キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

変えたい日常


無理に変える必要は、ない


「え?トランペット?」


相変わらずあおいは「工藤くん」のまま呼び続けてる。
まぁ…、コイツが名前で呼んでる男なんて俺の父さんくらいだからいーや、って思う。
…クロバあたりを名前で呼び始めたらただじゃおかねーけど。


「そう!新一の家になかったっけ?」
「あー…そういやなんか1本あった気がするけど…」
「でしょ!あおいトランペット吹けるんだって!貸してあげたら?」


そんな感じに変えたくても変わらない日常を過ごしていると蘭がにっこにこして話しかけてきた。
…コイツなりに「俺のため」にいろいろ考えてくれてんだと思う。
でもなぁ、オメーその顔半園子状態だぞ…。


「どこに仕舞ってんのか母さんに聞いてみるけど…、オメーマジで吹けんのかよ?」
「失礼だな!吹けるよ!もう6年もしてるんだから!」
「へぇ〜〜…。あおいそんなに長いことトランペットしてたんだ」
「うん。お母さんに女の子なんだから音楽の1つくらい覚えたら?って言われてから初めてそのままずるずると」
「「…」」


お母さんに言われて、か…。
最近まではやっぱ同情なのかなぁ、とか思ってたけど。
でも「コイツだから」なんかしてやりてーって、思ったんだと思う。
そう思うとやっぱり、俺はかなり前からコイツのこと好きだったんじゃねーのかって思った。


「え?トランペット?」
「そー。母さん持ってただろ?あれどこにあんの?」


春休みのマレーシア旅行の後、父さんは執筆、母さんは「ナイトバロニス」とか言われて持ち上げられてあっちのテレビ局で事件推理の仕事が増えたとかなんとか。
…最も母さんの推理じゃなくて父さんの入れ知恵の結果だろうけど。


「そっちの家にあるけど…、新ちゃんバイオリン止めてトランペットでも始めるの?」
「俺じゃねーよ」
「え?俺じゃないって?」
「…あおいが、」
「あおいちゃん?あおいちゃんトランペット吹けるの?」
「らしー」
「らしい、って…」
「なんでも母親が音楽でも覚えろって言って始めたのがトランペットでもう6年もやってんだと」
「…そう」
「でも今ねーから吹けねーだろ?だから母さん使ってねーし、貸してやったらどうかって思ってさ」
「…そうね、あおいちゃんに使ってもらいましょう!」
「おー。で、どこにしまってあんの?」
「新ちゃんのバイオリンをしまってるお部屋あるでしょ?あのお部屋の、」


母さんもすげぇトランペットがうまいとかいうわけじゃなく。
ただ昔ドラマでトランペットが趣味の学生役をやったらしく。
手元アップした時だけ別の人…ってのが嫌で始めたらしい。
まぁ…人に聞かせられる程度の技術はあるらしい(本人談)
でも元々好きでやったわけでもねーから、気がついたら家で埃かぶってた、と。
我が親ながらもったいねぇことしてる人だ。


「ええーっと、…お、これだな」


思ったよりも綺麗、つーか俺が知らねぇだけで母さんわりと最近まで使ってたんじゃねーか?
トランペットの価値とかわかんねぇけど、綺麗に手入れされててなんとなく高そーな感じはした。


「…アイツどんな演奏すんだろ…」


俺の歌声みてぇな演奏だったら即没収してやる。
俺はまだ「声」だからいいけど、トランペットで悲惨な演奏だった近所迷惑この上ない。
…でもなー、アイツ6年やってても下手そーなんだよな。
トランペットは音の出し方が難しい。
ただ息を吐き出せば音が出るかっていったらそうでもない。
昔母さんに聞いたやり方で少しだけ音を出してみた。


…プォー…


結構ムキになって吹いてもようやくこの音が出ただけ。


「ま、俺にはバイオリンがあるし!」


誰に言うわけでもなく、トランペットをしまって部屋を出た。


「コレ好きに使っていーってさ」
「…すごーい!これ高いんじゃない!?」
「さぁ?金額のことはわかんねーけど」
「いいの!?ほんとにいいの!?」
「おー」


〜♪〜


「すごい!良い音するっ!!久しぶりに吹いたけどすごい嬉しいっ!!!」
「…良かったな」
「うん!ありがと!工藤くんっ!!!」


コイツのこのテンションてロス行った時以来?
ってくらい目きらっきらさせてトランペットに触ってた。


〜♪〜♪〜


…確か母さんが持ってたクラシックCDの中にあったな。
ええーっと、そう!「シンフォニエッタ」!
トランペット何本かを使う曲。
へー…、それなりにうめぇじゃん…。
伊達に6年もやってねーってことだな。
ふっとあおいの口元に目がいった。
俺があれだけムキになって吹いてたものを、あおいは少し笑いながらすげぇ良い音出して吹いてる。
ああ、なんだ。
もう少し早く貸してやれば良かったとか。
…ムキになって変えようとしなくても、こういう顔少しずつ増やしていけばいーんじゃねーか?とか。
楽しそうに吹くあおいを見ながら思っていた。
…つーか俺間接キス?
なんて気づいたのは演奏が終わってしばらくしてからのこと。

.

prev next


bkm

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -