キミのおこした奇跡side S


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水平線上の陰謀


「黒曜石の子猫」


翌日快晴。
甲板に出てみんなでティータイム。


「気持ちいー!」
「ほんっと!潮風に吹かれながらのモーニングティー!…なかなかのもんよね!」


なーにが「なかなかなもんだ」だ!
オッチャンのいびきのせぃでこっちは寝不足気味だっての!
その当人は、


「かーっ!見たか貴江社長の足!とても50代とは思えないっ!!えへえへえへっ」


相変わらずの(服部風に言うなら)ボケナスぶりを見せてくれてる。
どーにかなんねぇのか、それ…。


「博士!そろそろじゃないですか?」
「へ?」
「ほら!得意のダジャレクイズ!」


こっちもこっちで相変わらずだ。
後ろの席から聞こえるダジャレと目の前で繰り広げられる蘭とオッチャンの喧騒にため息を吐きながらコーヒーを飲んだ。
…ん?日下さんだ。
なぁんかあの人、目につくんだよなぁ…。


「ねぇ!アレ、いつ渡すの!?」
「今でも、いいんですけど?」
「なぁ!こういうのはどうだ?」
「「うん?」」


チラッと後ろを見たら、元太たちが耳打ちしていた。
…まぁたロクなこと考えてねぇな。


「ねぇ!ラスト飲み物取りに行こう!」
「いいよ」
「行こう行こう」
「がっつり元取らないとねー!」
「…僕たちも飲み物ー!」
「取りに行こうなー!」
「どんなジュースにしようかなぁ?」


あおいたちが席を立った後、光彦たちも立ち上がった。
…うん?あの動き…。


「さ!行きましょう!!」
「待ってー!」
「…なぁにはしゃいでんだか!」


なんだぁ…?


「さ、て、と!これから何しようか?」
「うん、泳ぐのは」
「反対っ!!」
「…みたいだからね」


バッと手を挙げて反対意見を述べたあおいに蘭と園子が苦笑いした。
…まぁ、泳げねぇしなぁ。


「そろそろ着替えねぇと!」
「え?着替える、って?」
「ふふん…。実は麗し姉妹からお誘いを受けてんだっ!!」
「「えー!?」」
「なんでも眠りの小五郎のお話を聞きたいそうだ!じゃあな!」


うっきうきで去っていくオッチャン。
いやあんた、事件解決してねぇから話すことねぇだろ…。


「もう放っておきましょ」


頭を抱えて言う蘭。
ほんっと、苦労してるよな、コイツ。


「みんなは何かしたいことある?」
「「「え?」」」
「あ、あ、あーっと…」
「あ!私かくれんぼしたい!!」
「おもしろそうですね!」
「やろうぜ!」
「かくれんぼかー。懐かしいな。子供の頃よくやったよね!」


俺はそんな昔のことよりも、かくれんぼって言ったらこの間の事件を思い出すんだが…。


「悪ぃけど俺パス」
「やりましょうよ、コナンくん!」
「つきあい悪ぃぞ、オメー!」
「…そう言えば昔も新一に断られたんだよねぇ」
「さぁやるぞー!かくれんぼ!!」


半ばヤケクソでかくれんぼ参加が決定した。


「それじゃあルールを決めましょう?制限時間は30分!隠れていい場所は1階〜7階まで。でもキャビンと関係者以外立ち入り禁止の場所と、トイレ、展望浴室は除く。で、どう?」
「「「さんせーい!!」」」


蘭の仕切りの元、アフロディーテ内かくれんぼのルールが決定した。


「では皆さん、集まってください!」
「「「最初はぐー!じゃんけんぽん!!」」」
「…えっ!?」
「はーい、園子が鬼ー!」
「ま、待って待って!この広い船内で30分で7人も見つけるの、絶対無理!」
「んー…、じゃあ特別ルールでもう1人鬼作ろうか?」
「え!?鬼が2人ですか?」
「いいじゃねぇか!変わっててよ!」
「じゃあ、もう1度じゃんけんね!」


…で、なんとまぁちぐはぐな園子と灰原って言う鬼のペアが誕生したわけだ。


「あ、そうだ!あんたの探偵バッチ、ちょっと貸しなさいよ」
「え!?なんでだよ!」
「鬼が2人だと誰を見つけたかわかんなくなるでしょ?そのバッチで連絡を取り合うのよ!」
「あ、じゃあ私の貸すよ」
「…そーいやあんたも探偵団に入れてもらったとか言ってたわね」
「…なに?」
「べっつにー!…じゃ、さんきゅー、借りるわ」


そう言ってあおいが園子にバッチを貸した。


「じゃあ5分後の9時50分から探し出すことにして、10時20分までに6人全員を見つけたら鬼の勝ち」
「オッケー!負けないわよ!」
「ふふん!残念ながら私たちの勝ちね!だって、」
「こっちにはコナンくんがいるもん!」


そう言われてもだなぁ…。
まぁ、努力はします。
そんなこんなで始まったかくれんぼ。
さぁて、どこに隠れっかなぁ…、なんて歩いていたら、さっきまで子供達が遊んでいたボールが転がっているのが目に入った。
…ぃよっ!っと、


ガン!


「え!?…やっべぇな」


壁に描かれている鯨の目を的変わりに蹴ったら見事にズレた。
…精度が落ちてる。
いくらサッカーボールじゃないからと言ってこれはまずい、と夢中でボールを蹴り出した。


ガンッ!!  ガンッ!!


…よしっ!
じゃあ次は、…あそこ、だー!!


ガンッ!


さらに小さい的、イルカの目に変えた。
当たった!と思った瞬間、


「ナイッシュー!」
「…え?」


どこからか、あおいの声が聞こえた気がした。
振り返ったけど姿はなく、気のせい、か?と思った時、


「ちょっと工藤くん!」


灰原がこっちに歩いてきた。


「よぉ、灰原」


今の声、まさかコイツじゃねぇよな…?


「あなたかくれんぼに参加してる自覚ないんじゃない?」
「あ…」


思わず夢中になって蹴っていたら、かくれんぼの存在すっかり忘れてた。


「それで?」
「あ?」
「随分とすっきりした顔してるけど、話合ったの?あおいさんと」
「またその話かよ…。いーだろ、どうでも!」
「よくないわよ」
「え?」
「見ていて目障りなのよね」
「目障りってオメー…」
「チラチラとあなたの顔色伺ってどうしようか悩んでる彼女の顔、まるで飼い主に捨てられた子猫見てるみたい」
「…オメーまでんなこと言うのかよ」
「え?」


−野良猫にしておくつもりなら、遠慮なく俺の宝石箱に入れさせてもらうぜ?−


「私までってどういうこと?」
「…黒曜石の子猫!」
「え?」
「って、言いてぇんだろ?」


そう。
クロバだけじゃない。
キッドもいつ手出してくるかわかんねぇし!


「黒曜石の子猫?…あなた随分と歯の浮く表現するのね」
「……えっ!?」
「まぁなんでもいいけど」


早くなんとかしなさいよ、そう言って灰原は他の連中を探しに行った。
なんとかなんてそんな…。
自分でも、どうしていいのかわかんねぇのに。
そんな思いを胸に隠しながら灰原・園子ペアの1番最初の捕獲者となった。

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bkm

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