キミのおこした奇跡side S


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水平線上の陰謀


沈黙のディナー


「よし、みんな準備できたわね!じゃあご飯食べに行くぜー!」
「「「おー!」」」


園子の号令で服を着替え、レストランに向かう。
途中俺と目が合った灰原がチラッとあおいの方へと目配せをしてきたが無視していたらため息を吐かれた。


「わー!広ーい!」
「豪華ですねー!」
「そりゃそうよ!八代グループって言えば結構大きな財閥だしね!その一役を担う八代商船が初めて作ったクルーズ船だもん。これくらいの豪華さがなくっちゃ!」


園子のこういう発言を聞くと、やーっぱ「お嬢さま」なんだよなぁ、と感じる。
こういう場所やパーティなんかでの場慣れた感じは、普通の女子高生じゃ無理だろう。


「お客様。毛利様でいらっしゃいますね?」
「あぁ、はい」
「ただいまお席のご用意を致しますので、少々お待ちください」


そう言って去っていく黒服。
その言葉を聞いて入り口で待っていたら博士が何かをカチカチと操作していた。


「博士、何だソレ?」
「ん?これか?ただのICレコーダーじゃよ。新発明のヒントが浮かんだらすぐに録音しておこうと思ってなぁ。おぉ、そうじゃ!新発明と言えば…じゃーん!カフスボタン型スピーカー!盗聴機能つきじゃ!」


へぇー…、盗聴機能つきのスピーカー。
こりゃいいや!


「お!ちょうどいい!しばらく借りるぞ!」
「あぁ!」


俺が博士の手から渡されたカフスボタンはあっという間にオッチャンに奪われた。


「で、でもそれは!」
「バーロォ!こういうのは俺みたいなダンディな男にこそ、相応しいんだ!オメーみたいなガキにはまだ早ぇんだよ!」
「でもお父さん、それは!」
「あ、あぁ、別にいいよ、蘭姉ちゃん…」


どうせ船ん中じゃ必要ねぇし。


「あれ?毛利さん?」
「うわっ!?」


オッチャンに声かけてきたヤローとぶつかって、床にメガネが落ちた。
謝罪もなしか!


「名探偵の毛利小五郎さんですよね?」
「え?えぇ、そうですが?」
「やったー!俺、シナリオライターの日下ひろなり、と言います」


その日下はなんでもオッチャンのファンなんだとか。
その後何故か日下さんと、この船の設計に携わった秋吉さんと共に夕食をとることとなった。
…それにしても秋吉さん、妃弁護士に似てるな。
=オッチャンの苦手なタイプってわけか。


「実は俺今豪華客船をテーマにした連続ドラマの企画書を書いてましてね。その取材で美波子さんと知り合ったんですよ」


まぁ…。
仕方ねぇっちゃ、仕方ねぇんだろうが。
人数が2人も増えちまったもんだから、対面で座ればどうにかなったんだろうが席が足らず向かい側は左から博士、オッチャン、日下さん、秋吉さん、園子、蘭。
で、こっち側が探偵団が並んで俺の隣にあおいが来る、と。
…俺が喋んねぇんだから当然だが会話がない。


「ところで毛利さんは当然招待されたんですよね?それとも何かの調査の依頼でも?」
「いやぁ、招待、というかぁ…」
「招待されたのはこの園子のご両親。彼女のお父さんは鈴木財閥の会長さんなんです」
「でもうちの親、どうしても都合がつかなくて私が変わりに。で、どうせならってことでみんな一緒に」


日下さんが驚いた顔をしている。
ま、当然だな。
アレが一発でお嬢さまに見える人間がいたらお目にかかりたい。


「それでオメーよぉ、どんな話書いてんだ?」


初対面の人間にオメー呼ばわりか、元太…。


「豪華客船で世界一周する話とか?」
「タイタニックみたいに処女航海で沈没するパニックものかもね」


縁起でもねぇこと言うな、灰原。


「沈没と言えば、前に八代商船の貨物船が氷山と衝突する事故がありましたなぁ…」
「はい。15年前の冬のことです」
「確か原因は船長の判断ミスで乗組員が1人亡くなって、船長も船と運命を共にしたんじゃ…」
「ほんとですか!?」
「この船も沈んじゃったらどうしよう!」
「俺7メートルしか泳げねぇよ!」
「大丈夫!アフロディーテ号の船長は優秀だし、この辺りの海には氷山もないから!」
「…ま、船が沈んだ時に真っ先に救助されるのはあの連中だろうな」


そう言って今入ってきた人たちに目をやると、元首相や有名タレント、そしてこの客船のオーナーである八代グループの会長とその娘で八代客船社長が入ってきた。
…さすが鈴木財閥を招待するほどの客船。
随分と豪勢な顔ぶれだぜ。


「そう言えば八代グループの貴江社長の旦那さん、ついこの間交通事故でなくなったのよね…」
「私の上司でこの船の設計チームのリーダーだったわ…」
「そうでしたか…。確か車を運転中に心臓発作を起こして、崖から転落したらしいっすなぁ…」


そう言えばそんなニュースがあったな…。


「あ!船長さんだ!カッコいー!!」
「…彼は海道渡船長。さっき話しに出た15年前の事故のとき、彼はその船の副船長だったんですよ」


へぇ…。
事故を起こしたタンカーの副船長、ね。
頭の隅に簡単に相関図を入れ、テーブルに飲み物が揃うのを待った。


「さて、飲み物が全部揃ったところで、」
「あ!私にやらせて!おじ様!」
「あ、あぁ…」


そう言って園子が立ち上がった。


「それでは、今回のクルーズと、あおいの関東大会銀賞を祝して!」
「え!?」
「かんぱーいっ!!」
「「「かんぱーいっ!!」」」


園子のこういうところ、嫌いじゃない。
蘭が言った通り、友人思いな奴。
少し苦笑いしてジュースを口にした。
そして次々に出される料理を平らげ、あとはデザート、って時。


「すみません。失礼して俺、部屋に戻って休みます」


船酔いした日下さんが先に戻ると席を立った。


「ちょっとお父さん!ほんとに大丈夫なの!?」


食事も終わり、客室に戻ろうって時。
ぐでんぐでんに酔っ払ったオッチャンが博士に抱えられていた。


「もうるぃこごろぅ、らいじょうぶでぇ、ありやす!!」


…ろれつ回ってねぇじゃねぇか。
このオヤジはほんとに…。


「大丈夫だよ、蘭姉ちゃん。後はベットに寝かせるだけだから」
「ごめんねぇ…。じゃあコナンくん、お父さんのことお願いね?」
「うん!」


そう言って蘭たちと別れ、男部屋のキーを開け中に入る。


「開いたぞ、博士」
「それじゃあ僕たちも」
「あ、ああ…」
「それじゃあコナンくん?」
「お父さんのことお願いね?」
「「おほほほほほー!」」


アイツらぁ…!
そう言って去って行った元太と光彦に若干(てゆうかかなり?)イラッとしながらも中に入った。


「新一、」
「俺風呂入って寝る」


そして博士より先に風呂に入らせてもらって、オッチャンの高いびきを聞きながらこの日は眠りについた。

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bkm

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