キミのおこした奇跡side S


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水平線上の陰謀


迷探偵と名探偵


「八代英人氏の死にも疑惑が」


八代英人…、貴江社長の旦那さん、か。
遺留品がジュースの缶とタコ糸…あ!アレを使えば…!
そして紙袋を持ってオッチャンたちのいる場所に向かう。


パン!!


「「「うわぁ!?」」」
「へへー!ビックリした?」


持っていた紙袋に空気をいれ、それを手で叩き割った。


「こんのガキィ!!」
「ほんとはコーラの缶を振ってプシュッ!とやろうと思ったんだけど、コーラ売ってなくってさぁ!」
「コーラだと!?」
「はぁ…。心臓止まるところだった…ん?あーっ!缶で驚くって言えば!!」
「スタングレネード…。犯人はスタングレネードを使ったんじゃないでしょうか?」


そうそう。
スタングレネード、別名フラッシュバーン。
激しい閃光と爆発音で相手の行動を麻痺させるジュースの缶のような形をした手榴弾の一種。


「予めピンを抜いたスタングレネードをタコ糸で縛り、そのタコ糸をシートベルトの金具に結わいておけば、シートベルトを締めようと金具を引いた途端、」
「なるほど!たとえ心臓発作を起こさなくても、気絶することで運転不能となり、車が一気に坂道を走り下る」


相手にショックを与えるだけなら、何も本物を用意しなくてもいいわけだし、な。
このやり方で、間違いないだろう…。


「警部さん。今連絡が入ったんですが、八代会長と思われる遺体が発見されたそうです」


遺体が見つかった、か…。
部屋に入ってきた船長へ、目暮警部のパーティ中止の打診は最もな意見だ。
だが、


「やりましょう!そこで犯人が明らかになるんですから!」


と、言い切り高笑いするオッチャン。
…大丈夫かぁ?
そして俺も着替えて会場へと向かった。
途中復活した園子とあおい、蘭に出くわす。
あおいの服は確か、以前ロスの家でしたホームパーティで着てたヤツだ。
あの時もまぁ…似合うと思ったけど、幼さが消えてきた今は(童顔なりに)、あの時よりも、似合うと思った。


「皆さん!アフロディーテ号へようこそ!私は今夜のパーティの司会を担当させていただきます、辻本夏帆と言います」


会場の照明が落とされ、夏帆さんがパーティを進行していく。
スタッフが次々ステージ上に出て紹介されていた。


「犯人、わかったの?」
「あぁ…。けど、まだ決定的な証拠が見つからねぇんだ」
「それではお待たせしました。我らがキャプテン、海道渡」


その声と共に一際大きい拍手が沸き起こり、船長がステージ中央に出てきた。


「えー、ご挨拶の前にこの船を設計された素敵な女性を紹介します。設計士の秋吉美波子さんです」


その声で美波子さんにスポットライトがあたり、ステージに登壇した。
その直後、


「キャプテン!貴江社長が殺害されたというのは本当なんですか!?」
「八代会長も行方不明という噂もあるんですが…」


まぁ…。
人の噂に戸は建てられない。
しかも警視庁の人間がヘリでやってきた現場を見てる人もいただろうし、こうなるのは時間の問題だったんだろう。


「落ち着いて!皆さん落ち着いてください!」


そうは言っても1度起こった集団パニックは、なかなか収まらない。
さて、どうするかな。
そう思った時だった。


「皆さん!落ち着いてください!」


いつの間にかオッチャンがステージ上でスポットライトを浴びていた。
しかもマイクまで持ってるし!


「ご心配には及びません!この凶悪な連続殺人を犯した犯人はすでに!この毛利小五郎が特定しております!!」
「待ってました!名探偵!!」


なんの合いの手だ、園子…。
アイツもうほんとに大丈夫だな…。
はぁ、と1つため息を吐いた後でステージを見た。


「八代貴江社長を殺害し、園太郎会長をも殺害した犯人。それは!!」


バッ!とオッチャンはある人物を指差す。


「秋吉美波子さん!あんただ!!」


…え?


「殺害の動機は半年前交通事故で亡くなった八代英人氏の復讐。その事故は実は八代園太郎親子による殺人事件だったのです」
「し、しかし、どうして秋吉さんが八代さんの復讐を…」
「それは恐らく美波子さんが英人氏と恋人同士だったからでしょう」


当たり前だが、美波子さんが反撃に出た。
事件の時にあると思われたアリバイは、日下さんが一方的に話していただけだから成立しないというおじさんと、途中で話しかけてきたら電話口にいないのがわかるからそれは不成立という美波子さんの口論なる。


「それでも私が犯人と仰るなら、今すぐ証拠を見せてください!」


ま、そうだよな。


「す、すみません!ちょっとトイレタイム!!」


そう言い会場を後にするオッチャン。
その時、日下さんが髪を掻きあげたのが見えた。
…見つけたぜ!


「警部!みんなが笑っているうちに何か手を打たないと!」
「しかしなぁ…」
「心配はいらんよ、目暮警部!真犯人はわかっておるから」


博士の声で、真相を語り始める。


「皆さん!クルーズの元々の意味をご存知かな?海賊行為だそうじゃ。獲物を求めてクロス上にジグザグ航海するところから来たらしい。そしてこの船の中にも海賊がいた。他人の財産ではなく、命を奪う殺人者という名の海賊がな。…そう、その海賊とは、シナリオライターの日下ひろなりさん!あんたじゃ!!」
「妙なことを言うな。美波子さんの話、聞いてなかったんすか?事件が合ったとき、俺彼女の企画書のストーリー話してたんすよ?」
「ストーリーと言うのはこれかな?」


そう言って事前に頼んでおいたレコーダーの再生ボタンを博士に押してもらった。


「岡崎奈波は海が大好きである。生まれた時から玄界灘を見て育った何よりも海の広大さが好きだった」
「っ!?」
「簡単なトリックじゃよ。あんたは前もって録音しておいたストーリーを電話口で再生し、その間に2人を殺害したんじゃ!」
「バカな!それはちゃんと消したはず!!」
「消したはず?いや、消したと思った。ところが消えてなかったんじゃな!そういう大事なものはちゃんと確認せんと、命取りになるからのぉ!」


その言葉に、日下は押し黙る。


「証拠の捏造ね。…あのテープ、あなたが彼の声を使って入れたんでしょ?」
「あぁ、まぁな。だけど、決定的な証拠は他にある」


俺が灰原に言った直後、日下は反撃に出た。


「けどさぁ、それがイコール殺人の証拠にはならないんじゃないの?」


ま、そうくることは予想の範疇。


「証拠ならあるじゃろ。ほら、そこに」
「え!?」
「あれれー?どうしたのお兄さん!赤い髪の毛の中に黒っぽいのが混じってるよ?…それってもしかして血じゃない?」
「…ちょっと、日下さん」
「そっかー!お兄さん悪いことしたあと鏡を見たけど、髪の毛の色が血の色に似てたんで血がついてることに気がつかなかったんだね!でも覚えておいた方がいいよ!血液は時間が経つと固まって、色が変化するんだから」
「…ついでに、その首に巻いたスカーフを外してもらえんか?ワシの推理が正しければまだ痣が残っとるはずじゃ。あんたに襲われて必死に抵抗した八代会長の爪あとか指のあとがの!」
「ちょっと、失礼します」


そう言って高木刑事が日下のスカーフに手をかける。
…これで事件解決、だな。

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