キミのおこした奇跡side S


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水平線上の陰謀


怪しい男


「なるほど。盗聴器ですか。さすが名探偵の毛利小五郎さんですね」


その後目暮警部、白鳥刑事、オッチャンと共にすぐ日下さんの部屋に行くが、反応は薄かった。
…と、いうよりこうなることは予想の範囲内だったかのような素振りだった。


「今回はそのコナンくんの話を元に我々が推理したんです」
「えへへー!」
「へぇ?そうなんすかー。でもその推理はハズレっすよ。10時15分頃なら俺、この部屋で美波子さんと電話してましたから!」


はっきりと否定してきやがったか。


「海の上なんで携帯電話使えなくて、この電話でね!」
「話していた時間は?」
「えぇーっと、10時から30分くらいっすね!」


企画書が出来た感想を聞かせてもらうための電話、か…。
その時サイドボードにあったカバンのポケットに何か入っているのが目に映った。
…レコーダーと、…写真?


「しかし何故電話だったんです?同じ船の中なのに」
「彼女独身ですからね。部屋を訪ねるのはちょっと…。かといってカフェやラウンジでは誰かに聞かれる恐れがあるし、企画をパクられることってよくあるんですよ」


そう言う日下さんに聴取を終わらせ部屋を出ることになった。


「私の感触では日下さんは白ですなぁ」
「まだわからんよ。アリバイの確認を取るまでわな」


通路を歩いていると、1組のカップルとすれ違った直後、一緒に歩いていたオッチャンが急に立ち止まった。


「どうしました?毛利さん」
「今の女性に見とれていたんだろう。なかなかの美人だったからな」
「あ、いやぁ!あはははは!」


豪快に笑うオッチャン。
…ったく。
そしてその足で美波子さんの部屋に行き、先ほどの日下さんの供述の裏づけをする。
供述同様、10時から30分ほど美波子さんと電話していたらしい。
部屋の電話は無線式ではないから、電話をしながら犯行現場への移動は不可能。
けど、なぁんか引っかかるんだよなぁ…。


「ん?どうしました、毛利さん」
「美波子さんのことを考えていたんだろう?彼女もなかなか美人だからな!」
「いやぁ!あはははは!」


オッチャン、ほんとに頼むぜ…。
その後貴江さんの部屋にいる鑑識のトメさんに成果を聞きに行くものの、特に収穫はなかったようだ。


「でも遺体の近くの床に赤褐色の液体を拭き取ったような跡がありまして」
「ねぇトメさん!それって血じゃないの!?」
「いや、色は似てるんだが、血液反応は出なかったんだ」


それじゃあアレは…?


「目暮警部!6回の客全員と乗員たちに聞き込んだんですが、やはり目撃者はいませんでした」
「そうか…。ウェルカムパーティは5時からだったな。それまで手分けして他の乗客たちからも聞き込みをしてくれ」
「「はいっ!」」
「それじゃあ警部、我々は採取した証拠品を持って本庁に戻ります」
「ご苦労様でした」


そう言って警察の面々、そしてオッチャンは各々の場所に向かった。
…俺はまずはやっぱりあの人、だな。


「お姉さん!」


コーヒーを飲んでる美波子さんに声をかけた。


「えへへー!探しちゃった!もう1つだけ聞いてもいい?」
「いいわよ、小さな探偵さん。で?何かしら?」
「日下さんとの電話ってどんなのだったの?」
「うーん、そうねぇ…、どんなって言われても…。彼がストーリーを読んで、それを私が聞いてただけだから」
「…聞いてただけ?」
「えぇ。途中で口を挟むと彼怒るもの。黙って聞いててください!ってね。…前にもそういうことがあってね。それで余計な口は挟まないことにしたの」
「じゃあ、日下さんがストーリーを読み終えるまでずっと黙って聞いてたの?」
「えぇ、そう。それで20分くらいでストーリーを読み終えて、どうでしたか?って聞くから、おもしろかったわよって言ってあげたわ。…できた!」
「え?」
「はい!」
「…あ、ありがと…」


紙ナプキンでヨットを折った美波子さんからそれを受け取った。
…つまり、日下は20分間は一方的に話すだけの電話をしていた、ってこと、か。
その後船内を歩いていると、日下の部屋から出てくるオッチャンを目撃した。
…オッチャン、日下に何を?


コンコン


「はい?…あれ?」
「えへへ!遊びに来ちゃった!!」
「あ、おい!!」


こういう時ガキの体は楽だぜ!


「さっきチラッと見たんだけど、かっこいいねー、このパソコン!」
「あぁ。商売道具だからな」


そのまま例の「企画」を見るが、


「子供の読むものじゃない」
「はーい!」


あっさりパソコンを閉じられた。
でもまぁ、今ので十分だけど。


「あれれー?博士のと同じだ!」


そう言いながら先ほど見つけたテープレコーダーの再生を押す。


「あれ?何も聞こえないよ?」
「小僧!」
「ん?」
「出てけ!」


オッチャンと日下の違いは、投げ捨てずつまみ出したことだった。
…いつまでも証拠を残してるわけねぇよな。
けど、確認したいことは出来たし?
じゃあ、次は、


「博士ー!」


甲板にいる博士に声をかける。


「ちょっと、博士に貸してもらいてぇものがあるんだけど」


そして博士に頼んだ後、部屋に戻ると、


「あれ?何してるのオジサン」


正装しているオッチャンがいた。


「どこをほっつき歩いてるんだ。直にパーティだぞ?」


コンコン


「はい?」
「あ、毛利さん。目暮警部がちょっと来てほしいと」
「警部殿が?…わかった」
「僕も!」
「オメーは仕度してろ!」


だろうとは思ったけど。
でもまぁ、こっちには盗聴機能つきのカフスボタンがあるし。
そしてそのまま部屋でオッチャンと警察の会話を聞くことにした。

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bkm

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