キミのおこした奇跡side S


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集められた名探偵


提案


探偵ならいざ知らず、普通の女子高生がたとえ今さっき知り合ったばかりとは言え毒殺死体なんて見たら、これは当然の反応だろう。
口元に手をやっているが、その手で隠しきれないクチビルは、グッと噛み締められていた。


「あんまり見ない方がいいよ?大丈夫、あおい姉ちゃんは僕が守るから。だから泣かないで」
「コナンくん…」
「わっ!?」
「コナンくーん…」


俺の名前を呟いたかと思ったら抱きついてきたあおい。
…ほんと、よく泣く女だ。


「大丈夫だよ、あおい姉ちゃん」
「…ぐすっ…」


泣くあおいの背中を、少しでも早く落ち着かせるため、擦っていたら、


「おらっ!いつまで泣いてんだ」
「ぎゃっ!?」
「うわっ!?」


グィ!と「オッチャン」が力いっぱい引き離しに来た(しかも俺の顔面掴んで!!)
…ニャロォ、覚えてろよっ!!


「みんなで車見に行くことで話がまとまったからお前らもじゃれてねぇでついて来い!」


そう言って玄関に向かう「オッチャン」の後について行こうとするあおい。


「あおい姉ちゃん大丈夫?」
「え?あ、う、うん、ごめんね…」


無理矢理涙を抑え込もうとハンカチで目元を拭ったものだから、目じりが赤くなっていた。
…ほんとは泣きたいだけ、泣かせてやりたいのに。
その間、今みたいに「俺」が抱きしめられるんじゃなく、「俺」が抱きしめててやりてぇのに。
そんなことを思いながら、玄関に向かったら、


「あぁ!!俺のレンタカー!!」


見事に車が燃え盛っていた。


「この分じゃ、私の車も向こうで燃えちゃってるかなぁ…」
「向こうって、メイドさんの車ここに止めてないの?」
「え、えぇ。裏門に止めておくように、ご主人様に言われてたから」
「裏門への近道は!?」
「な、中庭を抜けて…、」


その言葉を聞いて、裏門へ走り出す。
途中


「左手奥の厨房内から裏門へ!」


メイドから聞いたらしい白馬の声を背に受け、裏門へ辿り着いた。
そこには焼けずに残っている車が止まっていた。


「なーんか怪しくない?この車」
「どうせ奴が爆弾を仕掛け忘れたんですよ!」
「じゃあ本当に橋が落とされているか見てこようかね」
「俺も付き合うぜ」
「それなら僕も」
「俺も…」


千間さんの言葉に、茂木さん、白馬、オッチャンの順で同行を申し出た。


「これこれ、船頭が多いと船が沈むよ」
「ええ。確かにphantom thiefならぬ、phantom shipになりかねませんね」
「じゃあ、どの探偵さんが行くか、コインで決めれば?僕、小銭丁度五枚持ってるから」


なんて、たまたま出したその提案だったが、


「あら、おチビちゃん。気が利くじゃないの!」


このタイミングで犯人がわかるとは、思いもしなかった。


「…原始的な方法ではありますが」
「まあ、しゃーねーか」
「そんじゃあ、コインの表が出た奴が、」
「車で橋を見て来るって事で」


俺が気づいたなら、他の人たちも気づいた、かな?
そして、


「行くのは私と、毛利ちゃんと、茂木ちゃんだね?」


橋を見に行くメンバーはオッチャンと茂木さん、そして千間さんに決定した。
…て、ことは、だ。
恐らく犯人は…。


「さ、中に入って待ちましょう。ほら、行くわよ」
「……あのさー、」
「え?…なぁに?ボウヤ」
「僕犯人わかっちゃったんだけど、槍田さんと白馬の兄ちゃんは気づいた?」


俺の一言に、槍田さんと白馬は一瞬顔を見合わせたが、ニィッと笑った。


「なるほど?さすがは毛利名探偵が連れている少年なだけある」
「もしかしてあのコイン、わざと?」
「まさか!あれは偶然だよ!……犯人は特定出来たし、じゃあすることは1つ、だよね?」
「そうね、これ以上死人を増やすわけにはいかないし」
「ですがどうする気です?」
「もし本当に脱出への道を教える気なら、みんなが生きているうちは、言わないと思うよ?」
「そうでしょうね。枕の下にご丁寧にピストルまで用意されていましたから」
「じゃあさぁ、僕が聞く、って言うのはどう?」
「えぇ?ボウヤが?」
「そう。みんなに適当に遣り合ってもらって死んだフリしてもらった後で、僕が2人で話し合うよ。子供相手なら、きっと脱出方法を教えてくれると思うよ?」
「死んだフリ、ですか…」
「まぁ…、子供相手に教える、って言うのは、一理有るかもしれないわね」
「ですがそんな子供だまし、無意味だと思いますが…」
「でもやってみなきゃわからないよね?」


俺の言葉に白馬が小さくため息を吐いた。


「了解。やってみましょう。小さな探偵くん」
「ありがとう」
「それで?具体的には?」
「きっと犯人は、」


その後、しばらく3人で話し合った。
その間あおいとメイドは俺たちの邪魔にならないように、少し離れたところにいた。


「となるとやっぱり問題は、」
「何も知らないお嬢ちゃんたちよね」


俺たちは犯人を追い込むため「死んだふり」すら容易くやれるが、じゃあ同じことをあおいやこのメイドに期待できるか、と言ったら不安が残る。


「OK。彼女たちは私に任せて」
「どうするんです?」
「少しお休みしてもらうのよ」


そう言って槍田さんが、隠し持っていた小瓶を見せてきた。


「…麻酔薬、ですか?」
「えぇ。非力な女にはこういうのも必要なの」
「感心しませんね」
「あら、いけないかしら?」
「そういうものを持ち歩くこと自体は自己防衛として止めませんが、女性にそれを使うことはどうかと思うんです」


…だがピストルまで用意していた奴だ。
あおいは確実に寝ていてもらった方がいいだろう。
最後まで白馬が渋っていたが、他に策があるわけでもないので、槍田さんの案を飲むことにした。


「キミも反対するかと思ったんですが…」


白馬が肩を竦めながら俺を見た。


「そりゃあ張り切って薦めるような案ではないけど、…怪我したり死なれたりするよりはずっと良いしね」
「…なるほど」


俺の言葉に納得したのか、白馬は1度頷いてから館の中へと向かった。

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bkm

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