キミのおこした奇跡side S


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変えたい日常


変えたい日常


男としての認識。
どーこー行動起こす前に、まずそれをあおいに植えつける必要がある。
そうでもしねぇと、どんなに行動起こしても、全部が空回りな残念なことになりかねない。
でもなー…。
男としての認識ったって、アイツの中の男って言ったら…


「なぁ…」
「なに、新一?」
「…花背負ってる男ってどんなヤツだ?」
「…はあ?」


最近やたらと蘭と話す機会が増えた。
内容はほぼあおいのことなんだけど。
今日も例に漏れることなく、話題の中心はあおい。


「え、何?花背負ってる??」
「…」
「は?どういうこと?意味わかんないんだけど…」
「…アイツが、」
「うん?」
「…アイツがクロバをそう言ってた…」
「…クロバ、って、江古田中の黒羽くん?」
「そー」


何度か瞬きをした後、蘭が苦笑いをした。


「それ聞いてどーするの?」
「え!?どーする、って…別、に、どんなヤツのことかと思っただけで…」


自分でも情けないくらい語尾が小さくなったのがわかった。


「あのねぇ、新一。今新一に必要なことは黒羽くんの真似をすることじゃなくて、あおいに新一の良さを知ってもらうことでしょ?」
「…わーってるよ!」
「わかってないから言ってるんじゃない!新一がどんなに頑張って地球がひっくり返ったとしても、新一が花背負ってる男の人になれるわけないでしょ!」


最もな話だ。
何も間違っちゃいねえ。
でも地味に傷ついた気がするのはなんでだ?


「だいたいなんでいきなり花背負ってるなんて話になったの?」
「…」
「新一?」
「…俺、」
「うん?」
「…アイツから男として見られてねぇから」
「…はあ?なんで?なんでそう思うの?」


キスしてもなんにも思われなかったからだよっ!
…とは言えねぇよな…。


「新一の考えすぎじゃない?」


考えすぎじゃねぇから悩んでんじゃねぇか!


「…そんなに自分の存在アピールしたいなら…そうだなぁ、とりあえず『新一』って呼んでもらうようにしたら?」
「…え?」
「新一とあおいいっつも一緒にいるのに今だ『工藤くん』じゃない。…呼び方が変われば、少し近づいたような気がすると思うけど?」


女の視点はおもしろい。
名前なんて個を特定する名詞にしかすぎないと思っていた。
でも『工藤くん』から『新一』に変われば、少し変わる…?
そう言われてみればそんな気もしなくもない。
考えてみたらあおいが男の名前を呼んでるのなんか、父さんくらいじゃねぇか?
でもなぁ、いきなり『新一』って呼べってのも…。
あっ!


「蘭は蘭です」
「え?」
「園子は園子です」
「…うん?」
「…じゃあ俺は?」


ああ、人はこんなくだらないことでも緊張するもんなんだな、って。
このとき初めて知った。


「工藤くんどうしたのいきなり?頭打った?」


オメーにだけは頭の心配されたかねぇんだよっ!!


「…蘭は蘭です、」
「工藤くんは工藤くんでしょ?それより今日の数学の、」


…知ってたんだけどな。
コイツはこういうヤツだって。
あの時なんで俺コイツの名前呼んだんだっけ?
ああ、減るもんじゃねぇからいいかってなったんだ。
マジで減るもんじゃねぇからいーじゃねぇか。


「だから聞いてる?工藤くん」
「…聞いてる」


…別に急ぐことじゃねぇし。
言われてみれば俺もあおいって呼ぶまで少し時間かかった気するし。
まぁ…、いいか。
…なんて思ったのが間違いで、結局あおいが俺を名前で呼ぶことはこの後数年先までないなんて、この時は思いもしなかった。

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