそー」
「有希子もだが…あおいくんも好きなんじゃないかな?そういう仕掛け」


あー…なんかアイツそういうの好きそうだよなー…。
何せクロバのこと王子とかぬかしてたくらいだし。
父さんに促され、あおいと母さんが待っている場所に行く。
仕掛け噴水、ね。


−1年に1度の自分の誕生日だよ?−


1年に1度の自分の誕生日。
父さんと母さんが作ってくれたチャンス。
それを利用できなかったら、俺もその程度の男、ってわけだ。
今日まだ1度も目を合わせていないあおいは、相変わらず俺を見ずに俯いていて。


−仕掛けが作動した時中央に立っていると周囲が水の壁で遮断され、2人だけの空間が作れるらしい−


チラッと腕時計を見る。
10時から2時間おき、だったから


「やっべ!後3分しかねぇ!」
「えっ?」
「あおい!走るぞ!!」
「え、ち、ちょっ!」


久しぶりにあおいの手を引いて、全力疾走で広場まで駆け抜けた。

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bkm

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