キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

集められた名探偵


命がけのGame


後から来た俺たちを部屋へ案内するとメイドが言い、立ち止まっていた玄関先から歩き出した。
…てゆうかなんださっきの発言!
カッコいい?
どーこがカッコいいんだ、あんなヤロー!


「あおい姉ちゃんてー、」
「うん?何、コナンくん」
「あぁいう男の人が好みなの?」


ジロッとあおいを見ると、興奮冷めやらぬ!などこか赤い顔をして俺を見てきた。


「ち、ちち違うよっ!好みとかじゃなくて、」
「じゃなくて何?」
「だ、だってさ!さっきよく見た!?」
「…なにを?」
「白馬くんてば背が高くて髪も柔らかそうな茶髪で肌も白くって笑顔も素敵で背も高かったじゃん!!モデルみたい!!」


テメーそれ俺に喧嘩売ってんのか?
今「背が高い」を2回言ったよな?
悪かったな、チビでっ!!
くそっ!
早く灰原に解毒薬完成させてもらわねぇと、なんて思ってる時、


「私あんなモデルみたいな人、生で見たの初めいったーい!」


オッチャンがあおいの頭をチョップした。


「おっ前よく見ろよ!?いいか、あぁいうのを顔だけのキザヤローってんだ!あんな奴に引っかかってみろ!お前の人生めちゃくちゃだぞ!!」


そうそう!
男は顔(まして身長)じゃねーんだよっ!!
オッチャンの一言にもっともだと頷く。
…つーかこのオヤジ、やっぱり…。


「あおい姉ちゃんポーカーするよね?」
「え?私ビリヤ」
「するよね?」
「…う、うん」


荷物も置いて晩餐までの時間、リビングに再び集まった。
白馬はビリヤードをするとかで(俺は現在身長的に無理!)
チラチラとそっちを見ていたあおいだが、俺と槍田さんとポーカーをして過ごすことになった。


「で、でも私ポーカー知らないよ…」
「あら?そうなの?じゃあ教えてあげるから」
「いえ、それも面倒なんでどうせならババ抜きにしましょう!」
「…あなた今私の方見て言ったけどそれは私に喧嘩売ってると捉えていいのかしら?」
「え!?喧嘩!?そ、そんなことないですよ!ババ抜きですよ!ババ抜き!知ってますよね?ババを抜くんですよ!ババを!!」


「オバサン」て言葉に敏感そうな歳の人間目の前にしてババ、ババうるせぇぞ、オメー…。
チラッと槍田さんを見たらギロッとあおいを一睨みして黙殺した。
…ま、当然だな。


「じゃああおい姉ちゃん簡単にルール教えるから、」
「う、うん…」


槍田さんの威圧に若干涙目になってるあおいに簡単にポーカーのルールを説明した。
コイツの頭じゃこの短時間に役全部覚えるの無理だろぉなぁ…。
なんて思っていたが、


「見て見て!ストレート!!私の勝ちだね!!」


意外なことに連勝中。
人は見かけによらない(いや、いっそ中身か?)


「待って。ズルは駄目よ、あおいちゃん」
「え?」
「ホラ、左端のジャック!2枚重なってるじゃない?」


あおいの手元を見ると確かにカードが重なっている。


「ご、ごめんなさい!気付かなくって…。でもこれ、最初からくっついてたみたいですけど…」


ぺリッとカードを剥がしたあおいの顔が一瞬で引きつったのがわかった。


「キャーーーーー!!!」
「ど、どうした!?あおい!!」


そう言って真っ先に駆けつけたのはオッチャン。
…。


「おやおや、此処にも血が飛んでたみたいだねぇ…」
「そう言えばメイドが言ってたぜ?この館の物は犯行当時のまま、殆ど動かして無えってな」


あおいが見て驚いたのは、カードについていた血の塊。
まぁ…、普通の女子高生が血の塊なんてみたら、そうなるよな…。
その後ディナーの用意が出来たとメイドが呼びに来たためみんなで食堂へ向かった。


「なんか私食欲ない…」


そう呟くあおいとともに、食堂へ入ると、マスクを被った館の主が中央に座っていた。


「崇高なる六人の探偵諸君。我が黄昏の館によくぞ参られた!さあ座りたまえ、自らの席へ」


何がしてぇのか知らねぇが、いかにも、って演出だな、おい。


「わっ!?」


そう思った時ギュッ、と肩を掴まれた。


「ど、どうしたの?あおい姉ちゃん」
「コナンくん…。い、いなくならないでね?」
「え?…大丈夫だよ、ここにいるから」


そう言う俺に無理矢理笑顔を返そうとしてるようだが、その引きつった顔がホラー映画に出てきそうだからヤメロ、なんて本人には言えなかった。


「君達を招いたのは、私がこの館のある場所に眠らせた財宝を探し当てて欲しいからだ。…私が長年掛けて手に入れた巨万の富を、命を懸けてね」
「い、命だと?」


席に着いた俺たちに館の主は語りかける。
そしてオッチャンが主の言葉に反応し聞き返した直後、


ドオォォン!!


館の外から爆音が聴こえて来た。


「な、何だね今の音は!?」
「案ずる事は無い。君達の足を断ったまでの事」


…今の音、まさか車を爆破しなのか!?


「私はいつも警察や君達探偵に追われる立場。たまには追い詰める側に立ちたいと思いましてな。最も此処へ来る途中の橋も同時に落としましたから、車があったとしても逃げるのは不可能だ。勿論此処には電話は無く、携帯電話も圏外。そう、つまりこれはその財宝を探し当てた方にだけ財宝の半分を与え、此処からの脱出方法をお教えするというゲームですよ。気に入って貰えましたかな?」
「…虫が好かねえんだよ。てめえみてえな面を隠して逃げ隠れする野郎は!!」


茂木さんは立ち上がり館の主の元へ行き、主の顔を覆っているフードを掴んでは一気に引き剥がした。


「さあ!腹が減っては戦は出来ぬ。存分に賞味してくれたまえ。最後の晩餐を…!」
「マネキンの首にスピーカー!?」


…まぁ、声を機械で変えてる時点で何かしらの仕掛けがあるんだろうとは思っていたが、な。


「だ、誰が…。一体誰がこんな事を!?」


そう「オッチャン」は言う。


「あら、毛利さんともあろう方が、知らずに来たんですの?」
「え?」
「ちゃんと招待状に書いてあったじゃない。『神が見捨てし仔の幻影』って」


槍田さんの言葉に付け加えるように茂木さんが言う。


「『幻影』ってーのはファントム。神出鬼没で実態がねぇ幻ってこった」
「人偏を添える『仔』と言う字は、獣の子ども。ホラ、『仔犬』とか『仔馬』とかに使うでしょ?」
「『神が見捨てし仔』とは、新約聖書の中で神の祝福を受けられなかった『山羊』の事。つまりこれは『仔山羊』を示す文章」


茂木さんの後を千間さん、大上さんが引き継ぐ。
そして、


「英語で山羊はGoatですが、仔山羊の事はこう呼ぶんですよ。…Kid」
「な、何!?」
「こう言えばもっと分かりやすいでしょうか?Kid the Phantom thief」
「お、おい、まさか…。まさかそれって…」


最後に白馬がその名前を口にする。


「狙った獲物は逃がさない。その華麗な手口はまるでマジック」
「星の数ほどの顔と声で警察を翻弄する天才的犯罪者」
「我々探偵が生唾を飲んで待ち焦がれるメインディッシュ」
「監獄にぶち込みてーキザな悪党だ」
「そして、僕の思考を狂わせた唯一の存在。闇夜に翻るその白き衣を目にした人々はこう叫ぶ。…怪盗キッド!」


その瞬間、この部屋の空気が変わった。

.

prev next


bkm

BLコンテスト・グランプリ作品
「見えない臓器の名前は」
×
- ナノ -