■怒髪天を衝く
「何やってんだ、オメー」
「く、工藤くんっ…!」
あおいはあからさまに顔が動揺していた。
てゆうか、なんでコイツがここにいる!?
「何、コイツ」
「え!?あ、ええーっと、く、黒羽くん?」
誰も名前なんか聞いてねーだろ、バーロォ!!
「芳賀ちゃん、誰、この人?」
「あ!はい!あのぅ…工藤くん?」
掴み所のないヤツ。
それが俺が間近で見たクロバの感想。
「もしかして、芳賀ちゃんの彼氏?」
「えっ!!?」
俺とあおいに何度か視線をやりクロバが言う。
「ち、ちがっ」
「そうだ」
「はあ!!?ち、ちがっ!この人」
身振り手振り、体全体で否定しようとするあおいにイラッときた。
「オメーは少し黙ってろ」
「い、いひゃい…」
それを黙って見ていたクロバが、ニッて音がつきそうな笑顔を向けてきた。
…いちいち癪に障る。
「ふぅん…。ま、芳賀ちゃんちっちゃくて可愛いから彼氏いても不思議じゃねーけど!何よりおもしれーし!それに俺、そういうのあんま気にしねーし!」
…はあ!!?
「んー…あ!あった、あった!今日芳賀ちゃんに会ったら、もっかい渡そうと思って書いておいたんだ!」
そう言ってクロバは俺の目の前であおいに紙切れを渡した。
チラッとあおいの手元を見ると、
黒羽快斗
080XXXXXXXX
sky-XX@XXX.jp
どこからどう見ても、クロバの連絡先が書かれていた。
…良い度胸じゃねーか。
「彼氏いても友達は大事だぜ?って、ことで今度こそ連絡待ってっからー!じゃあな、芳賀ちゃん!彼氏くんもばいばーい!」
そう言って去って行ったクロバをあおいはいつまでも見つめていた。
「おい」
「ひぃっ!?」
…「ひぃ」?
ひぃっ、てことは俺に対して何かしら思うことがあるってことだよな?
「なんだ、今の?」
「な、なんだ、って…友情のはじまり?」
「頭悪ぃこと言ってんじゃねーよっ!!」
「痛い痛い痛い痛いっ!!!」
「なんなんだよっ!!江古田の人間が何しに来てんだよっ!!!」
「れ、練習試合の申し込みにき痛いってっ!!」
「そんなん受けんじゃねーよっ!!!」
「そんなの私が決めることじゃないじゃんっ!!!」
「何が俺は気にしねーだ!ふっざけんじゃ」
「だいたい!!」
「あ!?」
「彼氏って何!?なんでそんな嫌がらせするのっ!!?せっかく黒羽くんが私に会いにに来てくれたのにっ!!間に受けて誤解されたらどうするのっ!!?」
はあ!!?
嫌がらせ!?
俺が嫌がらせでここにいるとでも思ってんのか!?
「テメー、それ本気で言ってんのか?」
「そうだよっ!黒羽くんほんとに良いひ痛い痛い痛い痛い!!!」
なんなんだよっ!
なんでコイツこうなんだよっ!
嫌がらせだぁ!?
普通気づくだろ!?
ふざけんじゃねーよっ!!
「オメー今日うち来んな」
「痛いぃぃ…て、えっ!?」
「1人でメシ食え」
「や、やだっ!イチに会いに」
「来んなって言ってんだよっ!!来てもうちに入れねーからなっ!!」
「あ、ちょ、」
冗談じゃねーっ!
結局俺の今までの行動これっぽっちも役に立ってねーじゃねぇかよっ!!
ふざけんじゃねーよっ!!
ドガッ
「く、工藤が荒れてるっ…!」
「何があった工藤!?」
「反抗期にしては時期が遅いぞっ!」
「ウルセェ!!何もねーよっ!!!喋ってねーでさっさと練習しねぇかっ!!そこっ!突っ立ってねーでさっさと並べっ!!!」
「「「(マジで機嫌悪ぃ…)」」」
イライライライラ。
とにかく腹の虫が収まらない。
あんニャロォ、次会ったらただじゃおかねー!!
この日の俺のしごきの犠牲になって新入部員が4人辞めたって知ったのは、随分後のことだった。
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bkm