キミのおこした奇跡side S


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殺人犯、工藤新一


小さな焦りと呼ばれた名前


「あ!ちょぉ待て!触んなっ!!」
「下がってください」
「な、なんなの、あなたたち!?」


服部が運転手の安否を確認するが、


「あかん」


もう息はなかった。


「見てみぃ、工藤。瞼に溢血点や」
「え!?てことは…、まさか…。…策条痕」
「工藤、コイツは…」
「おーい!」
「どないしたん?」
「あおい!オメー前に佐藤刑事のケータイ教えてもらったって言ってたよな?1キロ先に料金所がある。佐藤刑事に電話してそこを封鎖してもらってくれ!」
「え!?ど、どうして?」
「死んでるんや!この車の運転手が。首絞められてな」
「く、首を!?」
「あぁ。走行中に密室であるこの車の中でな!」


あおいに頼んだらすぐ佐藤刑事が料金所を封鎖してくれたようだ。
被害者の車のハザードを出し止めておき、オッチャンの車で俺たちも料金所へ向かう。


「せや。お前これ被っとき」
「へ?」
「…お前今、ヒトサマの前に姿現すわけにいかんからのぉ」


苦笑いしながら服部が愛用の帽子を渡してきた。


「…サンキュ」
「ほな行こか」


1台1台、運転手に確認し容疑者を絞り込み、佐藤刑事たちのところへと戻った。


「ま、お手並み拝見といこうじゃないの。噂の高校生探偵たちの」
「3台」
「え?」
「この中で疑わしい車は3台のみ」


「俺」の手並みは、あんたらもよく知ってんじゃねぇか。
なぁ、佐藤刑事、高木刑事?


「他の車は邪魔やから、さっさといかしてしもてもかまへんで」
「さ、3台、って…」
「遺体の状況が、そう物語っているんです。被害者が運転中に絞殺されたのは明白な事実」
「となると、走行中の被害者の車に犯人の車が近づいて何かをした。そない考えた方が自然やろ?」
「犯人がどんな方法を使ったにせよ、予め準備を整えて被害者とほぼ同時にこの高速に乗らなければならないことは確かです」
「そうか!被害者と同じICから入った車が、3台だけだった、ってわけだね?」
「でもそれ本当なの?ICでもらう通行券を見せてもらったんでしょうけど、今はETCって言うシステムもあるじゃない」
「被害者が高速乗ったんは、俺らと同じICでな。そこのETCの機械は昼前から壊れとって通行券をもらう一般のゲートしか使われへんかったんや」
「なるほど!そのICの通行券を持ってる人だけに絞った、ってわけか!」
「しかも、被害者が所持していた通行券を見たら、」
「俺らが高速乗ったんより1時間も前に乗ってたんや」


たぶん途中で昼休憩でもしていたかなにかだろう。
つまり、


「同じ時間、同じICから高速に乗ったにも関わらず、パーキングで1時間も休憩を取った被害者の周辺を何故か走行していたのは、3台だけだったわけですよ」
「そう…」
「ちなみに被害者の遺体が乗っている車は1キロ手前にハザードを出して止めてありますから、鑑識さんを呼んで詳しい調査を」
「ほんなら、容疑者の車のところに話聞きに行こか」
「え、えぇ…」


そして俺たちが絞りこんだ容疑者の元へ行く途中、


「なぁ、なんで平次の帽子工藤くんが被ってんの?」


和葉が呼び止めた。


「コイツが貸してくれ言うからな」
「…工藤くんが帽子ってちょっと変な感じする」
「いーだろ、うっせぇな!イメチェンだよ、イメチェン!」
「えー、でも帽子のチョイスが、」
「ならお前が被ってみろ!」
「わっ!?」
「…うっわ、オメーそのタイプの帽子似合わねぇ…」
「そ、そんなことないよ!帽子ってのは被り方次第なんだよ!」
「へーへー、そうですかー」


あぁ、俺今工藤新一なんだな、って。
コナンの時とは違う、あおいとの会話や目線に、今の自分を実感する。


「コイツらさっき言うとった怪しい車の3台に乗っとった3人や」


そして容疑者を警察の前に連れて来る。
3人にそれぞれ事情聴取をする。
3人の意外な繋がり。
顔見知り同士、か。


「異変をすばやく察知した俺の好判断で、彼の車の前に出たら、絞殺された被害者を発見した、ってわけだよ!」


…今表に出ることが出来ない俺に、このオッチャンはほんっと、良いポジションにいてくれると思う。
この人がこんな性格で助かるぜ。
そして事情聴取は続く。


「じゃあ被害者の車の所に案内してくれる?探偵くんたち」
「えぇ」
「もちろんや」
「ほんじゃあ俺も」
「それじゃあ高木くん。あなたは料金所の封鎖を解いてこちらの3人とここで待機してて」


そう言って歩き始める佐藤刑事の後に続く。


「和葉もあおいちゃんと、大人しゅうそこで待っとけよ」
「すぐ戻ってくっから」


そう。
再びコナンに戻る前に事件を解決しなければいけない。
…ま、服部もいるしなんとかなるだろ。
そう思った時、


クィッ


ジャケットの裾が引っ張られる感触がして、後ろを振り返った。
あおいが俺の服を掴んで俯いていた。


「あ、あの、ね、工藤くん、」


しばらくの間の後、あおいが口を開いた。

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bkm

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