キミのおこした奇跡side S


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紺碧の棺


30万の使い道


日売新聞に週1で掲載されているパズルになんとなく挑戦してみたら、意外と簡単な問題で。
なんだ解けるじゃねーか、って呟いたらそれをオッチャンが聞いていて。
賞金繰越で30万もらえんだからほんとに解けたんなら応募しねーとだろ!?的に言われて、オッチャンに解き方を教えたら目の色変えてハガキを書いたのは、つい一月前のこと。
…まさかアレが当たるなんて思いもしなかったんだけど。


「コレで俺ぁ、パリにでも行って金髪のお姉ちゃんたちとっ!」
「お父さんっ!!確かに解いたのはお父さんかもしれないけど、コナンくんのヒントなかったら解けなかったでしょ!?1人で賞金使うなんて許さないんだから!!…コナンくんは?どう使いたい?」
「僕?僕はー…」


−あおいお姉さん、惜しかったね−
−でも銀賞なんて凄いですよ!−
−何かお祝いのプレゼント、してあげたいなぁ…!−


夏休みも終わる直前。
吹奏楽部のコンクール出場要員に借り出されていたあおい。
帝丹高校は惜しくも銀賞と言う結果に終わったが、短期間の練習だったにも関わらず結果を残したあおい。


「僕さぁ、みんなで旅行したいな!」
「え?」
「あおい姉ちゃんや園子姉ちゃん。探偵団のみんなも誘って旅行!30万もあれば出来るよね?…ダメ?」


頑張ったあおいに、お祝いを。
…本音は「工藤新一」の姿で、2人きりで祝いたい、なんて言えねぇけど。
「俺」が側で祝えないなら、みんなで、祝ってやればいい。


「冗談じゃねぇ!なんだって俺が当てた30万でガキの面倒を」
「そう言えば元太の家酒屋さんで、いつもお世話になってるオジサンにお酒でも贈ろうかって言ってたなぁ…」
「何!?」
「ここで元太を旅行にでも連れて行ったら、普段はなかなか買えないお酒、飲めるかもしれないね?」
「ちょっとコナンくん!そんな賄賂みたいなこ」
「よし、蘭っ!!ガキどもに連絡しろ!!お前ら全員この名探偵・毛利小五郎が南の島にご招待してやるってなっ!!!」
「…」


乗せやすい性格で助かるぜ。
そんなわけでオッチャン招待の元、神海島に行くことに決まった。
なんでそこだったかなんて愚問。
水着の姉ちゃんが見てぇんだと…。
ほんっと、このオヤジは…。


「おはようございます。ご予約のお名前を」
「毛利小五郎です。名探偵の。大人2人、学生2人、子供5人」


当初のメンバーに入ってた園子が、なんでも鈴木家のパーティに出席しなければいけないとかで不参加になった。
財閥令嬢も大変だ。


「で?部屋番号は?」
「申し訳ありません。それが、予約を承っていないようなんですが…」
「マジ!?」


おいおい…。


「ちょっと待て!俺はちゃんと予約したぞ!?」
「ですが予約リストにお名前がありませんので…」
「野宿するのか?俺たち…」
「この島亜熱帯ですから毒虫もいるでしょうし…」
「来なければ良かった…」
「ま、なんとかなるんじゃない?ここは言葉が通じない外国じゃないんだから」
「大人ですね、灰原さんて…」
「ま、子供じゃねーことは確かだな」


そう言った俺を灰原がジロッと見てきた。
まぁフロントが観光課に連絡してくれるって話だし、なんとかなんだろ。
そう思っていたら


「どうも!お待たせいたしました!毛利小五郎さんですね、名探偵の!」


登場とともにすっ転んだオッサンが近寄ってきた。


「いやーすみません。観光課の岩永です。今月に入って急に観光客が増えて嬉しい悲鳴を上げていたところなんです。ですが!なんとか皆さんの宿を確保しました。何しろ名探偵の毛利小五郎さんですからね!」


おい、オッチャンを調子づかせるようなこと言わないでくれ…。


「さぁどうぞ、ご案内します」


そう言った岩永さんにゴツイ体の男がぶつかる。


「なんなんだ?アイツら」
「トレジャーハンターじゃない?」
「トレジャーハンター?」
「水道工事の人か?」
「あ?」
「トイレでジャーとかってするんだろ?」
「…違いますよ元太くん。世界各地でお宝を探し回ってる人のことですよ」
「でも、どうしてわかったの?彼らがそうだって」
「あぁ。よく見てみろよ。あの人たちかなり日焼けしてたけど、手首から先と首から上以外は少し日焼けが薄いだろ?アレはいつもウェットスーツを着てるって証拠!それに髪の毛も海水で脱色してしまってる」
「でも、それだけだとタダのダイバーかも」
「確かにそうだけど、あんなポスター見せられちゃ、そう思ってもおかしくないだろ?」
「お宝ー!」
「あぁ。夢見てるんだろうぜ。海に眠る、財宝ってやつをな」


その後岩永さんに車に案内され、あおい、俺、蘭の順でシートに座った。
着くまでの間、蘭と談笑。


「え、じゃあ蘭姉ちゃんたちダイビングするの?」
「そうよー!ね?あおい!」
「…え!?」
「…やだ、聞いてなかった?」
「ご、ごめん、何?」
「あおいと2人でダイビングするってコナンくんに話してたところ」
「…えっ!!?」
「え、って、園子と3人で予約してたけど、来れないから2人ですることになったじゃない。…もしかして嫌?」
「い、いや嫌って言うか、そんなダイビングなんてダメだよ!」
「え?ダメって?」
「だ、だって泳げない人は酸素ボンベつけても溺れるんだよ!!」


…ヤベェ!
俺そういやコイツにそんなこと言った気がする…!!


「ボンベが重くて海に沈んじゃう!だからダイビングなんて」
「やだそれ誰に聞いたの?」
「え?」
「泳げない人も楽しめます、って宣伝してるよ?溺れたりなんてしないって!」


蘭がそう言いながらクスクス笑う。
やっべぇ、そう思った時、あおいと目が合った。


「あ、あれれー?僕間違えちゃったー!」
「やだ、コナンくんが教えたの?」
「う、うん。あおい姉ちゃんが溺れないか心配だったからぁ…」
「そうなんだ。でも大丈夫。ボンベつけてたら溺れないよ」
「そうなの?僕どこで間違えて覚えちゃったんだろう?あははー」


チラッとあおいを見たら、すっげぇ殴りたそうな顔しながら俺を見下ろしていた。
…俺今「新一」じゃなくて良かった。
そんなことを思う俺を乗せ、車は宿泊先へと向かった。

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bkm

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