キミのおこした奇跡side S


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変わる今




−『あなた』のことが大好き−


神海島で、あおいが「俺」を見てはっきりとそう言った。
けど、あの時「俺」は「コナン」であって「新一」ではなかった。
…子供に対する「好き」ってことか?
いやでもそれならあんな泣きながら言うか?
あれはもっとこう…真剣なもの、だと、思う。
ならその真意は?
なんであおいは「俺」にあんなことを…。
あぁっ!くそっ!わかんねーっ!!


「はぁぁ…」
「あ!コナンくんまたため息吐いてる!」
「最近多いですよ?何か悩みですか?」
「うな重食えば悩みなんてすぐに忘れるぜ!」


うなぎ食ったくらいで忘れるか、バーロォ…。
あの翌日あおいは蘭と2人、米花町に帰って来た。
その時に会ったけど、…なにがあるわけでもなく。
あ、コナンくん。本当にいろいろありがとう、じゃあまた、で、さっさとマンションに帰って行った。
…アレは一体なんだったんだ?


「あなたのことが大好き」
「えっ!?」
「なんて言われて、いつまで妄想に浸ってる気?」


元太たちと別れて探偵事務所への帰宅途中。
方向的に一瞬灰原と2人だけで帰ることになるんだが、その時に灰原につっこまれた。


「オ、オメー聞いてたのか!?」
「立ち聞きしたみたいに言わないでくれる?聞こえたのよ。あなたが宿を出た後すぐあの子たちも起きてきて病院に行くって騒ぎだしたから、追いかけるように私たちも病院に行ったの。あの子たちは途中で蘭さん見つけてそっちに行ったから聞いてなかったけど、先に私1人病室に向かったらちょうどそのタイミングだったの」


小さくため息を吐きながら、灰原が言った。


「まぁ最もその後すぐに戻ってきた蘭さんに邪魔されて、あなたはコクり損ねたみたいだけど?」
「…ルセェな…」


ちゃっかり事の顛末まで見届けといて何が「聞こえた」だよ!


「それよりあなたの彼女」
「あん?」
「ショタコンなの?」
「…オメーなぁ、他に言い方が」
「あなたたちの声しか聞こえなかったからなんとも言えないけど、泣いてたんでしょ?彼女」
「…それがなんだよ?」
「普通女子高生が小学生相手に泣きながら『大好き』なんて言わないんじゃない?」


それはまぁ…、俺も思ったけど。


「考えられることは2つ」
「え?」
「あなたの彼女は単なる『子供好き』の域を超えた『子供しか愛せない』タイプの人間」
「…ヤメロよそういう憶測」
「もしくは、」
「まだ続くのか?オメーいい加減に」
「江戸川コナンの正体に気づいている」
「………え?」


振り返った灰原の顔は、ひどく、真剣だった。


「それなら説明がつくわ。あの告白は『あなた』が好きという言葉だった。それはつまり、どちらかの『あなた』ではなく『江戸川コナン』であり『工藤新一』である『あなた』のこと」
「…」
「彼女、常にどこか抜けてる感じだけど、極稀に怖いくらい感が鋭い時あるわよね?過去あなたの彼女に対する態度から、その『極稀』の感がたまたまこのことで発揮され、感づかれたとしてもおかしくないと思うけど?」


灰原はジロリ、と俺を見遣ってそう言った。
あおいがコナン=新一と気づいている?


「悪ぃけど、それはねぇよ」


もし気づいていたんだとしたら、いつから?ってことになる。


−逢いたい、です−


少なくとも沖縄のあの夜は、気づいていなかったはずだ(気づいてたら俺の前でそんなこと言わねぇだろ!)
じゃあいつ?って話になるが…、思い当たる節はない。
蘭、は、一緒に住んでることもありボロが出るのか、ヤバイ!って感じるときはあるが、あおいに対してはそれがない。


「…まぁなんでもいいけど。もしバレているのなら、彼女も組織に消されるわよ」
「わーってるよ…。ほら着いたぜ?じゃあな!」
「…わかってないみたいだから言うんじゃない」


灰原のため息交じりの言葉を背に探偵事務所に急ぐ。
…気づいて、いない、とは、思うが、過信はできない。
もし仮にあおいが組織の人間に狙われでもしてみろ。
あんな運動神経切れてる女、逃げることも出来ずに5分で存在が消されるだろ。
そうならないように、今までだって隠してきたんだ。


−野良猫のままにしておくつもりなら、遠慮なく俺の宝石箱に入れさせてもらうぜ?−


…別に野良猫になんかしてねーっての!
蘭のこと、考えるとはっきりさせた方がいいのかと思った。
けど、はっきりさせて、…思いが通じたら、なんで会えない?ってなるだろうが。
今以上に、会いたい思いが強くなるだろうが。


「なのに言えっかよ…」
「あーん?なんか言ったかぁ?」
「オジサン、いい加減お酒やめないとまた蘭姉ちゃんに怒られるよ」


酔っ払って絡んでくるオッチャンをあしらって、眠りについた。
…わりには、寝てても考えてんのか、寝た気が全くしねぇんだけどな。


「今日博士が米花デパートに買い物に行くらしいわよ」
「えー!歩美も行きたい!」
「よし!博士に連れて行ってもらおうぜ!」


俺の悩みなんか知る由もなく、今日は探偵団で米花デパートなんだとか。
こんな時にまぁたかくれんぼとか言われても困るし、ちょうど良かったんだけどな。


「あー!あおいお姉さんだ!蘭お姉さんも園子お姉さんもいる!」
「歩美ちゃん…、みんなもどうしたの?」


米花デパートに行って、博士の用事を済ませ少し店を見て回ろうか、ってなった時、歩美ちゃんがあおいたちを発見した。


「博士が買い物があるって言うんでみんなでついてきたんです!」
「あー!博士、ちょうど良かった!実は来週末に、」


博士を見るや園子がクルージングの旅への招待をしてきた。
嫌な予感がしたが、元太たちはすでに自分たちも行ける気で目がきらっきらしてる…。


「どう?博士も一緒に」
「そうじゃのー、来週末と言ったら…、なぁんも予定入っとらんし、招待してもらおうかの?」
「「「やったー!!!」」」


というわけで、来週末はみんなでクルージングになったようだ。


「それでお姉さんたちは何を買いに来たの?」
「あぁ、うん。その客船のレストランで着る服をね」
「これじゃダメなのか?」


…オメーいくらなんでもそれじゃダメだろ。


「あったり前でしょー!あんたねぇ、そんな泥だらけの服でレストラン行こうものなら1人だけつまみ出されるんだからね!」
「えっ!?食えねぇのか!?」
「あんただけね!」


明らかにショックを受けてる元太。
鈴木財閥に招待券を送る客船のレストランだ。
ま、当然だな。
チラッとあおいを見ると、服を持って苦笑いしてた。


「あおい姉ちゃんは?」
「うん?」
「服、決まったの?」
「あ、ううん。それがこっちとこっちで迷ってて…」


そう言ってあおいが手に持っていた2着を見せてくれた。
…でもどうせならコレ系より…。


「コ、コナンくんは、」
「うん?」
「ど、どっちの方がいいと思う?」
「…て、ゆうより、」
「うん?」
「あおい姉ちゃんはこういうのより、こっちに飾ってある奴の方が良いと思うよ」
「え…?…や!私童顔だしチビだからそういうのは合わな」
「そんなことないと思うけど着てみたら?」
「…えっ!?」
「店員さーん、すみませーん」
「ち、ちょっとコナンくん!」
「はい?どうしたのかな?」
「あのお姉さんがあそこに飾られてる服の試着したいって言ってるんですけど」
「あぁ、はい。…ではこちらにどうぞ」
「えっ!?」
「じゃああおい姉ちゃん、いってらっしゃい」


え!?え!?って顔して試着室に入っていったあおい。
そりゃー童顔だし?
あぁいう可愛い系は普通に似合うと思う。
でも俺が選んだ服は確かに大人っぽい感じだけど、あおいの黒髪によく映えると思うんだけどな。


「あおい着れたー?」
「う、うん…」
「開けるよ?」
「あ!ちょ、待っ」


シャッ!と蘭が開けたカーテンから試着を済ませたあおいが出てきた。

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bkm

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