キミのおこした奇跡side S


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水平線上の陰謀


捻れる絡まる縺れる


「それで?」
「あん?」
「今度は何を妄想して眠れなかったの?」


昨日、クロバに手を引かれ俺の目の前から去っていったあおい。
そのことで1人イライラと眠れぬ夜を過ごし(と言ってもオッチャンの鼾でどのみち眠れなかったんだが)不機嫌最高潮な俺を見た灰原が、放課後2人の時に聞いてきた。


「別に妄想なんかしてねぇっての!」
「あら、じゃあ現実に何か起こったのかしら?」
「…」
「図星?そうね…。あなたが眠れないほど思い悩んでかつ翌日も機嫌が悪いとなると、…彼女、ついに他の男に取られた、とか?」
「ウルセェな!黙ってろよ!」
「…やだ、ほんとなの?」


灰原が目を見開いて俺を見てきた。


「相手は?学校の人?」
「…オメーには関係ねぇだろ!」


イライライライラ。
何を、どうしたいのか。
それすらもわかんねぇくらい、自分が苛立ってるのがわかる。


「確かに私には関係ないけど、」
「…」
「そんなイライラしてる人、家に入れたくないんだけど」
「…博士に用があんだよ!」


今日は一直線に博士の家に向かう。
元太たちも用があるとかで早々に解散してくれた。


「ケータイ?」
「おー。昨日壊れちまったから、買うのつきあってくんねぇか?」
「壊れたってなんでまた?」
「イラついて壁にでも投げつけたんじゃないの?」
「え!?投げつけた!?新一、どうしたんじゃ?何かあったのか?」
「別になんもねーよっ!オメーも余計なこと言ってんじゃねーよっ!!」


博士に保護者になってもらい昨夜壊れた(ムカつくくらい灰原に言い当てられたが)ケータイを買いにショップに行く。
壊れたのは「コナン」のケータイだが、SDに入れてたわけじゃねぇし、今まで撮った画像は、待ち受けにしてたあの寝顔の写真も含めて、全部パーになった。


from:あおい
sub :こんばんは
本文:明日は数学の小テストがあります。心配。
 ∧∧
(><) あおい


「新一」のケータイにあおいからメールが着た。
クロバのことは何も触れていない。
当たり前だ。
アイツは「俺」がクロバと会ってることを知ったなんて微塵も思ってないはずだ。
でもそれはつまり、俺が気づかなかったら、俺の知らないところでアイツと会い続けてたってことだろ?
…ふざけんなっ…!
そのままメールを返さずに、朝も夕方もあおいに会わないよう時間帯をズラして通学していた。


「綺麗だねぇ…」


あおいを避けるような(ような、っていうか避けてる)日々を過ごしていたら時間は瞬く間に過ぎていき。
あっという間に豪華客船アフロディーテ号の処女航海の日となった。


「こんな綺麗な夕日、新一にも見せてあげたいなぁ…」


俺、蘭、そしてあおいの3人で甲板に出て夕日を眺める。
蘭とあおいが、神海島に行ってからどんな話をしたかはわからない。
だが、行く前と比べて2人でいるところを目撃するようになったし、何より、どことなく2人の間に感じていた壁が、なくなったような、そんな気がした。
それに気づいたのと同じ頃、蘭とあおいは以前は全くしなかったが、お互いがいる時に「俺」を話題に出すようになったようだ(というか蘭の話を聞く限り、蘭が一方的に話題に上げてるように思える)
それが何を意味するかは、わからないが…。


「ほ、ほら!」
「え!?」


俺が考え事をしながら夕日を見ていたら、ひょい、とあおいが俺を抱きかかえた。


「上からの方がよく見えるよ?」


そりゃよく見えるだろう。
チビだチビだと言っても小学1年の俺からしてみたらあおいはデケェんだ。
でも今はオメーと話す気分じゃねーんだよ。


「降ろして、あおい姉ちゃん」
「…はい…」


俺がそう言えばあっさり解放するあおい。
…あおいもさすがに「俺」に避けられてること、気づいたと思う。


「コナンくーん!」


俺が解放された直後、元太たちが甲板に出てきた。
これから夕飯だから着替えて集合、だそうだ。


「♪ゆっうはん ゆっうはん♪」
「元太くんはほんとに食べることしか考えてませんね…」
「元太くんまた太ったでしょー?」
「えっ!?ふ、太ってねぇよ!」
「そうですかー?」
「怪しい、怪しい!」


あはは、と笑う歩美ちゃんたちの後ろをついていく。
すると、


「まだ拗ねてるの?」


灰原がまぁた絡んできた。


「別に拗ねてなんかいねぇし」
「あなたねぇ。あなたと彼女がどうなろうが私には関係ないけど『工藤新一』と『江戸川コナン』の両方から同時に避けられたら、さすがに彼女が気の毒よ」
「…」
「彼女事情を知らないんでしょ?あなたの言い分によると。なら現状何が起こってるのかわからず混乱して、それこそ他の男に泣きつくんじゃない?」
「それは!」
「それは?」
「…………困る」
「ならせめて、『江戸川コナン』は許してあげなさいよ。『工藤新一』はリアルな恋愛対象として仕方ない行為だとしても、小学1年生の『江戸川コナン』は『お気に入りのお姉さん』に対して行き過ぎの行為だと思うけど?」


わかってる。
頭じゃ理解してる。
2人の「俺」が避けるのはおかしい。
でも、理解できても納得できるかはまた別問題だ。
「俺」を好きだと言いながら、なんで他の男を家に招く?
…家に招いて、何してる?
わかってる。
アイツは俺が考えてるようなことはしてない。
そういう女じゃない。
むしろ何も考えず、かつて俺が気がついたらそうだったように、何の裏もなくクロバを家に招いている可能性の方が高い。
…だが世の中「絶対」などということは、それこそ絶対にあり得ない。
「俺」がいない間に、何してんだよ…?
オメーは「俺」が好きなんじゃねぇのかよ…?


「とにかく今は着替えてレストランに行きましょう」


ため息交じりに言う灰原の言葉を聞いてから、船室に入った。

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