キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

集められた名探偵


眠り姫を起こすのは王子の役目


「どうしてくれんだ、俺の一張羅!」
「だから言ったんですよ、こんな子ども騙し無意味だと」
「あら、文句ならあのボウヤに言ってくれる? 子ども相手ならきっと脱出方法を教えてくれるって言い出したの、あの子なんだから」
「えへへー!」
「ま、まさか、私からそれを聞き出す為に死んだフリを?」


驚愕が隠せない千間さん。


「あぁ。暗号を解いた奴も殺そうとしてたからな」
「俺たちが生きてる内は、問い詰めても吐いてくれないと思ってね」
「モニターで見たら、ケチャップでも血に見えるしね!」
「でもまああおいさんたちを眠らせたのは正解でしたね。この悪趣味な芝居は、若い女性のハートには酷過ぎる」
「ハ、ハハ…」


おい、誰かこの男どうにしかしてくれ。
今全身に鳥肌立ったぞ…。


−カッコいい…−


…あおいが目覚ましても、ぜってぇコイツに近づけさせねぇ…!


「い、いつから私が犯人だと!?」


その千間さんの問いに答えたのは茂木さんだった。


「このボウズが俺達にコインを選ばせた時からさ。あの時バァサン、手を伸ばしてわざわざ遠くにある十円玉を取ったろ?それでピーンと来たんだ。アンタは他の奴に十円玉を取らせたくなかったって。青酸カリが付いた指で十円玉を触られたら、酸化還元反応が起こりトリックがバレちまうからな!」
「だから私達、犯人を貴女に絞り直ぐに結束出来たってわけ!」
「大上さんの右手親指の爪を見た時点でトリックは読めてましたしね」


茂木さん、槍田さん、白馬の言葉を受け、俺を見遣る千間さん。


「え、えへへー」


こういう時は笑って誤魔化せ。
コナンになってから定着してきたこの方法に、千間さんはなんとも言えない表情で俺を見ていた。


「さて問題は此処からどうやって脱出するか」


茂木さんがそう呟いた時、遠くで何か物音が聞こえてきた。


「あら?何の音?」
「あぁ、多分僕が呼んだ警察のヘリの音です」
「『呼んだ』?」
「ワトソンがアンクレットに取り付けた手紙を、夜明けと共に崖下に待機させていたばぁやの車に届けてくれたんでしょう。良かった!他の車と見分けが付くようにバツ印を付けておいて!」
「それならそうと早く言ってよ!」
「あんな猿芝居させやがって!」
「鷹は鳩と違って帰巣本能に乏しいから、不安だったんですよ」


…警察のヘリ、ね。
これはなかなかおもしれぇ展開になってきたな。
さぁどうするつもりだ?怪盗キッドさん。
その時、近づくヘリの音とは何か別の音がしていることに気がついた。
…こ、れ、は?
何かが崩れるような音だ!
…ま、まさか!?


「とりあえず事件も解決したことですし、トイレにいるあおいさんたちを迎えにいきませんか?」
「え?」
「止むを得ない事だったとは言え、いつまでも女性をあのような場所で寝かせておくのは忍びない」


…コイツはキザだなんだと言う前に、もう頭の中の最優先事項がオッチャンとは違う意味での「女」なんだな…。
そう思っていた俺を、白馬が見ていた。


「…なに?」
「眠り姫を起こすのは王子の役目ですが、キミは行かなくていいんですか?」
「…え?」
「キミが譲ってくれると言うなら、僕が喜んで眠り姫を起こしに行きますが」
「ぼ、僕が行く!」
「あ、じゃあ私も行くわ。あの2人に謝りたいし」
「お、じゃあ俺も心配だから」
「いいえ、毛利さんは僕たちと一緒にヘリの到着を表で待っていましょうよ」
「…そ、そうか?」


そう言って白馬と茂木さん(と、千間さん)が「オッチャン」を連れて行った。
アイツ、実はちょっと良い奴なのかもしれない、なんて。
少しだけ白馬に対する評価が変わった。


「じゃあ起こすね」
「どうぞ」
「あおい姉ちゃん。…あおい姉ちゃん」


目は瞑っているものの、一瞬、あおいが顔を歪めた。
…もう少しだ。


「あおい姉ちゃん!あおい姉ちゃん!」
「んっ…」


やわやわと開けられた瞼の奥に、漆黒の瞳が現れた。


「あ、れ?コナン、くん…?」
「大丈夫?あなた小さいから量少なめにはしたんだけど…」


俺の後ろから、申し訳なさそうに言う槍田さん。
あおいは具合が悪い、というか…、どこかすっきりしないような、そんな顔をしていた。


「大丈夫?…どこか具合悪い?」


触れた頬は、ずっとこんなところにいたせいもあり少し、冷たかった。


「だ、だだだだだだだだだだだ大丈夫だからっ!!ほんとにっ!!」
「…………ならいいけど」


俺の手をバッ!と掃って言うあおい。
若干その行動を疑問に思ったが、大丈夫ならまぁ、いいかと思った。


「白馬兄ちゃんが警察のヘリを呼んでくれたから帰ろうって」
「あ、あぁ、うん。わかった」


そうして同じく寝ていたメイドさんも起こし、4人でヘリに向かったんだが…。


「おや?」
「え?」


館を出たところで、白馬があおいに声をかけた。


「あぁ、そうか。壁に寄りかからせてたんで痕がついてしまったんですね」
「え?…えっ!!?」


ここ赤くなってますよ、と白馬があおいの頬を指先で触った。
……こんのキザ探偵がっ!!!


「この程度の痕では、あなたの可愛さはくすみませんけどね。…ふむ、これくらいならすぐに消えるかな?」
「…そ、そそそそそんなもう別に痕なんてっ!!」
「ねぇ、僕たちヘリ乗るんだよねぇ?」
「おら、後ろ詰まってっから早く乗れ!!」


勝手に触んじゃねーよ!って思いで白馬を一睨みしたら、白馬はオーバーなリアクションでもうしない、と手を上げた。
それを見届けた後、俺もヘリに乗り込んだ。

.

prev next


bkm

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
×
- ナノ -