キミのおこした奇跡side S


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水平線上の陰謀


目撃証言と容疑者


バスローブ姿で胸を一突きされて亡くなっていた貴江社長。
恐らく死後30分ほど…。


「浴室から出てきたところをぐさり、か」


オッチャンが遺体から離れてから、貴江社長に駆け寄る。
何か、証拠は…。
うん?
貴江社長の左手の先のカーペットの血は拭き取られている…。
一体なぜここだけ?


「うわぁ!?」
「なにやってんだ、お前!」
「……いってーー!!」


オッチャンに猫のように首を摘まれ部屋からつまみ出された。


「毛利さん!」
「うん?」
「八代会長なんですが、ビリヤードの途中で出て行ったきり戻ってこないと新見さんが!」
「なんですって!?…もしかしたら八代会長も何か事件に巻き込まれたのかもしれん」


あのマリーナに落ちていた鉄扇といい、その線が濃いかもしれない…!
その後ヘリで目暮警部と白鳥、高木両刑事がやってきて現場検証が始まる。


「なに!?会長の指紋が?」
「えぇ。血痕の付着したマリーナの搬入口から集中的に。もちろん、搬入口の血痕も八代会長の血痕と一致しました」
「ご苦労さま。引き続き作業を続けてください」
「それと警部。マリーナの係員の話によると、その搬入口のドアが開閉された形跡があるそうです。しかもごく最近」
「なに?」


搬入口の開閉…。
じゃあ八代会長は、


「指紋、血痕、ドアの開閉。これは警部、どうやら、」
「どうやら八代会長はマリーナで何者かに襲われ、搬入口から海へ突き落とされた。そう考えて間違いないでしょう」


そう、推理が出来る…。
その後目暮警部が海保への連絡と新見夫妻からの聴取を指示した。


「さてと、コナンくん?」
「あ、はい」
「後は我々に任せてキミは部屋に戻りなさい」


ま、そうだろうな。


「くれぐれも不必要に出歩かないように。まだ殺人犯が船内にいる可能性は高いからね」
「はーい」


なんて帰るふりして、再び戻ってきて机の下に身を潜め事情聴取に耳を傾けた。


「ご協力、ありがとうございました!」
「うむ。言うまでもないが、なるべく早く犯人を逮捕してくれたまえ」
「はっ!」


元首相の新見さんの事情聴取が終わり、聴取内容の確認に入る。


「さて、と。貴江社長がスカッシュの後部屋に戻り、入浴の後殺害されたとすると、やはり毛利くんがすれ違ったウィンドブレーカーの人物を犯人と断定して間違いないだろう」
「えぇ…」
「その犯人らしき人物がそのまま地下のマリーナまで降り、前もって呼び出しておいた八代会長を殺害したとすれば、時間的にもぴったり合う。つまり、この2つの事件は同一犯人の可能性が非常に高いということだ。…毛利くん、犯人の体格だが?」
「身長は170センチ前後、スラリとした痩せ型でした」
「身長だけでは男性か女性か判断できませんね」
「そう言えば殺害された貴江社長も同じくらいの身長だったな…」
「辻本さん、それが例の?」
「はい。乗船記念として、お客様みなさんにお配りしているものです」
「しかし、その気になれば乗組員にも簡単に手に入るでしょう」
「…白鳥くん、犯人の動機だが?」
「怨恨と見てまず間違いないでしょう」
「被害者の財布や宝石は手付かずでしたから」
「部屋の鍵はこじ開けられた形跡はありませんでした。恐らく被害者自身が犯人を招きいれたか、犯人がマスターキーなどを使って忍び込んだかのどちらかです」
「岬さん、マスターキーを持っているのは?」
「それはかなりいますね。私はもちろん、警備員、世話係の夏帆くん、それにチーフクラスのCAは皆持っています」
「警部。犯人は被害者が1人でいる時を狙っています。だとすると、犯人は被害者の予定を知っていたんじゃないでしょうか?」
「…辻本さん。2人のスケジュールの管理は世話係のあなたが?」
「はい」
「他にそのスケジュールを知っていた人物は?」
「チーフパーサーの岬さんの耳には入れましたが、他の人に漏らしてはいません」
「…つまり、あなたの身長が10センチ高いか、岬さんの体重が10キロ少なかったら1番の容疑者になっていましたね」
「…あともう1つ。園子くんの事件がこの2つの事件と関係あるのかないのか」


船の上の密室。
乗員乗客合わせて600人の容疑者、か…。
それにしても、白鳥刑事の言う通り、犯人は八代親子のスケジュールをいつ知ったんだろう?
夏帆さんは誰にも話してないと言うし…。
その時、オッチャンの袖で何かが光った。
あれは…。
…そうか!もしかしてアレを使えば!


「ねぇねぇ!お姉さんに聞きたいことがあるんだけど!」
「え?」
「コルァ!お前どっから出てきたんだ!!」


俺に飛び掛ってきたオッチャンを避け、夏帆さんのところに行く。


「昨日の夜、会長さんのところで今日のスケジュールを話さなかった?」
「えぇ…。ディナーの後、部屋までお送りした時にお2人に確認したわ」
「じゃあ、昨日会長さんの部屋に誰もいなくなった時ってなぁい?」
「そうねぇ…。昨日は八代会長が疲れたと仰って、ディナーまでお休みになられてたから、お部屋を留守にされたのはディナーの時だけね」


なるほど。


「おーまーえー!!」
「え?」
「さっきの話を聞いてたな!?」
「え、えへへ」
「コルァ!!…あいてーー!!!」


俺と間違え机に拳骨を喰らわせたオッチャン。
…避けれてよかった、マジで。


「岬さん、ディナーに出れなかったお客さんている?」
「いや…。全員出席したはずだけど?」


となると、犯人は乗組員…。
いや…、


−すみません、失礼して部屋で休みます−


1人いるじゃねぇか…!


「ねぇ!お姉さんも日下さんの取材受けたことある?」
「日下ひろなりさん?えぇ、あるわよ?」
「もしかしてその後でマスターキーがなくなったなんてこいぃっ!?」
「いい加減にしろ!んなことあるわけねぇだろっ!!」
「それが実は…、3週間ほど前に1本紛失していることがわかったんです」
「それもコナンくんの言う通り、日下さんに取材を受けたあとでした」


やっぱり、な。


「で?その人に何か不審な点でもあるかい?」
「うん!日下さん、ディナーの途中で部屋に戻ったんだ!船に酔った、って言って。でもほんとは会長さんの部屋に行って盗み聞きしてたんじゃないかなぁ?って!」
「ばーかっ!ガキじゃあるまいしそんなかくれんぼみたいなこと!」
「…盗聴器」


よし!


「その時に会長の部屋に盗聴器をしかけたのかもしれません」


オッチャンが目撃した人物の背格好も似ていることから、日下さんへの聴取が決まった。

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bkm

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