キミのおこした奇跡side S


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紺碧の棺


真相、そして


「しかし奴らどうして人質なんかを取ったんだ!?宝を探すには足手まといにしかならないだろ!?」
「使い道があるんだよ!」


海は、昨夜美馬さんが言っていたように時化で荒れていた。
そのため自然と声が大きくなる。


「使い道?」
「奴ら昨夜、ライフルで撃たれて怪我をしてるんだ!奴らがこれから潜ろうとしてる場所は昨日サメで襲われた場所!」
「おとりに使うつもりなのか!?」
「恐らくね!」


空手が出来る蘭はともかく、おとりとして使うなら、奴らにとって小柄で連れまわしやすく、非力なあおいは絶好の人質。
…んなことさせるかっ!!


「あそこー!!」


荒れる波間に、ボートが見えた。
美馬さんに船を近づけてもらいボートを見ると、


「!?」


船底には血痕。
やっぱり…!!


「もうあまり時間が!」
「頼親島に行って!」
「何!?」
「僕なら女神の入り口から入れるんじゃない?」
「…」


俺の言葉に少し躊躇いを見せたが、美馬さんが船を再び動かし、島に近づけてくれた。


「そこを少し上がっていくと小さな祠があり、2体の女神像が祀ってある。入り口はその裏だ!」
「わかった!」
「30分が限界だ。戻れなくなるからな!」
「うん!ありがとう!必ずあおい姉ちゃん、蘭姉ちゃんを連れて帰るから!」


それだけ告げて美馬さんに教えられた通りの道を走り出す。
するとすぐに祠と2体の女神像が見えた。


「アン・ボニーとメアリ・リードか…」


祠の裏に回って宝の在り処への入り口へと行くが…。
変だな。
大人でも通れそうだけど…。


−先週の地震で土砂が崩れて道が塞がっちゃったんだよ−


そう、か…。
地震でまた穴が広がったんだ…。
そのまま腕時計型ライトの明かりを頼りに中に進んで行く。
しばらくすると、下から風が吹き込んでいるのを感じた。
…繋がってるぞ!
そのまま勢いよく通路を降りて行くと、


「おい!話が違うぞ!!宝の山があるって言うからこんなところまで来たんだ!!」
「ウルセェ!黙ってろ!!」


ビンゴ!
トレジャーハンターの怒鳴り声がこだました。
気づかれないように近くまで行くと、


「悪いな。これがお前たちの運命って奴だ」
「…あおい!後ろは任せたわよ!」
「蘭も気をつけて!!…やーーーっ!!!」


あおいと蘭が男に立ち向かっている最中だった。
いつでも蹴り出せるようにキック力増強シューズを用意する。
…出来れば一発で2人をやれるような体勢まで待ちたいんだが…。


「コイツ強ぇ!!」
「…確かに、強い。だがそこまでだ。切り札は最後に、って奴だ」


そう言って男2人が並んで立った。
今だ!!


「2人とも伏せて!!」


い、っけーーーー!!!


「「う、うわぁぁ!!?」」


男2人の顔面に見事に命中。
これでとりあえず一安心、だな。


「大丈夫?あおい姉ちゃん、蘭姉ちゃん」
「…コナンくん、よくここがわかったね!」
「うん。頼親島と繋がってたんだ」
「頼親島と?」
「そう」


俺に話しかける蘭に答えながら、隣にいるあおいを見る。
…コイツ…。


「あおい姉ちゃん顔色良くないみたいだけど…、大丈夫?」
「あおい?…大変!血が止まったと思ってたけど、傷口がまた開いたのね!?」
「…だ、大丈夫、大丈夫。ちょっと痛いなぁ、くらいだから、」


そう言うもののあおいが抑える手の隙間からは血が見え隠れしていて。
…マズイな。
大きさ的には大したことなさそうだが、今もまだこうして出血が止まらないなら、そんなに浅い傷じゃないはずだ…。
早く医者に診せねぇと…。
だがその前に、だ。


「ほんとだったんだ、海賊の宝って」


洞窟内に眠っていた帆船を見上げる。


「ううん、宝はなかった、って。先に来た奴らに全部持っていかれたって言ってたよ?」
「ふぅん…。だってさ!残念だったね?」
「え?」
「もう出てきてもいいんじゃない?僕の後をこっそりつけてきたんでしょ?岩永さん」


俺のその声にゆっくりと姿を現した岩永さん。
…手にはライフル銃、か。


「や、やだなぁ!こっそりだなんて人聞きの悪い!僕はただ攫われた2人を助けようと、」
「なんでライフルなんて持ってきたの?」
「それは国際指名手配犯だって言うし」
「そのライフル、盗まれた峰尾さんのじゃない?」
「え、…や、いや、違う!」
「宝を横取りされないように持ってきたんじゃないの?」
「た、宝は関係ないって!」
「…岩永さん。僕たちに配った宝探しマップの暗号。自分で作った、って言ってたよね?」
「あ、あぁ…」
「でもあの暗号の数字と同じものを美馬さんの家で見たんだ。…アン・ボニーが残した、って言う300年前の宝の地図でね。…てことは岩永さんはその地図を見たことあるってことじゃない?つまり、自分が解けなかった地図の謎をこの島に遊びに来た人に解いてもらおうとしたんだよね?」
「…そう言えばお父さんにも宝探しゲームに参加するように薦めてた…」
「宝探しに参加した人たちの動きを確認するため、貸し出した自転車にGPS装置をつけておいたでしょ?」
「そ、それは、参加者に危険がないように…」
「宝探しマップの数字をアルファベットに置き換えるとJORRY ROGER。つまり海賊旗のこと。この頼親島が髑髏のような形に見えたから、アン・ボニーはそんなヒントを残したんだ。たぶん、頼親島の『よりおや』もジョリー・ロジャーが訛ったものなんじゃないかな?…ここまでは岩永さんも解けてたと思うけど、ジョリー・ロジャーにはもう1つ意味があったんだ」
「何!?」
「本物の地図には海賊旗、ジョリー・ロジャーが描きこまれてたでしょ?その髑髏の歯に第2のヒントが隠されてたんだよ。DOS DIOSAS…2人の女神、って言うヒントがね!…さっき僕の後をつけてきた時にあったでしょ?2人の女神の小さな祠が。あれが入り口を示してたんだよ」
「そ、そうか…!なんでそんなことが…!くっそぉ、最初からミスってたのか、俺は…!!」
「BCジャケットに細工したのも、ライフルでトレジャー・ハンターたちを狙撃したのも、岩永さんだよね?ダイビングショップの裏手にも、ライフルの薬莢が落ちていた場所にもあんたのマウンテンバイクのタイヤの後が残っていた」
「確かに小学生にもわかるミスばかりだな」
「小学生じゃないさ」
「え?」
「小五郎のオジサンだよ。今のはみんなオジサンに聞いたこと。オジサン言ってたよ?岩永さんの体から火薬のにおいがした、って。たぶん、古いライフルだから撃った時に火薬の燃えカスがたくさん飛び散ったんじゃないか、って」
「…さすが名探偵の毛利小五郎、だな…」


…ま、あのオッチャンが飲んだくれて自転車であんたを観光館まで連れてこなきゃ気づかなかったから「さすが」迷探偵、ってのはあながち間違いじゃない。
膝をつき、自嘲気味に言う岩永さんの言葉の直後、大きな地響きがこだました。

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bkm

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