キミのおこした奇跡side S


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世紀末の魔術師


決着


あんニャロォ!
手榴弾を爆発させやがった…!


「うわぁ!?」


爆発を避け、角を曲がったところで「何か」に躓いた。
ライトを当てると


「乾さん…!」


獲物のためなら無関係な人間の死をも厭わない。
んなヤロー野放しにできっかよっ!
くそっ!
スコーピオンを追って城内へと駆け上がっていく途中で何かの音が響き出した。
まさか…!?


「しまったっ…!!」


あんニャロォ、床を動かして地下から城内へ通じる道を封じやがった!
いや、これだけの仕掛けを作った人。
きっとどこかに中から開けるスイッチだって…!
…ん?
1ヶ所だけ形が違う!?
他のところと形の違う部分の壁を押すと、


ガタン


動いた!
後は奴を追いかけ…、ん?この臭い…。
スコーピオンを追って城内へと戻ったら、独特の臭い。
…この城ごと消し去るつもりか!?
まだこの近くに…いた!!
…このまま「俺」が出ても意味がない。
精神的に揺さぶりを掛け、弾数を減らす必要がある。
…なら、コレを使おうじゃねぇか!


「ちょっと待ったー!テメーだけ逃げようったって、そうは問屋が卸さねぇぜっ!!」


オッチャンの声にダイヤルを合わせた変声機で話始める。


「あんたの正体はわかっている。中国人のフリをしているが実はロシア人。そう…。怪僧ラスプーチンの末裔、青蘭さん」


次は白鳥刑事の声で。
その言葉に反応して、物陰から出てくる青蘭さん。
いや…、スコーピオン。
物陰から出てきた直後、俺のいる方へむけて発砲してきた。


「…フン!最初は気付かなかったよ!」
「その声は寒川!?」
「浦思青蘭の中国名、プース・チンランを並び変えると、ラスプーチンになるなんて事はな!!」
「お、お前は…、お前は私が殺した筈!!」


その時、俺がいる方とは間逆の方で倒れた鎧に向かって発砲。
…これで7発。
スコーピオンが鎧に気をとられてる隙に、反対側の柱へと移動する。
その俺に気づいたスコーピオンがもう1発撃ってきた。
…これで8発目っ!!


「ロマノフ王朝の財宝は、本来、皇帝一家と繋がりの深いラスプーチンの物になる筈だった。そう考えたアンタは先祖になり替わり、財宝の全てを手に入れようと考えた」


再び白鳥刑事の声を使ったが…、もう少し揺さぶりが必要だ。


「必要に右目を狙ったのも、惨殺された祖先の無念を晴らすためだろう?」
「…い、乾…」


前フリは十分、だな。


「そこか!?えっ、」


今まで聞こえていた声とは程遠い俺の姿に、スコーピオンは驚きを隠せないようだった。
その証拠に周囲を見回している。


「僕1人だよ?」
「何っ!?」
「これ、蝶ネクタイ型変声機って言ってね。色々な人の声が出せるんだ…」
「お、お前、一体…!?」
「江戸川コナン。…探偵さ」
「…っ!」
「寒川さんを殺害したのは、アンタの正体がばれそうになったからだ。寒川さんは人の部屋を訪問しては、ビデオカメラで撮っていたからね。とっさの事で、裏返すのを忘れた写真…。それは恋人なんかじゃ無く、グリゴリー・ラスプーチンの写真だった。…グリゴリーの英語の頭文字は“G”だが、ロシア語では“Г”だ。だから、喜市さんの部屋にあったゲー・ラスプーチンのサインを見ても、直ぐには繋がらなかった。寒川さんにラスプーチンの写真をビデオに撮られたと思ったアンタは、彼を殺害しに行った。…そうだろ?青蘭さん。いや、スコーピオン!!」
「ふ…。よく分かったねぇ、坊や…」
「乾さんを殺したのは、その銃にサイレンサーを付けている所でも見られたってとこかな?」
「おやおや、まるで見ていた様じゃないか」
「…でも、おっちゃんを狙ったのは、ラスプーチンの悪口を言ったからだ」


−お父さん、ラスプーチンって?−
−い、いや、俺も世紀の大悪党だったと言う事位しか…−


「そして…、あおいの命までをも狙ったっ!」
「おしゃべりはその位にしな!可哀想だけど、アンタにも死んでもらうよ!!」


そう言い俺に向けて銃を構えるスコーピオン。
…お前は右目を狙う狙撃手。
ソレが仇になるんだぜ?


「その銃、ワルサーPPK/Sだね。マガジンに込められる弾の数は8発」
「…」
「乾さんとおっちゃん、あおいに1発ずつ。今此処で5発撃ったから、弾はもう残って無いよ?」
「ふ…、良い事教えてあげる。あらかじめ、銃に弾を装填した状態で、8発入りのマガジンをセットすると、9発になるのよ!!」


知ってるよ。
だからアンタは新しい弾をセットしなかったんだ。


「つまり、この銃にはもう1発、弾が残っているってこと!」
「…じゃあ、撃てよ」
「!?」
「本当に弾が残ってんのならな…!」


城内は瞬く間に炎に飲まれていき、至るところの物が燃え落ちてくる。
…さぁ、決着をつけようぜ、スコーピオンさん?


「…バカなボウヤ…」


その瞬間、スコーピオンが引き金を引いた。


「ど、どうして!?」


俺の右目を正確に狙ってきたスコーピオンが弾を弾いた俺に対して驚きを見せた。
その動揺は次の行動への動作を遅らせ、新しい弾を装填するのに一瞬の間が出来た。
今だっ…!
俺がそう思ったのが先か、それともスコーピオンが手から銃を落としたのが先か…。
その出来事により、俺が蹴り上げたサッカーボールに受身すら取ることなく、スコーピオンは後ろへと大きく倒れこんだ。


「生憎だったなぁ、スコーピオン。このメガネは博士に頼んで特別製の硬質ガラスに変えてあったんだ!」


プロ意識の高いアンタだからこそ、右目以外は狙わないと踏んでいたからな。
燃え盛る城内で、気絶したスコーピオンを見遣った。

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