キミのおこした奇跡side S


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殺人犯、工藤新一


疑惑の手紙と罠


「す、推理ミス?ケホッ…」


アフロディーテ号沈没事件の翌日、服部から電話がかかってきた。
なんでもあの救出劇がテレビ放送されちまったらしく「お前助けるあおいちゃんもばーっちり映っとったで?なんなら録画したやつ送ろか?」とまで言われた。
ちなみに元々撮ろうと予約してったドラマが緊急特番に切り替わり生放送で流れてそのままその救出劇を録画してしまったらしい…。
オメーそんな用で電話してきたのかよ?なんて思っていたらそうじゃなく…。
「俺」が以前推理し解決させた奥穂町の事件で推理ミスを見つけたから会って話がしたいという手紙が、服部のところに届いたらしい。
俺に連絡を取ろうにも、家にはいねぇし電話も繋がらねぇから業を煮やして同じ高校生探偵の服部に手紙を出した、ってところだろう。
手紙の送り主は奥穂町の外れにある東奥穂村の屋田誠人さん。
俺が奥穂町の事件捜査の時に手伝ってくれた青年だったと思う。


「これに同封されとったお前宛の手紙をそっちに行く時に持ってってやるからちゃーんと読むんやで?どうせ、お前の推理の悪口書いてあるんやろうけど、ちょうどえぇ刺激になって、そんな風邪なんか吹っ飛んでしまうわ!」


そう言って服部は電話を切った。
…なんなんだ、推理ミスって。


「え?蘭姉ちゃん行かないの?」
「そうなの、だからまたあおいにお願いしたから」
「…えっ!?」


推理ミスのことは気になる。
でもまさかここでまたあおいと旅行…。
結局アレから「新一」は連絡してない。
言いたいこと、聞きたいこと、山ほどあるけど、電話じゃ十分に伝わらない。
クロバなんか見てんじゃねぇよ。
俺がいるだろ?
そりゃあ今は「俺」じゃねぇけど、それでも「俺」はずっと、オメーの傍にいるんだよ。
「俺」が戻ってくるまで待っててくれよ。
俺はお前が…。
こんな思い、電話じゃ伝えきれない。
「俺」として会って、話がしてぇのに…。


「どーすっかなぁ…けほっ」


どうしようもない思いを抱え、服部の上京を待っていた。
…ものだから、


「「げほっ、ごほっ…」」
「おいおい、お前ら2人とも大丈夫かよ?」


風邪が治るどころか、まさかの悪化をしていた…。
オッチャンの運転で奥穂町に向かうことになったのはいいんだが、車内は俺と、そして同じく風邪を引いているらしいあおいの咳が響いていた。


「わ、私は大丈夫。コナンくんは?」
「大丈夫…」


には、聞こえない声してっけど。
まぁ博士から来る前に薬貰ったし。
なんとかなるだろう…、たぶん。


「けど大丈夫やろか?これから会いに行く人、工藤くんに話があるって手紙に書いてたやん?工藤くん連れて行かへんかったらがっかりするんとちゃう?」


そう。
手紙では「俺」を指名して会いに来いと言ってきた。
推理ミス…、気になるなぁ…。


「ねぇオジサン」
「あん?」
「…僕、先に旅館に戻ってていい?」


東奥穂村に着き旅館に荷物を置いた後、役場で誠人さんの住所を聞きに行くと話し合いで決まり(手紙には大まかな住所しか記載されていなかった)旅館から出る。
だが、俺はこれから行くべきところがあるため、オッチャンたちと別行動を取ることにした。
ぺラ、と服部から受け取った手紙をもう1度見る。


拝啓 工藤新一様

あなたの推理が間違っていたという証拠を見つけました。
あなたの探偵としてのプライドを傷つけないために2人きりで会いませんか?
場所は僕があなたと出会った山小屋で。

屋田誠人


そして目の前にはその山小屋があった。
1度深呼吸し、山小屋に入って行く。


トントン


「あのぉ、すみません。けほっけほっ!」


博士にもらった風邪薬、全然効かねぇじゃねぇか!
その時ジジーと言うノイズ音の後、


「…工藤新一だな?」


誰もいない山小屋に置かれたトランシーバーから声が響いた。
…声を変えてる。


「誰?」


キィ バタン!ガチャッ


パッと後ろを振り向くとドアが音を立ててしまっていった。
ノブをガチャガチャ触るものの、動かない。
…鍵を掛けやがった!


「おい!ちょっと!おいっ!!ゲホッ!ゴホッ!」


くっそー!
風邪で喉をやられて声がっ…!
ドアを閉められた山小屋内を見渡す。
窓も扉も、全て故意的に塞がれている。
どこかに出口は、そう思った時だった。


ドクンッ


「うっ…!?」


心臓が大きく脈打った。
この感じ、まさか…!?
その後も収まるどころか徐々に強さを増す心臓の痛み。
この小屋の脱出口は子供が通れるくらいの大きさの窓のみ。
…やべぇ、早くここから脱出しねぇと!
どこでも射出ベルトからサッカーボールを出し、唯一の脱出路、天窓のガラスを割った。
…急げ!
急がねぇと…!!
天窓によじ登る間もドクン、ドクンと強くなる胸の鼓動。
…あと、少し


ドクンッ!!


「うわぁー!?」


一際大きく脈打った胸の痛みに気をとられバランスを崩し、そのまま山小屋の裏手にある湖に真っ逆さまに落下した。

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bkm

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