キミのおこした奇跡side S


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変わる今


変わる今


「「…」」
「や、やっぱりおかしいよね!?今着替え」
「かわいー!」
「似合う似合う!」


シャッ!と開いたカーテンの向こうから出てきたあおい。
…思った通り、黒髪がよく映えて、似合っていた。


「黒髪にこの色もデザインもすごく似合う!」
「ガキンチョ良くあおいのこと見てんじゃない!」
「えへへー」
「に、似合う?」
「似合う似合う!」
「今日迷ってた中で1番だよ!」
「そう、かな…」
「えぇ、よくお似合いですよ」
「そ、そうです、か…?」


少し赤い顔をしながら、受け答えするあおい。


「じ、じゃあコレにしよう、かな」


普段見慣れない格好を見るのも、なんと言うか…嬉しさ、と、いうか喜びがあるが、自分が選んだ服ってのがまたさらに拍車をかけてるような気がした。


「よし!タイタニックな出会いは無理でもソレ着てまたナンパされに行くわよ!」


…ナンパされに行くだと?
ニシシ、と笑う園子を軽く睨む。
この女、全っ然「俺」に協力する気ねぇじゃねぇか!
園子に言うより後で直接あおいに電話して釘刺しとかねぇと…!
その後、あおいが服を購入し、じゃあ帰るかってなった。


「え?コナンくんみんなと帰らないの?」
「だってどうせ蘭姉ちゃんと同じ家に帰るんだし、僕は蘭姉ちゃんたちと一緒に帰るよ!」


つーか一緒に帰らねぇと、そのまま園子にどっか連れてかれやしねぇかと思ってるなんて言えねぇんだけど。
そんなわけであおいたちと一緒に帰ることになった。
米花駅で園子と別れて、あと少しで探偵事務所、ってところで、


「あおいちゃん?」


聞きなれない男の声がして振り返った。


「か、快斗くん!?」


…え?


「良かったー!俺ケータイ忘れてきちまって、会えなかったらどうしようかと思ってたんだ!」
「え?私に会いに来たの?」
「おぅ!ほら、この間家行った時に俺忘れ物してっただろ?こっちに用があったついでにそれ取りに来たんだよね」


…なんだ、今の会話?
聞きなれない声の男は過去「工藤新一」が何度か会ったことのあるクロバだった。


「あおい?その人、」
「あ、う、うん、ほら、蘭も前に会ったことある、よ、ね?」
「黒羽快斗です。久しぶり、…蘭ちゃん、だっけ?」
「あ、はい…。お久しぶり、です…」
「ごめん、もしかしてあおいちゃんと用ある?」


「あおい」ちゃん?
アイツ前はあおいのこと、


「私たちの用は終わった、けど…」
「あ、マジで?じゃあ俺が連れてっちゃっていい?」
「それは、まぁ、あおいがいいなら…」
「てこで、あおいちゃん行こうぜ?」
「え!?あ、あぁ、うん?」
「俺腹へってんだけど、今日時間あるならこの間言ってたお祝いも兼ねてまたメシ食いに行かねぇ?もちろん俺のおごりで!」
「いい、けど…、」
「神海島の宝の話も聞かせてくれんだろ?」
「だから電話したじゃん!言われてた宝は、」
「まぁまぁ、それをメシでも食いながらもう1度聞かせてよ」
「…快斗くん時間は?」
「それは大丈夫!じゃあ行こうか。蘭ちゃんとそれから…メガネのボウズもばいばい!」
「はあ…」
「ご、ごめんね蘭!コナンくんも!また明日!」


そう言って去って行くあおいとクロバ。
その右手は、クロバの左手を握っていた。


「…私たちも中に入ろうか?」


そう言う蘭に手を引かれ、毛利家へと入っていく。


「今日はコナンくんの好きなハンバーグだよ!」
「…いらない」
「え!?ど、どこか具合が悪いの?」
「あ、いや…、ほら!博士とさっき食べてきちゃって…」
「そうなの?」
「今日宿題いっぱい出たし、もう部屋に行くね。お風呂沸いたら呼んで」
「あ、コナンくん!」


蘭の声を背に部屋へと滑り込んだ。
…なんだ?さっきのは…。
元々あおいはクロバに対して好意を持っていて。
でもそれは異性としての好意ではなく、友人としての好意だって、本人が言ってたじゃねぇか。
でも今のは?


−快斗くん−


「快斗」くん、だ?
なんで名前呼んでんだよ?
そもそも


−この間家行った時に俺忘れ物してっただろ?−


アレは、どういうことだ?
1人暮らしの家にクロバを入れたってことか?


−この間言ってたお祝い兼ねてまたメシ食いに行かねぇ?−


あの口調、あおいと出掛けるのは初めてじゃない。
2人で会ってた?
いつから?
だってあおいは…。
パカッ、とケータイを開くと気持ち良さそうに寝ているあおいの顔。


−それより気をつけることね。元々庇護欲を掻きたてられるタイプの彼女、そんな家庭の事情を知った男は、それこそ放っておかないと思うけど?−


灰原の言う通り、あおいは庇護欲を擽るタイプの女だと思う。
親と早くに死別したなんて事情を聞けば尚更だ。


−野良猫のままにしておくつもりなら、遠慮なく俺の宝石箱に入れさせてもらうぜ?−


いつ接触するのかわからないキッド(最も素の姿のまま何食わぬ顔で接触する可能性が高い)もだが、もっと身近に、1番厄介なヤローが確実に俺のいない隙をついてあおいに近づいてんじゃねぇかっ!!


−『あなた』のことが大好き−


「俺」のことが好き?
「俺」がいない間に他の男家にいれてるくせに


「ふざけんじゃねぇっ…!」


ガンッ!


壁に投げつけたケータイが音を立てて床に落ちる。
誰に言うわけでもない言葉は虚しく闇に消えた。

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