キミのおこした奇跡side S


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歩美ちゃん誘拐事件


誘拐事件のはじまり


新出先生からの薬のお陰で、風邪も無事治り夏休みも残すところ3日、って時。
あおいはなんでも吹奏楽部のコンクールに怪我して出れない子の変わりに出るとかで、忙しいらしい。
じゃあ俺は何してるかって言うと、


「完全犯罪というものは絶対にあり得ない。残念だがキミの犯行は明白だ。初歩的なミスを3つも犯している。1つ!くずかご外に不自然に散らばる空き缶!外に出ている量だけ何かが中に入っている証拠だ。2つ!キミがさっきまで食べていたアイスが側に落ちている。そう。キミは慌てて隠れた。だから食べかけを落としてしまったんだ。3つ!決定的な証拠は缶の隙間からキミの大きなお尻が見えていることだよ、元太くん!」
「あーー!!もう!!イチイチうるせぇんだよ、オメーはっ!!」


小学1年生らしく絶賛かくれんぼ中である。
んなことやってられっか!とも思ったが、ほぼ強制参加の少年探偵団のかくれんぼ=探偵ごっこをしていた。


「歩美ちゃん?元太も見つけちゃったよ?戻って来なー!」


ちなみに灰原は「私そこまで精神年齢低く出来ないからパス」だそうで。
もう少しくらい協調性ってものを身につけた方がいいと思う。


「えー!?もう!?つまんないよ!コナンくんが『鬼』じゃ、なかった!『探偵』だとすぐ終わっちゃうんだもん…!」


高校生の俺がつきあってやってんだからありがたく思ってほしいものだ。


「じゃあ今度は俺が探偵でお前らが犯人だ!」


まだやるのか、かくれんぼ…。
意気揚々と隠れ場所を探す光彦と歩美ちゃん。
やっぱり俺も灰原みてぇにパスしとけば良かった!
…こんなんばっかやってて、このままアホになったらどうしよう…。
そう思いながらベンチで新聞を読みながら居眠りをしているおじいさんのところに行く。
というか、新聞とおじいさんの間に座り身を隠す。
おじいさんが持っていた新聞には「連続美少女誘拐殺人事件」の記事が載っていた。
…4件目、か…。


「怖いよねぇ、この事件!」
「あ、歩美ちゃん!」


真後ろから声がしたと思ったら、まだ隠れていない歩美ちゃんが同じく記事を覗いてきた。


「狙われてるの可愛い女の子ばかりでしょ?私なんかちょーアブナイって感じよね?」


コイツ、園子と喋るようになって思考が園子に似てきたんじゃねぇか…?
苦笑いで返した俺を見た瞬間、歩美ちゃんがベンチの影に消えた。
え?


「コナン、見ーーーっけ!!!お前って見つけるのは上手いけど、隠れるのはヘタクソだな!」
「…はっはー!俺は逃げ隠れが嫌いなの!」
「…変だなぁ?歩美の声が聞こえたけど…?」


チラッとベンチ裏を見たら、歩美ちゃんが手で「ごめん」と謝り走り去っていくところだった。
…ま、歩美ちゃんが逃げたならいっか。


「光彦みーっけっ!」
「うわぁ!?…変ですねぇ、科学的には見つからないはずなのに…」


どこがだ、オイ。
って言う光彦と共に元太のところに行く。
後は歩美ちゃんだけだな。


「ったく、元太の奴。たかが女の子1人捜すのにいつまでかかってんだよ!」
「たかがじゃ、ありませんよ…」
「え?」
「あ、いえ…」


しっかし暇だなぁ。
スケボーの調子でも見てっかなぁ。


「…あのぅ、1つ聞いてもいいですか?」
「あー?」
「キ、キミは!キミは歩美ちゃんのことどう思ってるんですか!?」
「へっ!?」
「1人の女性としてどう思ってるかって聞いてるんですよっ!!」
「た、ただの友達だよ?」
「じゃあ灰原さんにはっ!?」
「と、友達友達」
「なーんだ!そうだったんですかー!」


おい、光彦。
オメー歩美ちゃんはいいが灰原は止めておけ。
返り討ちにあって骨も残んねぇぞ…。
なんて少し赤い顔で照れてる光彦を見遣った。


「じゃあもう1つ聞いていいですか?」
「あん?」
「コナンくんは…、あおいさんのことどう思ってるんですか?」
「…………えっ!!?」
「あおいさんですよ、あおいさん!まさか本当に好きなんですか?」
「えっ!!?…い、いや、俺はほら、なんて言うか、」
「園子さんの話によると、あおいさんには新一さんがいるんですよ!友人として言いますが、実らない恋は早く諦めた方がいいですよ」


余計なお世話だ…。


「一体、いつまでかかってんだ!」


俺と光彦の雑談の後ろでなにやら苛立っているような声が聞こえた。


「しつけーな!謝ってんだろ!?ぐずぐずしてるとヤバイぞ!!」


声のした方を見ると2人組みの男が慌しく車を出したところだった。
…なんだぁ?


「まだ歩美ちゃんが見つからない!?」


日もすっかり傾いた時、元太があっせだくになりながら戻ってきた。


「じゃあ降参して出てきてもらえよ!」
「バーロォ!!歩美にそんなカッコ悪いこと…い、言えるか、よ…」


コイツらが歩美ちゃんをアイドル的に見ているのは知ってたんだけど。
…ったく、最近のガキはませてて困るぜ。


「歩美ちゃん!聞こえるか?もう終わりにしよう!出てきていいぞ!」
「…変ですねぇ」
「先に帰っちまったのかなぁ?」


いや、そんなことは…。
…まさか歩美ちゃんの身に何かあったんじゃ!?
よし、ボリュームをあげて、


「歩美ちゃん!歩美ちゃん!」
「ん…、コナンくーん?」
「て、その声あおい姉ちゃん!?」


は!?なんであおいが!?
その時ゴン!と、バッチの向こうから凄い音が聞こえた。


「…ったぁぁ…」
「あおい姉ちゃん!?」
「あれー?あおいお姉さん?」
「歩美ちゃんも一緒か!?」
「その声コナンくん?どうしたの?」
「今どこだ!?どこにいる!?」
「えーっと、ここはー…どこだっけ?」
「なんか暗くて狭いとこだよ…。なんでお姉さんと一緒にこんなところにいるの…?」


ん?
…この音は!


「車か!」
「あ!そうだ!私、公園の前に止まっていた車のトランクに隠れたのよ!」
「そうそう!それをちょうど見つけて危ないよ、って止めようとしたら元太くんがやってくるのが見えたから歩美ちゃんに一緒に隠れて、って言われて」


だからってあおい、オメーまで入るなよ、他人の車のトランクにっ…!!
しかも公園の前って言ったらさっき走り去った2人組みの車か!


「あ?」
「あぁっ!!」
「「なにこれー!?」」
「どうしたっ!?」
「お、おおおおおおお金だよコナンくんっ!!それも紙袋の中に盛りだくさん!!」
「え?」
「100万円が100枚くらいあるよっ!」
「えっ!?」


い、1億の現金!?
そんな大金なんで紙袋なんかに…!


「ほ、他には!?なんかねぇか!?」
「んー、っとねぇ…。あ、あるよ!ポリ袋みたいなのが!」
「中身はうな重か!?」
「これ、のこぎりだよ!」


のこぎり?


「でも何これー!ぬるぬるしてる!」
「袋の中はのこぎりだけか?」
「もう1つ、紙で包んだ丸いものが…」
「えーっと、中身はねぇ、」
「待てっ!!開けるな歩美ちゃん!!」
「き、きゃーー!!!」
「どうし、ぎゃーーーー!!!!」
「く、首がっ!」
「女の子の首がっ…!!」


あおいと歩美ちゃんの怯えがバッチ越しからでも伝わった。

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bkm

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