キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

集められた名探偵


七人目の探偵


あおいたちが館に入った後、3人が向かった橋へと1人歩き始めた。
館の諸々の仕掛けあ白馬に任せることにした。
犯人の歩行速度、橋までの距離から再び館に戻ってくるまでの間に仕掛けを作っておくには十分は時間だ。
アイツならうまく仕掛けてくれるだろうし、あおいたちも槍田さんがいるから大丈夫だろう。
そしてしばらく道なりに歩くと向こうから、「オッチャン」と茂木さんが歩いて帰ってきた。


「お?お前1人か?」
「そうだよ。車はやっぱり爆破しちゃった?」
「あぁ。車を弄ると爆発するよう仕掛けがしてあったみたいだぜ?」
「うん?『やっぱり』?」


俺の言葉に「オッチャン」が聞き返す。
いつまでも白々しい奴。


「気づいたんでしょ?オジサンたちも。さっきのコインで」
「…へぇ、ボウズも気づいたのか?」
「へ?コインがどうしたって?」
「またまたぁ!オジサンも気づいてるくせに!さっきのコインで千間さんが大上さんを殺した犯人だ、って気づいたでしょ?」
「…えぇ!?」


そう言って驚く「オッチャン」
…オメーが気づいてねぇわけねぇよな?


「それでさっき白馬の兄ちゃんと槍田さんとね…」


さっき3人で話し合ったことを持ちかける。


「なるほどねぇ…。館にゃ隠しカメラもあるから、ボウズ1人でこっちに来たわけか」
「僕は頭数に入ってないみたいだしね」
「確かに盲点っちゃー盲点だな」
「でもケチャップって俺の一張羅が…」
「まぁまぁ。どうせ『脱出方法』なんてねぇと思うが、やってみる価値はなくもねぇよな?」
「…じゃあ決まり、だね?」
「あぁ、いいだろう」
「俺の一張羅が…」
「そんなに嫌なら違う死に方でもいいんだよ?…例えばタバコを吸う、とかね」
「…………ま、蘭に怒られる覚悟でつきあってやるよ!最後はお前に任せんだから、ドジんじゃねぇぞ?」
「それは任せてよ」


…オメーは完璧にその人物を模写する怪盗。
だが、タバコを吸わないのは恐らく「臭い」を体につけたくないから。
どこかに盗みに行くにせよ、下調べをするにせよ、僅かでもその「残り香」が命取りになりかねない。
だからお前は「今」ヘビースモーカーであってもタバコは吸わない。
違うか?怪盗キッドさん。


「ええっ!?千間さんが殺された!?」


俺の思惑を隠しつつ館に戻ると、予定通り探偵たちの芝居が始まる。
…でもここで残った問題が1つ。
あの暗号。
烏丸の財宝は、本当にあるのか?
あるとしたら、一体どこに?
それを確かめるべく、茂木さん、「オッチャン」とともに館内を捜索する。
そしてピアノの置いてある部屋に辿り着いた。


「ほぅ…。洒落た物が置いてあんじゃねぇか」


ピアノに近付き、調べ始める茂木さん。


「ピアノの縁に引っ掻いた様な真新しい傷がついてるな」
「そいつは恐らく鷹の爪痕だ。あの兄ちゃんもこの部屋に探りを入れたってわけよ」


鍵盤をたたきながら「オッチャン」の疑問に答える茂木さん。
…あれ?
チラッと茂木さんを見ると気づいていないようだった。


「あれれ?ピアノの鍵盤の間に、何か挟まってるよ!」
「んー?」


俺の言葉に、茂木さんも鍵盤に挟まってる紙切れに気づいたようで、それを手に取った。
そこにはさっき館の主が言っていた暗号文が書かれていた。


「し、しかし、何でワラ半紙にガリ版刷りなんだ?」
「多分、まだコピー機が無かった時代に、誰かがこの文章を大量に刷って何かの目的で大勢の人間に渡したんだろーよ。つまり奴が言ってた40年前にこの館で起きた惨劇って話も、それに擬えて作った宝の隠し場所の暗号ってヤツも、みんな眉唾もんだってこった!」


大量に出回った暗号、か…。


「あれぇ?このピアノ、濡れてるね?」


俺の指摘にピアノの下を覗き込んだ茂木さんが、そこにあるスプレーに気がついた。


「こいつは、あの姉ちゃんのルミノール液…」
「じゃあ、彼女もこの部屋に…」
「おいチョビヒゲ、明かりを消せ!」
「え?」
「早く!!」
「…何で俺が…」


そう言いながらも電気を消す「オッチャン」


「「!?」」


この血文字…切り札…。
そうか!
そういうことか!
確かにこの館には時計はあそこにしか…。
なら烏丸の財宝の鍵はあそこだ!
そこまで思い至った俺同様、茂木さんも、そして「オッチャン」も気づいたようだった。
その時、


パン パァァン!


「予定通り」銃声が鳴り響いた。


「じゅ、銃声!?」
「中央の塔の方だ!」


駆けつけた先には、これも「予定通り」白馬が倒れていた。
そして近くのトイレの扉が開いていたので、そのまま中に入ると「予定通り」あおいとメイドが寝かされているのを発見した。
その時、


「だ、誰かが階段をっ!!ヤローッ!!」


そう言い駆け上がっていく「オッチャン」の後を追う。
…後少し。


「パ、パソコン!?そういえば宝の在り処が分かったら此処へ来いって奴が、ん…?そ、槍田さん!?」


ここでも「予定通り」槍田さんが死んでくれていた。


「見ろよ!内側のノブを回すと針が出る仕掛けになってやがる」


俺たちより先に館についていた槍田さんは館捜索中にところどことにあるこの仕掛け気づいたらしい。
それを上手く利用できたようだ。


「宝の在り処をパソコンに入力した奴が、部屋を出ようとしたら毒殺される算段になってたんだ」
「し、しかし犯人は一体何処に!?」


その「オッチャン」の言葉に茂木さんが胸ポケットに忍ばせていた拳銃を取り出した。
…さて、俺は隠しカメラの死角に移動して、と。


「惚けんな!この姉ちゃんが自分で仕掛けた罠に掛かる訳ねーし。あの若い姉ちゃんとメイドは、トイレでおねんねしてたぜ?あの銃声がフェイクだとしたら、殺しが出来るのはあんたと俺の二人だけだ…。俺じゃねぇって事は、」


バンッ!!


「…あんたしかいねぇだろ?」


そしてその後茂木さんも無事、毒を吸って死んでくれた。
…てゆうかあの人の死に方が1番わざとらしい気がすんだけど…。
なんて思いつつも、白馬が予めセットしててくれた隠しカメラを一斉に切るスイッチを押す。
そしてパソコンの前に行き、犯人にメッセージを送った。


宝の暗号は解けた
直接口で伝えたい
食堂へ参られたし
我は七人目の探偵


あんたが呼んだ探偵は、ここにもいるってこと、教えてやるぜ?
なぁ、千間さん。

.

prev next


bkm

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
×
- ナノ -