キミのおこした奇跡side S


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紺碧の棺


待ち受け


「ねぇお姉さん」


店内に入るとこの店のオーナーがいた。


「夜はこのお店に誰かいるの?」
「あら、探偵ごっこ?」
「えへへー」
「私は家が裏にあるし、喜美子は港の近くのアパートに住んでるから夜は誰もいないわね」
「そう…」
「それにこの島には泥棒なんていないから普段は鍵を掛けたりしないのよ」


島内にはいなくても島外から来るかもしれねぇってのは、考えにないんだな…。


「あ!喜美子!あなたが店閉めたのよね?」
「え?えぇ。でもどうしてですか?」
「この小さな探偵くんがいろいろ聞いてくるからさ」
「え、えへへー」


ガキになって覚えたこと。
困った時は笑って誤魔化せ。


「なーるほど!例のBCに誰が細工したか調べてるのね!」
「うん!」
「確かに昨夜は店を閉めたのは私だし、朝開けたのも私だけど鍵はいつも閉めないから誰でも忍び込んで細工できるわ」


誰でも犯行は可能、か…。
そうなってくると厄介だな…。


「どう?なにか手がかりありそう?」
「いやぁ?今のところはまだ何も…」


宿に戻って、灰原が撮った写真を博士のパソコンで解析をするものの、今のところ何も掴めないでいた。


「1つ良いかしら?」
「あん?なんかわかったのか?」
「…あなた、彼女でもない女の寝顔待ち受けにするの止めなさいよ」
「み、見たのかっ!?」
「あのねぇ…、写真撮るためにケータイ開くから嫌でも目に入るでしょ」


そりゃまぁ…、確かにそうだが…。


「べ、別にいいじゃねーか、俺が何待ち受けにしても」
「あなたねぇ、それが『工藤新一』のケータイならまだしも『江戸川コナン』のケータイで女子高生の寝顔待ち受けにしてるところ見られたらなんて言うつもりなの?起きてる姿ならまだしも、寝顔だなんて近所のお姉さんに対する憧れ超えてるわよ」
「…」
「どうせケータイ開くたびにソレ見てニヤニヤしてるんでしょうけど」
「別にニヤニヤなんかしてねぇだろ!」
「もう少し考えて行動してちょうだい」


今の俺の待ち受けは、以前服部に呼ばれてオッチャンと3人で大阪に行った道中、新幹線の中で寝ていたあおいの寝顔。
後であおい姉ちゃん口開けて寝てたよ、なんて言ってやろうかと思って撮ったけど、撮れた写真見たら無防備に寝やがって、とか。
幸せそうなツラしてんなぁ、とか。
思ってたらついうっかり待ち受けにしちまって(保護済み)
別にそれ見るたびににやけてたわけじゃ断じてないけど!
でもまぁ…、少しは、口元緩んでたかもしれねぇけど…。


ピー ピー ピー


その時、探偵団バッチが鳴った。


「どうしたー?」
「どうしたじゃねぇよ!何やってんだよ、コナン!お前が来ないと海賊のお宝見つからねぇだろ!」
「たまには自分たちで解いてみろよ!」
「私たちだけじゃ無理だよ!」
「今どこにいるんだよ?」
「つり橋に向かってるところです!」
「つり橋ぃ?」
「宝探しマップに書いてあるよ!」
「宝探しマップね。…おー、あったあった」
「じゃあ早く来いよ!」
「へいへい」


ったく、しょうがねーなぁ…。


「おい、灰原!行くか?」
「私はパス」
「ははっ…、やっぱりな…」


とりあえず写真を博士のパソコンに入れて、俺はつり橋に向かった。
ん、だが、


「おいおい道がねぇじゃねーか…」


通行禁止と書かれた看板と共に道が塞がれていた。
…ったく、どー行けば、


「あれ?キミ1人かい?」


俺が別のルートを探そうとしたら、岩永さんが通りかかった。


「みんななら上のつり橋にいると思うよ」
「そこに行きたいんだけど、道が通行禁止になっちゃってて」
「あぁ、ごめんごめん。先週の地震で土砂が崩れて道が塞がっちゃったんだよ。もう少し先に左に曲がる道があるから、そっちから回ってくれる?」
「うん。ありがと、岩永さん」
「じゃ、気をつけてね!」
「はーい!」


その言葉で岩永さんと別れて、つり橋に向かうべく自転車を走らせる。
…ま、良い運動になるし、な。
海風が心地よく、サイクリングには最適だ。
そうこうしているうちにつり橋に着くものの、…あれは元太か?中央で蹲って何してんだ?


「おーい!オメーら!何やってんだ!?」


つり橋の手前で俺が叫ぶと、


「コナンくーん!見つけたよー!」


と、つり橋の中央にいる元太を挟んで歩美と光彦が返事をした。


「すげーなー!やるじゃーん!」
「次のヒントは『海賊は泣かない』ですー!でもこの橋、40キロ以上の人が通ると落っこちゃうみたいでー!」
「そう書いてあったのかー!?」
「いいえー!40キロ以上の人の通行を禁ずるって書いてあってー!」


なるほど。
だから「痩せた海賊は笑う」ってわけね。


「じゃあ大丈夫ー!渡って来いよー!その看板はタダのヒント!40キロ以下の人なんて、子供か女の人くらいだ!その人たちだけにしか解けない暗号なんて、あり得ねぇからな!」


俺のその言葉に納得して、歩美、光彦がつり橋を歩き始め、2人に手を引かれるように元太が歩いて来た。


「な?言ったとおりだろ?」
「俺もうあそこで一生過ごさねぇとなのかと思ったぜ」


あそこであのまま過ごすなら、川に落ちて泳いで陸地に戻る手段を選べよ元太…。


「今日はもう4時ですし、続きは明日にしようかと思うんです」
「そうだな。じゃあ宿に戻ろうぜ」


そう言って4人で宿に戻ってきた。


「おかえり、みんな」
「あおいお姉さん、ダイビング楽しかった?」
「え!?う、うん…」
「歩美もいつかダイビングしたいなー!」


あおいと蘭も宿に戻っていて。
あおいは歩美ちゃんの問いに対し、返答に困っているようだった。
…まぁ、当然と言えば当然だがな。
その後夕飯となり、みんなで食卓を囲む。
さっすが島の宿。
海の幸が盛りだくさんで、マジで刺身がうめぇ!!


「じゃあ明日も宝探しするんだ?」
「そうだよ!お姉さんたちは?」
「私たちは、ねぇ?」
「うーん…、今日のことがあるし、ね。あおいはどうしたい?」
「うーん…、またダイビングはしてみたい、とは思うけど、」


あおいが進んでスポーツを選ぶなんて。
よほど良かったのか、初ダイビング。


「あ!あおいケータイで写真撮ってたよね?」
「うん!蘭はデジカメで撮ってたでしょ?」
「そうそう!みんな見る?」
「みたいみたい!…うわぁ!お姉さん人魚さんみたい!」


そう興奮するのは歩美ちゃん。
歩美ちゃんは発想が、なんて言うかストレートで微笑ましい。
「人魚みたい」と例えた1枚は、あおいが魚に囲まれてるところを写した1枚だった。
その写真を見ていたら、灰原がじーーーっとこっちを見てきて、俺と目が合った途端、盛大にため息をついて刺身に箸をつけた。
…別ににやけてなんかいねーだろっ!!
そう叫びたいところをグッと押さえて、俺も箸を進めた。

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