キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

探偵たちの鎮魂歌


命懸けの捜査の始まり


「長話は時間が無くなるだけだ。第一のヒント。1度しか言わないからよく聞いてくれ『TAKA3−8』だ」


TAKA3−8…。
その時、壁にかかっていた時計が鳴り響いた。


「タイムリミットまであと12時間。さぁ、謎を解決してもらおうか?私のため。…そして、子供たちのためにね」


その直後、モニターが切られた。


「毛利さん。これをどうぞ」


そう言って渡されたのは、1台のケータイ電話。
俺たちからはかけられない、依頼人からの次の指示を聞くだけの一方的なケータイ電話が。


「事件が解決しましたら、こちらのケータイに入っている私の番号にかけたあと、こちらにお戻りください。じっくりその真相をお聞きしましょう」


そしてオッチャンが高田さんから奪い取るようにケータイを受け取り、事件解決へと走り出した。


「くそっ!!なんなんだ、この渋滞はっ!!」


まず事務所方面に車を走らせるが、見事渋滞に嵌り身動きが取れなくなった。
その間探偵団バッチで灰原に事の次第を伝える。


「だからミラクルランドから絶対に外に出さないでくれっ!エリア外に出ればIDが爆発してしまう。もちろんスーパースネークもダメだ。あのジェットコースターは途中で海へ大きく飛び出してるのが売りなんだからな!」
「…」
「おい、聞いてんのか灰原!?」
「えぇ、わかったわ。今夜10時までにその事件を解かないと、あなたも私も木っ端微塵になる、ってわけね?…おもしろいじゃない?」
「おもしろいってお前なぁ!」
「……じゃあ、預けたわよ?私たちの命。名探偵さん?」


ピッ、と小さく音を立て通信が切れた。
…これでとりあえず、あっちは大丈夫だ。
今日あおいが一緒じゃなくて逆にラッキーだったな。
あのバカ女、たまに予想外の行動しやがるから(千間さんの時然り)アイツに爆弾つけらていようものならあっという間に爆発すんじゃねぇかって気になって仕方なかったぜ…。
あっちの問題は片付いたならこっちだな。
さっき出されたヒント。
「TAKA3−8」
3引く8?いや…


「これ、3の8とも読めるよね?」
「じゃあTAKAは町名か?」
「うん。それに3−8=−5。イコールを外せば3の8の5になるじゃない?……あった!高島町!!」
「高島町3丁目、ってことか!」


…いや、これは…。


「おい!3丁目はどっちだ?」
「ないんだ」
「あ!?」
「ないんだよ、高島町3丁目が!」
「なんだと!?貸せっ!!」


俺が持ってた地図を奪い取るオッチャン。
…3丁目がないなら、高島町ではない?
いや…。


「この辺りって、再開発で最近町名が変わったんじゃないっけ?」


なら可能性はゼロじゃない。
車を止めて近くを巡回していた警官に尋ねた。


「この辺再開発で町名が変わったんでしょうか?」
「みなとみらいになっちゃったからねぇ…。3丁目はあったよ。地図はあるかい?」


そう言われ地図を広げる。


「えぇーっと…、あぁ、ここだここ。ここのあたりが3丁目でね。3−8−5と言うと、ここかな?」
「…これなんの建物?」
「昔ホテルだったが、今は廃墟になっていて近々取り壊されるんだよ」


ホテル跡地…。
オッチャンと顔を見合わせ、そこに向かうことにした。
午前11時25分。
辿りついた場所は、「廃墟」というのがよくわかる、塀には落書きがされ、建物の外壁も、古びたまま放置されていた。


「しかしこの場所がほんとになんかの事件に関係あんのか?」
「関係あると思うしかないんじゃない?」


入り口の扉は開いたものの、昼だと言うのに中は薄暗かった。


「つーかオメーみてぇな小学生のガキをなんで一緒に?」
「オジサンだけじゃ頼りないと思ったんじゃないの?」


…だが確かにおかしい。
なんで俺だけをオッチャンと一緒に行動させたんだ?
いったい、どうして…?


キィィィ


その時誰もいないはずの場所から、ゆっくりとドアが開く音が響いた。


「だ、誰だっ!?」
「ここに住むのは無理だぜぇ?来週取り壊されるんだ」
「あ?」
「あんたも大変だなぁ、ガキづれなんて!」
「あ?…いやー、ちゃうちゃうちゃうっ!!」


現れた男にホームレス仲間だと勘違いされたようで、オッチャンが全力で否定する。
あったりめぇだ…。


「オジサン、ずっとここに住んでんの?」
「あぁ。ホテルが潰れた2年前からな」
「最近なんか変わったことなかった?なんでもいいんだけどぉ…」
「うーん…、そうだなぁ…あ!そういや、真っ白なデッケェ鳥が飛んで来たことがあったっけ!」


白い、鳥…。


「太陽の前をびゅーっとな!」
「それっていつのこと?」
「俺の誕生日の8月の4日さ!その日は朝から変な車が止まってるは、不動産屋が来てそこの地下室を閉めちまうは…」
「変な車って?」
「ここには滅多に車は入ってこないからな。朝出かける時にそこの庭にまだ真新しい車が止めてあったんだ。夕方戻ってみるとボロい中古車に変わってたんだ。その車も夜にはパーツ取られて骨組みになっちまったけどな」
「……地下室を閉めちゃった、ってどういうこと?」
「地下は機械室だからなぁ。機械売って、金に換えようってことだろ?」
「それって何時頃?」
「夕方だ」


朝あった新車が夕方には中古車に変わり、地下への扉が閉まった…。
とりあえず地下に行ってみるか…。
すぐドアにたどり着くものの、話の通り鍵がかかっていた。
さて…、どこか別の入り口は…お、あそこ…。
通気口に伸縮自在ベルトを巻きつけ、こじ開けた。
…博士が俺に作ってくれた奴って、ほんっと役に立つよな。
通気口によじ登って、扉の向こう側に下りる。
こういう時小さい体は便利だ。


「おい、ボウズ!!どうした!!?」


今の音で駆けつけてきたオッチャンを鍵をあけて中に招く。
2人で室内を見回すと、棚の中にボストンバックが入ってるのを見つけた。

.

prev next


bkm

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
×
- ナノ -