キミのおこした奇跡side S


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変えたい日常


カミングアウト


"実生活こそ、いかなる想像力の産物にもまして思いきった、何がおこるか底知れぬ不思議なものである"
 シャーロック・ホームズ−赤毛連盟より


あり得ないあり得ないとばかり言っていても、やっぱりそれは動かしがたい事実なわけで。
認めざるを得ない、今の俺の真実だった。


「工藤くんおはよー」
「おー」


今日も変わらない日常が始まる。
…つーか俺、どーしたらいいわけ?


「そう言えばこの間貸してくれた優作さんの、」
「はぁ?オメーまだ読んでねーの?」


男扱いされなかったこともなければ、そもそも誰かを好きになったこともなかった。
誰かを好きになった。
それはいい。
そこはもう動かしがたい事実。
じゃあその先は?


「新一、何かあった?」


蘭は目ざとい。
それが幼馴染ってもんだろーって言われたらそれまでだけど、俺の些細な変化によく気づく。
この洞察力、オッチャンよりも探偵向いてんじゃねーか?


「別になんもねーけど?」
「嘘」
「嘘ってなんだよ!別になんもねーって!」
「…最近ほんとに変だよ?何か隠し事してるんでしょ?」


だからなんでコイツこんなに洞察力いーんだよ…。


「だから別に」
「あおいと何かあったの?」
「へっ!?」


やべ、思わず声が裏返っちまった…。


「…あったのね」
「い、いや!ねーよ、なんも!アイツ見てみろよ!別にフツーだろ!?」
「…あおいは普通かもしれないけど、新一のあおいに対する態度がなーんかおかしいのよ」


蘭オメー、マジで探偵目指したらどうだ?
なんなら俺の相棒にしてやるぜ…。
そこからはなんとなくのらりくらりと言い逃れたけど…。
これは時間の問題な気がしてきた。
蘭だけならまだしも、その後ろの園子にバレた日にはもう学校中の噂の的だ。
冗談じゃねー!


ドンッ


「お、悪ぃ」
「…」


結局あの後、原と険悪な感じになった。
当たり前っちゃー、当たり前なんだけどな。
元々クラス替えしてから話すようになったくらいの仲だし、別にそれは気にしてねーんだけど。
ただここ数日で、原はあからさまにあおいに接近するようになった気がする。
俺も洞察力だけはいい方だから、これは気のせいじゃないと思う。
クロバだけでも頭いてーのに、こんな身近でこんな問題…。


「マジでどーすればいいってんだよ…」


なんかもうここ3〜4日、頭ん中がそれで覆いつくされている。


"実生活こそ、いかなる想像力の産物にもまして思いきった、何がおこるか底知れぬ不思議なものである″


ホームズはよく言ったものだ。
いくら本を読んでいたとしても、それは所詮本の中の出来事。
それを想像したとしても、実生活ではあっさりとその想像を超える。
数日前までアイツのことでこんなに悩む日が来るとは思いもしなかった。


「悪ぃな、わざわざ」
「ううん、いいよいいよ。あおいなんか用があったみたいだし、新一放っておくと毎食カップラーメンになるでしょ?」


別に避けられてるわけじゃない。
つーかそもそも気にもされてねーんだから、避けられようがねーんだけど。
今日はほんとにたまたまあおいが家庭科部のヤツらと用があるとかで、1人になる俺を心配した蘭がうちにメシを作りに来た。
目の端に映る蘭は、そりゃーもう良い嫁になんだろーな、っつー働きぶりでメシ作ってんだかゴミ増やしてんだかわかんねぇあおいとは大違いの働きぶりだ。
…俺ほんっと、なんで蘭を好きにならなかったんだろ。


「オメーさぁ…」
「えー?なにか言った?」
「好きなヤツいる?」
「はあ?どうしたのいきなり」
「俺、」
「うん?」
「……好きなヤツできた」


別に蘭に言ったところで何かしてもらおうとか思ったわけじゃねーけど。
ただなんとなく、自分の本音を始めて他人に言った。
そしてそれは蘭だから言えたんだと思う。


「え、あおいのことじゃなくて?」
「…………はあ!?」
「え!?違うの!?」
「あ、いや、なん、つーか、違わねぇ…けど?え?」


蘭の今さら何言ってんの的反応に戸惑った14歳目前の夜。
…俺わかりやすいのか?

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bkm

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