キミのおこした奇跡side S


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紺碧の棺


狙われた宝


「トレジャーハンターといえば、本当に宝はあるんですかな?」
「ふん!ハイエナは獲物のないところには集まらんよ!狙い通りの獲物とは限らんがな」


夕飯も終わり、あおいと蘭が片付けをしてる時(なんでも飛び込みで泊めさせてもらってるんだからこれくらいするんだと)、博士と美馬さんが縁側で晩酌をしていた。
…獲物のないところには集まらない、か。


「わかんねーよ!『海賊は泣かない』なんてよ!」


その時明日の宝探しへの推理をしていた元太が、投げやりにそう言った。


「もっとマジメに考えてくださいよ、元太くん!」
「おい、ボウズ!『海賊は泣かない』がヒントなのか?」


突然美馬さんが俺たちの話に加わってきた。


「えぇ。そうですけど…」
「海賊は鳴く、なら知ってるけどな」
「海賊は鳴く、ですか…?」
「なんかヒントになるかもしれねぇな」
「今から行ってみるか?」
「え?みんな今から出かけるの!?」


片付けが終わってこっちに来たあおいが声をあげた。


「もう外は遅いですよ。明日にした方が…」
「明日の天気はわからないぞ」
「わ、悪くなるってことですか?」
「南風が舞うように吹くとワシらは漁に出ない。大時化になるからな」
「生活の知恵って奴ですね!」
「…じゃあみんなで行こっか!食後の散歩も兼ねて!」
「「「おー!」」」


…つくづく、あおいはコイツらの扱いが上手いと思った。
その後みんなで夜道を歩き砂浜まで来る。


「ねぇ!『海賊は泣かない』って答えがここなの?」
「答えかどうかはわからんが、泣くのはここだ」


泣く…。


「この風、泣いてるように聞こえるよ」
「ほんとだ」
「泣かない、だから、この風が聞こえないところ、とか?」
「え!?聞こえない場所なんてあるの!?」
「あおいさん、それってどこですか!?」
「た、例えばの話だって…!」


聞こえない、場所…。


「…この砂、だいぶ石英が入ってるわね」
「え?」
「粒が細かいし」


もしかして…!
そう思い砂浜を見渡す。


「なるほど!」
「…お、おいおいコナン?」
「何かわかったんですか!?」
「よく聞いてろよ!」


砂を踏むときゅっきゅっ、と音がする。


「鳴き砂ですね!…そうか、だから『海賊は鳴く』なんですね!」
「…後は自分たちで考えろ」
「わかってるよ!」


さて、と…。
「海賊は泣かない」だから、ん?あれか!


「来いよ!こっちは鳴かないぜ!」
「だから『海賊は泣かない』なんですね!」


その時フと目に入った廃船。
…いかにも、って感じだな。
案の定、その船の中にポイントはあった。


「次は『海賊の魂は天に昇る』ですか…」
「またわけわかんねぇなぁ!」
「…しかしよく考えるなぁ、あの観光課長!」
「え?」
「観光課長の岩永さんさ!彼が自分で考えた、って言ってただろ?この暗号」
「あぁ。だってそれが仕事なんでしょう?」
「…はっ、感動のねぇ奴…」


ん!?
視線の先は、ダイビングショップ。
メガネの望遠で照準を合わせると、昼間のトレジャーハンターと、ショップのオーナー。
…おもしろくなってきやがった!


「コナンくん?」
「悪いけど、僕寄るところができたから先に帰ってて!」
「ち、ちょっとコナンくん!?」


ダイビングショップまで駆けて行く。
…明かりのついている店には誰もいない。
裏口へ回ろうとした時、1台の車が出てきた。
…アレは昼間のトレジャーハンターだ。
どこに行く気だ…?


「何してるの?」
「!?…あ、散歩してたら道がわかんなくなっちゃって…。神海荘、どっち?」


車を追っていたら、ダイビングショップのオーナー、千夏さんが背後から現れた。


「あっちよ」
「ありがとー!おやすみなさい!」


そしてそのまま先ほどの車が行ったと思われる方向に走り出すと、どこかから非常ベルの音が聞こえてきた。
…とりあえずこの音を辿るか。
そう思い駆けているとビンゴ!
トレジャーハンターのものと思われる車と、土手を滑り降りてくる男2人。


「!?」


その2人のうち1人は土手の上から狙撃された。


「早く乗れ!」


車が走り出す直前にもう1発。
俺に気づくことなく去っていった奴らを見送り、狙撃手がいたと思われてる方へ行く。
だが俺が土手を登りきった時には既に狙撃手はおらず、あったのは先ほど使ったと思われる散弾銃の弾が2発。
そして、自転車が通ったような跡だけだった。
一応ここを写真に撮って、


−彼女でもない女の寝顔待ち受けにするのやめなさい−


「…一言余計だっての」


アイツは今後俺の彼女にだなぁ、


−このまま1人にさせておくつもりなら、遠慮なく俺の宝石箱に入れさせてもらうぜ?−


…ちっ!
また余計なこと思い出しちまったじゃねぇか!


パシャ


現場写真として、1枚、ケータイに納め「事件」のあったと思われる場所へと急いだ。


「展示ケースをバールで叩き割ったか…。大胆だな…」


先ほど遠くからでも聞こえた非常ベルは、観光館に飾ってあったアン・ボニーとメアリ・リードの所持品が盗まれたことによるものだった。
犯人は恐らくさっきの…。


「カ、カットラスとピストルが…!!」


その時オッチャンと岩永さんが現場に入ってきた。


「価値があるものですか?」
「海底宮殿から出た宝なんです。アン・ボニーのカットラスとメアリ・リードのピストルなんですから!」
「このあたしがきたからにはぁ、もうしんぱいありませぇん!!」


…このオヤジまぁた飲んでたな…。


「毛利小五郎ーー!逮捕する!!無銭飲食、自転車窃盗!飲酒運転の現行犯だーー!!!」


おいおい…。


「そりゃ本当かね!?」
「えぇ。居酒屋で飲み逃げしたあげく、岩永さんの自転車を奪って逃げたと居酒屋の女将が」


その後懸命に弁明してるオッチャンの姿がまた情けなかった…。


「そうそう!警部殿!指紋照合の結果が届きました!」
「…お、おい!これは本当か!?」
「…松本光次。世界各地の遺跡、博物館より美術品、出土品等の強盗並びに殺人。…大物ですね」
「アイツら、国際指名手配犯だったのか…」


それでここを狙ったのか。
だが…。


「やっぱり狙ってるんだ!アンとメアリの宝を!」
「狙ってるって?宝は盗まれたピストルとカットラスだけではないんですか?」
「あ、あぁ、はい。アン・ボニーとメアリ・リードは女海賊だったんですが、300年前に活躍していた彼女達がこの神海島に宝を隠したと言う伝説があるんです」
「コイツらの宝が本当に?」
「えぇ…。盗まれたピストルとカットラスが証拠です」


…あれ?
この臭い…


「ねぇオジサン。美人女将のお店にいたんじゃなかったの?」
「バカ野郎!美人女将の店じゃねぇ!タダのオバちゃんの店だ!」


そう言って俺に詰め寄ってきたオッチャン。
…やっぱりだ。
やっぱりこの臭い…ん?


「オジサン、なんかついてるよ?」
「あ?」


…なるほどな…。


「この島から出る方法は?」
「定期船は午後に一便だけですので、漁船くらいしかありません」
「よし。漁船も奪われないように注意を呼びかけてください」
「わ、わかりました!」
「…ねぇ、目暮警部。その松本、って人がね、ダイビングショップのオーナーの馬渕さんになんかお金みたいなの渡してたよ?」
「なに!?」
「目暮警部!ただいま戻りました」
「ご苦労!早速ですまんがダイビングショップのオーナーに松本が接触したらしい。2人はダイビングショップへ向かってくれ。我々は松本のホテルへ向かう」


そして俺はオッチャンと共に宿に戻り、慌しい夜に幕を下ろした。

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bkm

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