キミのおこした奇跡side S


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集められた名探偵


集められた名探偵


俺のナビの元、順調に黄昏の館に向かい走っていた。
日もだいぶ傾きうとうととしていた時、


ガタン!


「うぇえ!?な、なんだ!?」


一際大きな音とともに、車が止まった。


「そっちのタイヤ見てくれ」
「こっちのタイヤぺたんこになってるよ」
「…ついてねーなー!」


…うぅわ、レンタカーでパンクかよ。
ついてねぇオヤジ…。
しかもこの車スペアタイヤ積んでねぇとかどういうことだよ。


「ねぇおじさん!ほらあそこ!あそこにガソリンスタンドがあるよ!」
「ラッキー!地獄に仏とはこのことだぜ!」


そう言ってオッチャンが寂れたガソリンスタンドに歩いていった。
その後スタンドにタイヤがあることを確認したオッチャンが戻ってきて、車ごとスタンドへ向かった。


「タイヤ交換してもらうなら、僕たちも降りた方がいいね」
「そうだね」


スタンドで一旦車から降りてオッチャンと店員のやりとりやタイヤ交換を見ていた。


「なんか曇ってきたね」
「え?…あ、ほんとだ。ちょっぴり肌寒くなってきたし、雨降るんじゃないかなぁ?」


タイヤ交換も終わって後は出発するのみ、って時、空が曇り出してきたのがわかった。
朝は晴れてたけど、この山奥じゃなぁ…。
そして支払いも終ったオッチャンが戻ってきたことで、再び黄昏の館へと向かった。
途中、おいほんとに教えてもらったのはこの道なのかよ?っていう道無き道を進んで。
それまでドアにしがみついていて、なんとか舗装された道に出た、って直後


「ん?あっ!?」
「っ!!?」


キィィィィィィ!!!


車が音を立てて止まった。
…あっぶねぇ!
もう少しでシートに激突するところだったぜ!!
なんつー運転してんだと前を見ると、傘を差して立っているばあさんがいた。


「や、山姥!?」


いや、それはさすがに失礼だろ…。
一瞬俺も思ったけど。


「初対面の女性に対して、随分な御挨拶だね」
「あ、いや…、すみません」
「おばあさん、こんな所でどうしたの?」
「見ての通り、私の可愛いフィアットちゃんがエンストしてしまってね。誰か通り掛かるのを待って居たのよ。あなた達も『黄昏の館』に行くんでしょ?良ければ乗せてってくれないかい?」
「まぁ良いっすけど…。じゃあ後ろの席にどうぞ」
「ついでと言っちゃあ何だけど、フィアットちゃんから荷物下してくれないかい?」


そう言って雨の中車に乗り込んできたばぁさん。
黄昏の館に行く、ってこの人…。
俺の小さな疑問もそのままに車は黄昏の館へと向かっていた。
あおいがトイレに行きたいと言い出したことで、途中乗車のばぁさんが何故さっきのガソリンスタンドで行かなかったのか、と聞いてきた。


「おばあさんなんで知ってるの?僕たちがさっきガソリンスタンドによったって」
「簡単なことだよ、おチビちゃん。ほら、そこのからっぽの灰皿とその下に落ちているまだ新しいタバコの吸殻。灰皿から落ちるまで吸殻を貯めたってことはヘビースモーカーの証拠。それなのに灰皿は空っぽ。そんなことできるのは10キロ先にぽつんとあったガソリンスタンドだけよ」


この人…。


「私は千間降代。あなたと同じ探偵よ?眠りの小五郎さん?」
「せ、千間降代!?」
「安楽椅子に座ったまま事件の話を聞いただけで解決しちゃうっていう探偵さんですよね!」


この人が「あの」千間降代っていうのも驚いたが、何よりそんな情報を知っていたあおいに驚いた。


「なに?」
「…あおい姉ちゃんよく知ってたね」
「有名な探偵は知ってるよ!」
「へぇ…」


そういうことに、興味なさそうなのにな…。
少し、意外な気がした。


「それじゃまず、この灰皿は私が預かっておこうかね」
「あぁー!ちょっと!」


あれ?今…。


「館に着いてからも私の前では吸わないでおくれよ?私はタバコの煙が大の苦手なんだから」
「くっそ…」
「さぁ!黄昏の館は目の前よ!びゅんびゅん飛ばしてちょうだい」


…灰皿の中身を捨てたのは10キロ手前のガソリンスタンド。
あの後確かに舗装されていない道を通ってハンドルを握りしめていたとしても、「あの」オッチャンが10キロ間1本も吸っていない…?
もしかして、と、1度沸いた小さな疑惑、いや、疑惑とも言えないような感情の芽は解消されないまま、黄昏の館に到着した。


「うわぁ、すごい車がいっぱいだ!」


トイレに行くと、一目散に館に消えて行ったあおいとは対照的に、のんびりと止まっている車を眺めてた。


「ベンツにフェラーリにポルシェか!」
「物騒な車ばかりね」
「お!アルファロメオじゃねーか!」


オッチャンが止まってるアルファロメオに手を触れた時だった。


「おい、俺の女に気安く触んじゃねーよ。コイツは俺が5年かかってやっと手懐けたじゃじゃ馬だ。他所の男の汚ねー手で触られて臍曲げられたら困るじゃねーか。なぁ、チョビヒゲ?」
「チョ、チョビヒゲ?」


車から出て来た男。
コイツも探偵、だうろうな…。


「久しぶりね、茂木ちゃん。貴方も呼ばれてたの」
「オゥ!千間のバァサン!て事はアンタもか」


茂木…?
探偵の茂木遥史か!
オッチャンに、千間さん、そして茂木さん。
…何人探偵集めたんだ?


「いらっしゃいませ。茂木様、毛利様、千間様ですね?お待ちしておりました。どうぞお入りください」
「おい、キミ!!」


館に入るとメイドが出迎えてくれた。
その矢先に、恰幅のいい男が現れる。
あれは確か美食家探偵の大上祝善…。
…これで4人。


「すみません、大変お待たせいたしました」
「どういうつもりだい?こんな山奥に探偵を4人も呼んだりして」


メイドが大上さんとのやり取りの後俺たちに向き直る。
そこで千間さんが俺も抱いていた疑問を投げかけた。


「いえ、お招きした探偵は全部で6名様です」
「おいおい、後2人もいるってのか?」
「はい。女の方と少年が」


少年、て服部か…?


「いえ、御主人様に頂いたお呼びするリストには服部様のお名前も入っていたのですが、中間テストが近いからと服部様のお母様からお断りのお電話を頂きまして…」


…そういやうち(帝丹)もそろそろ中間だよな。
チラッとトイレから戻ってきて俺の隣に立っているあおいを見るとなんだかソワソワしているような、そんな顔をしていて。
…コイツ呑気にこんなとこ来てて大丈夫なのか…?


「そしてもう一方、工藤新一様もお呼びする予定でしたが連絡が取れなかったため、毛利様の御家族を2人お呼びするのに、御主人様からOKが出たんです」


まぁ結果的に「俺」は来たわけだしな。
でもそんなに探偵を集めて何がしたいんだ…?
採用面接ですらモニター越しで、やり取りは全てメールだったため顔も知らないと、メイドは言う。


「へぇ。面白いじゃないの。わたしゃやっとゾクゾクして来たよ」
「フン!俺はその玄関の扉の妙な柄を見た時からシビレてたぜ?」
「そう言えば、変な模様ですね」
「気を付けなベィビィ。多分そいつは古い血の跡だ」


茂木さんのその一言に、オッチャンが声を裏返して聞き返す。


「冗談じゃ無いわよ。扉に対し、ほぼ45度の入射角で付着した飛沫血痕よ。扉だけじゃ無いわ。壁には流下血痕、床には滴下血痕。一応拭き取ったみたいだけど、この館内の至る所に血が染み込んだ跡が残ってるわよ。どうやらこの血痕の主、1人や2人じゃ無いみたいね」
「…流石ですね!」


恐らくルミノールを持った女と、階段の上から少年が現れた。


「ルミノール。血痕に吹き付けると血液中の活性酸素により酸化され、青紫色の蛍光が放出される。流石、元検視官。良い物をお持ちだ。槍田郁美さん?」
「は、白馬ー?てことは、白馬警視総監の…」
「ええ。確かに白馬警視総監は僕の父ですよ。毛利さん」


へぇ…。
警視総監の息子…。
そう思った時だった。


「カッコいい…!」
「「はぁ!?」」


あおいの一言に、思わず声が漏れた。

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bkm

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