キミのおこした奇跡side S


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集められた名探偵


気にしない


「ただいまー!コホッ、…郵便着てたよ?」


奥穂町の事件から数日後。
今日も穏やかに時間が流れていく。


「やだぁ、何これ!気味悪い…」


そんな中に響いた蘭の声。


「見てよコレ!真っ黒な封筒に毛筆で白く毛利小五郎様、って!」


…確かに趣味が良いとは言えねぇ手紙だな。
その封筒をオッチャンが開けると、晩餐会の招待状ともう1枚小切手が出て来た。
…しかも200万て…。


「どうせ名探偵を呼んでパーティにハクをつけようって魂胆だろ」
「違うと思うよ」
「あ?」
「ほら見てよ!これその封筒から落ちたんだけど、200万円、て書いてあるでしょ?」
「に、にひゃくまんえんっ!!?」
「そんなことのためにわざわざこんな大金を送ってくるなんて変じゃない?だってまだ相手が来るかどうかもわかんないのに」
「コホッ、コホッ。…ねぇお父さん、中に差出人の名前とか書いてないの?」
「うーん…、な、なんだこりゃ!?『神が見捨てし仔の幻影』?」
「やだ、なにそれ!」


神が見捨てし、仔の幻影、か…。
…おもしろくなってきた…!


「え!?蘭姉ちゃん行かないの!?」


オッチャンのところに届いた招待状、黄昏の館の晩餐会前々日に、蘭が俺に言ってきた。


「ケホッ。…うん、ごめんね。風邪が酷くなったら大変だし、今回は行かないことにしたの」
「え、でも、僕、」
「うん。だからあおいにまたお願いしたから大丈夫だよ」
「……………えっ!!?」


嬉しくないわけじゃない。
ただあの時の言葉、俺の告白を、あおいは聞いていたのかいなかったのか。
それを考えると、なんというか…、気まずくは、ある。


「あおい!いらっしゃい!ゴホッ、ケホッ!」
「蘭!大丈夫?」
「ん?んー…、たぶん。ごめんね、急に無理言って」
「それは大丈夫、大丈夫!コナンくんもおじさんも、ちゃんと見てるから安心して休んでてね!ね?コナンくん」
「え!?う、う、ん…」


ね?と言って笑いかけてくるあおいに、少し対応に戸惑う。


「…どうかした?」
「え!?い、いや、別に、」
「おーい!お前ら準備できたら行くぞー!」
「はーい!じゃあ蘭、」
「うん!気をつけてね!」
「蘭もお大事に!行こう、コナンくん!」
「う、うん。じ、じゃあ蘭姉ちゃん行ってきます」
「行ってらっしゃい!」


そう言ってレンタカーを借りるべく、店へと歩き出す。
なんの違和感もなく、コナンの「俺」と手を繋ぎ、鼻歌なんか歌ってるあおい。
コイツのこの反応、聞いたのか聞いてねぇのか、…わからねぇ…。


「じゃあお前ら、先車乗っててくれ」
「おじさん、この車ナビついてないよ?」
「大きい声じゃ言えねぇが、」
「な、なに?」
「ナビねぇ方が安いんだよ」
「…それでか!」
「ナビはお前に任せたからな!地図でも開いてろ」
「わかった!」


受付でいろいろ手続きをしてるオッチャンと、助手席で地図を広げてるあおい。
…俺の気にしすぎなのか?
確かに俺は今コナンであって新一じゃない。
だからコイツが今の「俺」に普通に接するのはまぁ、納得できなくもないことだが…。
けどコイツの性格上、仮に誰かに告白されたらとんでもなく大騒ぎになりそうなんだけどなぁ…。
アレを聞いてたのか聞いてなかったのかで、また俺としても変わってくると思うし…。


「ねぇコナンくん」
「え?」
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど、」
「…なに?」


チラッと、俺を伺うように見てきたあおい。
「聞きたいこと」
その言葉に少しだけ、ドキッとした。


「あ、あのね、」
「う、うん」
「…いま、どこにいるかわかる?」
「…………は?」
「この地図ちょっと見難くて、」
「………………」


間違いない。
俺「だけ」が気にしすぎてるんだ。
コイツはアレを聞いてなかった。
そう思ってこの事はもう気にしないことにしよう、うん。


「見せて」
「ごめんね」


申し訳なさそうに地図を差し出しながら言うあおい。
…ったく、普通の地図じゃねぇかよ。


「ほら、向かいにガソリンスタンドあるでしょ?」
「う、うん?」
「このマークがそれで、今はそのガソリンスタンドの向かいにいるからここ!」
「え、えぇーっと、…このガソリンスタンドがあそこだから、インターは、」
「ねぇあおい姉ちゃん」
「なに?」
「地図回しても、道はわかんないと思うよ?」


くるくると本を回して見てるんだが、地図の方向変えたら理解できるかと言ったらそうじゃないと思う。


「で、でも進行方向を上にした方がわかるじゃん!」
「…それでほんとにわかるならいいけど、あおい姉ちゃんわかるの?」
「うっ…、だ、大丈夫だよ!晩餐会の時間までには着くから!」


つまりそれは晩餐会前は迷子になる宣言じゃねぇのかよ…。


「僕が助手席乗ろうか?」
「だ、大丈夫だって!ちょっとこの地図は見難いけど、私だってバイク運転するんだから地図くらいちゃんと」
「着かなかったら今日の夕飯ないんだけどほんとに大丈夫?」
「…わ、私やっぱり後ろでゆっくり座ってようかなぁ、」
「そうしなよ」


そういうわけで、俺が助手席であおいが後部に乗ることになった。
…ったく、この際バカなのは仕方ねぇが地図読めねぇとかどーなんだよ。
生きてく上で困るだろ?
困るよな?
迷子のたびに俺呼び出されても困るんだから地図の見方も覚えさせて


「アレッ?お前ら場所変わったのか?」
「うん。僕が道案内するよ」
「ははぁん。お前地図読めねぇな、さては」
「ち、違うよっ!おじさんが持ってる地図が古くて読めないだけだよっ!!」


じゃあ最新版の地図なら読めるのかよ、オメーは…。
まぁもうなんでもいーや。


「日が暮れる前に着かなくなっちゃうから行こう」
「おー、そうだな。じゃあしゅっぱーつ!」


オッチャンのその声に、黄昏の館へ向け一路レンタカーは走り出した。

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bkm

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