キミのおこした奇跡side S


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紺碧の棺


トレジャーハンター


「拡大してみよう」


翌日、時化がくると言われたわりに快晴。
いや…、風が強いからこれから時化るのかもしれない。
昨日撮った写真を博士のノートブックに落として見直してみた。


「トレッドパターンが全然違う。やっぱりこの自転車じゃねぇな…」
「コナンくーん?」
「やべっ、ん…?」
「コナンくーん、ご飯だよー?」
「はーい!すぐ行くよ!」
「…どうした?」
「GPSだ」
「GPSじゃと?何で自転車に?」


これは…。


「遅ぇぞ、コナン!腹減り過ぎちゃったぜ!」
「悪ぃ、悪ぃ。…あれ?オジサンは?」
「うん、朝から捜査会議だって役場に行ってるよ」
「ふぅん…」
「…じゃあみんな揃ったから、」
「いっただっきまーす!!」


それぞれが目の前のご飯を食べ始める。
…あのGPSは…。


「な、なぁ、つり橋に行った時、岩永さんに会わなかったか?」
「岩永さん?…あぁ、観光課長さんの!」
「あぁ」
「ううん、会わないよ。ねぇ?」
「はい」
「あそこは俺たちが自分で探したんだぜ!」
「…そうか…」


じゃあ、やはり…。


「食事は足りているか?」
「えぇ、大丈夫です。ありがとうございます」
「うん。…ところで今日も潜るつもりかね?」
「いいえ。昨日あんなことがあったからやっぱり怖くて…」
「でも明日は時間ないだろうから、今日はボートに乗ろうって思ってます」
「午後からは海に出ない方がいい。大荒れになるだろう」
「やっぱりそうですか…」
「じゃあ私たちも急いで宝探ししなくちゃ!」
「そうですね。あと1つ解けばいいんですから!」
「頑張ろうね!コナンくん!」
「あ…。俺、ちょっと行くところがあるから…、みんなで探しといて」
「…ね、ねぇ、コナンくん?」
「うん?」
「1人でいろんなことするのも良いことだと思うけど、みんなと一緒に動することも大事なことだよ?」
「え?」


あおいが突然何を言うのかと思った瞬間に灰原が、


「大丈夫よ」
「え?」
「団体行動の出来ない人は放って置いて、私たちだけでお宝を山分けするから」


と言った。
まぁ…、上手く誤魔化し…たのか?アイツ…。
その後食事を済ませ、みんなと別行動をとる。
GPSの有無を確認するために…。


「やっぱりどの自転車にもついてねぇか…」


となると、アレは俺たちの自転車にだけ…。


「課長!低気圧の最新情報!!」
「う〜ん…、参ったなぁ、ちょっとした台風だよ。とにかく、漁協とホテルには連絡してください。…参ったなぁ」


台風並みの低気圧…。
ん?あれは上平さん…。
そうか、捜査会議は役場でだったな。


「少なくとも1人はライフルで撃たれてるはずですから、その治療も必要でしょうね」
「診療所に確認しましたが、まだ現れていません」
「ダイビングショップの馬渕ですが、昨夜コナンくんが目撃したのは逃走用の船の手配を頼まれていたところのようです」
「…なるほど」
「高木君が回収したこの薬莢ですが、かなり古いものですから、長いこと保管してあったんでしょうね」
「うん。ライフルについては今、猟友会に確認してもらってる」


トントン


「どうぞ」
「失礼します。今連絡がありまして、猟友会の峰尾さんの猟銃がなくなっているそうです」
「そうですか」
「その峰尾さんというのは?」
「はい。1人住まいのご老人でして、ダイビングショップを経営している馬渕千夏さんが面倒を見ているようです」
「…すぐに峰尾さんの話を聞いてきてください。それから馬渕さんには任意同行を」
「わかりました!」
「…盗まれたカットラスとピストルを取り戻してください!お願いします!」
「全力を尽くします」
「でも…。私たちがここにいるのにどうして今盗みに入ったのかしら?」
「そうですね…。普段なら上平さん1人だけ。島を抜け出すのも簡単だったのに…」
「恐らくもたもたして正体が発覚するのを恐れたんだろう」
「あのぅ…、東京からの応援は?」
「低気圧の影響で、船もヘリも出せないそうです。…我々だけでやるしかない。松本たちを探し出すことも、彼らの命を狙っている犯人を見つけ出すこも、だ」


俺たちだけで、ね…。
そのまま宿に戻り、蒔き割りをしている美馬さんに声をかけた。


「あのハンターたち、どうして観光館からカットラスとピストルなんかを盗み出したのかなぁ?」
「…」
「トレジャーハンターだったら、目的は宝探しのはずでしょ?なのにあんなものを盗み出した、ってことは、それが宝を見つけるのに必要なものだったんじゃない?だからあの人たち、もう宝の隠し場所に向かってると思うんだ。オジサン、どこだか知らない?」
「…どうしてソレをワシなんかに聞くんだね?」
「もしかしてオジサン…、トレジャーハンターだったんじゃない?」


その言葉に、美馬さんは1度ゆっくり瞼を下ろした。


「仮にワシが昔トレジャーハンターだったとしても、宝の在り処を知っているとは、限らないのじゃないかね?」
「昨日オジサン言ってたじゃない。『狙い通りの獲物とは限らない』…てことは、隠されているものが何か知っている、ってことだよね?」
「……来なさい」


そう言って宿の中に入っていく美馬さんの後に続いた。

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bkm

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