キミのおこした奇跡side S


≫Clap ≫Top

歩美ちゃん誘拐事件


男の事情


「きゃあ!?」
「もう!なんなの!?」


犯人の車が急に右折したため大きく車体が揺れ、その反動であおいたちがどこかにぶつけたらしい。


「きゃああああああ!!!?」
「どうしたあおい姉ちゃん!!?」
「あおいお姉さ…き、きゃぁぁぁぁ!!!」
「歩美ちゃん!!?おい!返事しろ2人とも!!」


ヤロー!!
逃がしてたまるかっ!!
あと少し!って、ところで


「へ!?あ、ち、ちょっと、」
「どうしたんですか!?」


あと少しで追い付く!って時、スケボーがその速度を落としはじめた。
ま、まさかさっき公園でメンテしてた時に変なとこ弄ったとかか!?
まずい!
止まっちまう前になんとか奴らを…!
アレだ…!!
近くにいた人からホースを借りて結び目をつける。
隣を走行したトラックに掴まり、犯人の前に出る。


「車を止めろ!!止めねぇと、」
「あん!?」
「え?えぇぇ!!?」


嘘だろ!?
ここで右折すんなよ!!
空気読んで直進しろトラックッ!!
っていう俺の心の叫びなんて聞こえるわけなく、俺が捕まっていたトラックは直進する犯人の車とは別に右折した。
引き離される!そう思った時咄嗟にホースを犯人の車のサイドミラーにかけた。
それは犯人にあっさり取られたが、運良くアンテナにホースが引っかかった。
そのままホースに掴まりついて行く。
…つーかなんてゆう運転しやがるんだ!!
今さらガキの1人や2人殺しが増えてもなんとも思わねぇのかもしれねぇけど!!
手が痺れてホースが手からすり抜けそうになるのを必死に堪え、なんとかついていった。


−逢いたい、です−


…俺がここで離すわけには、行かねぇんだよ!!


「うおぉぉぉ!!歩美、歩美、歩美、歩美!!」


え、


「歩美ーーー!!!」


そう言いながら元太がホースを巻き上げはじめた。
直後、


キキーーッ


「「「う、うわぁぁ!!!」」」


ドーン!!


車が急ブレーキをかけたことで、俺たち3人が思い切り激突。
見事に吹き飛ばされ、軽く意識が飛びかけた…。


「ア、アイツらさっきの!!」
「構うな!さっさと運んじまおうぜ!」
「お、おぅ!」
「「…え?」」
「ん?な、なんだお前らは!!」
「「き、きゃああああああ!!!!」」


あおいのその叫び声で一気に引き戻される。


「な、なんなんだこのガキどもはっ!!」
「こ、この子には手を出さないでっ!!」
「いやーー!!!殺さないでー!!」
「なんだと!!?」


あおい…!
よしっ、とキック力増強シューズに手をやる。


「歩美たちを殺さないでっ!!」
「こら!騒ぐな!!」
「あおい!歩美!逃げろーー!」
「え?」
「くらえーーーっ!!!」


近くにいたバイクの兄ちゃんのメットを蹴り飛ばした。
それが見事犯人に当たり、1人撃退。


「あおい姉ちゃん!!」
「コ、ココココナンくーーーん!!」
「歩美!」
「歩美ちゃん!!」
「みんなー!!」


安心した顔の歩美ちゃんとは対照的に、顔面蒼白のあおい。


「く、くくくくく首!!女の子の首っ!!」


そうトランクを指差しながら叫んだ。


「さぁ、観念しろ!少女連続誘拐殺人犯!」
「さ、殺人犯?」
「とぼけたって無駄だ!」
「車の中のあなたたちの会話を聞きましたからね!」
「そうよそうよ!子供でも平気で殺すって歩美聞いたもの!!」
「それにトランクの中に女の子の首がっ…!!」
「言い逃れ、できねぇよな?」
「バカヤローーー!!!」


え?


「よく見ろ!!みんな作り物の小道具だっ!!」


良く見たら金は新聞紙をそれっぽい大きさに切ったもので、首も作り物だって一目でわかる代物だった…。


「車の会話は台詞合わせだ!!」
「せ、台詞合わせ?」
「俺たちはここで芝居するんだよ!!今日はその打ち合わせだっ!!!」


そ、そう言えば帝丹大学の学祭って、演劇に力入れてるんだったっけ…。


「第一、その殺人犯はさっき捕まったって、ラジオで言ってたぞ!」


え゛っ!!?


ピーポー ピーポー

その時、わざとらしいくらいのタイミングで真横を目暮警部と犯人らしき人物を乗せたパトカーが通りすぎて行った…。


「ったく!どうしてくれるんだよ!!コイツは伸びちまうし、小道具は壊れちまうし!!」


…しーらね。
その後はみんなでこっそりその場から逃走して、その男たちがどうなったかはわからない。
翌日、「新一」のケータイから「コナン」から事情を聞いた、とあおいに電話した。


「ま、オメーも災難だったな」


てゆうか、俺が災難だった。
オメーの言葉を真に受けて一般人を連続誘拐殺人犯だと信じて追跡したんだから(しかもスケボーはやっぱり故障した)


「工藤くん他人事!」
「これを機に、うちの母さんの長電話なんかにつきあってねぇで時間通り部活行くようにしろよ?」


あの長電話から逃れるのは至難の業だけど。


「でも、」
「あん?」
「ちょっと、意外だった」
「意外?意外って何が?」
「…コナンくん」
「へ?」
「あんな早とちりしちゃうなんて、思えないから…」


バーロォ、しゃーねぇだろ。


「あのなー、あおい。男には男の事情っつーもんがあるんだ!」
「ナニソレ」
「…余計な感情が入り乱れて正確に判断できねぇ時があるってことだよ!!」


オメーが殺される危険があるかもしれねぇってのに冷静でいれるわけ、ねぇだろ…!


「それ探偵としてダメじゃん」
「ダ、ダメってなんだよ!?だいたいオメーも高校生なんだからトランクに入っていいかどうかくらいわかんだろ!?」
「だ、だからあれは歩美ちゃんを止めようとしたらうっかり勢いで入った、っていうか、」
「うっかり勢いで!?おかしいだろ!?おかしいよな!?オメーいくつだよ!見た目だけじゃなく中身まで小学生に戻る気か!?」
「し、失礼だな!!この間園子と2人で渋谷行ったらナンパされたもん!ちょっと小さいかもしれないけど見た目は立派な高校生ですっ!!」
「はぁ!?ナンパ!!?どこのどいつに!!?」
「えっ!?し、知らないよ、ナンパする人がどこに住んでるかなんて、」
「そういうこと聞いてんじゃねーだろ!!?」


あぁ、コイツと話してるとどうしてこう、いつもいつも余計なことばかりに話しがいくんだ!
俺が聞きたいのは、そういうことじゃなくて。
そうじゃなくて。


「オメー、米花町にいるよな?」
「…なに急に?他にどこにいるの」


じゃあなんで、突然親戚に会いに行った?
何の話をした?
俺の前からいなくなったりしねぇよな?
喉まで出かかってる言葉は、声になることはなかった。

.

prev next


bkm

第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
×
- ナノ -